言葉
白い実を食べ終えた狼たちは、一斉に体を震わせ、光を放ち始めた。
傷が癒え、筋肉が膨張し、毛並みが輝く。
群れは、瞬く間に強靭な姿に変わった。
悠真は息を呑んで見守る。
ルナが先頭に立ち、群れに向かって短く吠えた。
「ウォン!」
すると、大勢の狼たちが一斉に地面に伏せた。
頭を低く垂れ、尻尾を静かに振る。
どうやら、ルナをリーダーとして認め、悠真に従う姿勢を示しているようだ。
金色の瞳が悠真に向けられる。
「すげえ……みんな、俺の仲間になるのか?」
悠真が感嘆の声を漏らす。
ルナは再び吠えた。
「アオオオン!」
今度は長い遠吠え。
すると、数匹の狼が群れから離れ、荒野の奥へ走り去った。
しばらく待つと、それらの狼が戻ってきた。
口にくわえているのは、一つの小さな種。
狼たちはルナの前にそれを置き、献上するように頭を下げる。
ルナが鼻で種を押し、悠真の方へ転がした。
まるで「これを育ててくれ」と促すようだ。
「これ……お前たちの宝物か何か?」
悠真は種を拾い上げ、掌に載せる。
見た目は漆黒で、かすかに温かみがある。
能力を試すいい機会だ。
地面に穴を掘り、種を埋め、手を当てて念じる。
「育ってくれ……」
ふっと気を失いかけたが、なんとか持ち堪えた。
緑の光が広がった。
光が落ち着くとそこには小さな若木があった。
高さは膝くらいで、葉は銀色に輝く。
枝の先に、一つの金色の果実が実る。
悠真は実を摘み、試しに一口かじる。
「うっ……これも苦いな。渋くて薬草みたい」
先の白い実と同じく、美味しくない。
だが、何か特別な力がありそうだ。
悠真は実をルナに差し出した。
「お前が最初に持ってきたんだし、食べてみろよ」
ルナは実を一口で飲み込んだ。
すると、体が再び光に包まれる。
光が落ち着き、ルナが現れたが、姿が依然の姿と違っていた。
体がやや小さくなり、元の巨大さから少しスリムに。
代わりに、周囲に淡いオーラが広がり、毛並みがより輝きを増す。
金色の瞳が鋭くなり、まるで進化したような威容。
ルナは体を振り、満足げに悠真を見た。
群れの狼たちも、ルナの変化を見て低く唸る。
突然、ルナの金色の瞳が悠真を捉え、口がゆっくり開いた。
言葉が――本物の声として響いた。
古風で低く、威厳のある響き。
「我、感謝する。人間よ……いや、恩人よ」
悠真は目を丸くした。
「ル、ルナ……お前、喋れるのか!?」
ルナはゆっくり頷き、言葉を続けた。
一人称を「我」と使い、まるで古の王のような口調。
「我が一族の力、蘇った故だ。
この実……月影の実よ。我が一族の遺産。
お主の力で育て、与えてくれた。
我の体は小さくなったが、オーラが増し、真の長として進化した。
感謝の念、尽きぬ」
悠真は座り込み、ルナの言葉を聞く。
ルナは群れを見渡し、静かに語り始めた。
「ここは、元々豊かな緑の大地だった。
森が広がり、水が流れ、命が満ちていた。
だが、災厄が訪れ、不毛の荒野となった。
我が一族はバラバラに散り、飢えと傷に苦しんだ。
長である我は、命を繋ぐ手段を探し続けた。
死にかけていた時、お主の果実に引き寄せられ……
あの白い実で蘇り、今、月影の実で完全な力を取り戻した。
お主は我が救世主だ」
ルナの視線は尊崇に満ち、群れの狼たちも低く唸って同意を示す。
「故に、我が一族は、お主に従う。何なりと我らに命じよ」
その瞬間、その一帯にワオオオンという、狼の群れの一斉の遠吠えが響いた。




