林檎
悠真は満開の桜の下に座り、蜜柑の木から一つ実を摘んだ。
皮を剥き、果肉にかぶりつく。
甘酸っぱさが口いっぱいに広がり、喉を滑り落ちていく。
続いて林檎も一つ。カリッとした歯ごたえと、爽やかな甘みが染み渡る。
すると、先ほど能力を使った疲労が驚くほど早く引いていった。
体が軽くなり、力が湧いてくる。
まるで生命力が直接補充されたような感覚だ。
「……地球で食べるより、断然美味しい。
しかも、なんか体の中から元気が湧いてくる。
これも、神様の恩恵なのかな……」
悠真は空を見上げて小さく微笑んだ。
ふと、神からもらった種を思い出した。胸ポケットに入れてあった種を取り出す。
悠真は地面に穴を掘り、種を丁寧に埋めた。
そして両手を当て、強く念じた。
「育ってくれ……!」
瞬間、緑の光が爆発的に広がった。
しかし今度は、光の規模が今までの比ではなかった。
体中から一気に力が抜け、視界が真っ白になる。
「……っ、うわっ……!」
膝が崩れ、悠真はその場に倒れ込んだ。
意識が遠のいていった。
――どれくらい時間が経っただろうか。
気配を感じて悠真は目を覚ました。
太陽はだいぶ傾き、辺りは少し赤みを帯びている。
体はまだ重かったが、なんとか上半身を起こす。
目の前には、一本の小さな木が生えていた。
高さは膝くらい。
葉は薄い緑色で、枝の先に白い実が一つだけ、ぽつんと実っている。
「……できたのか」
悠真はゆっくり手を伸ばし、その白い実を摘んだ。
神からもらったのだから、極上の美味しい味がするかもしれない。試しに皮を破って少しだけ口に入れてみた。
「……うっ、苦い」
薬草のような強い渋さと苦みが口の中に広がる。
とても食べ物とは思えない味だ。
「まず……。これは食べる用ではないな。
食用じゃなくて、非常用に取っておこう」
悠真は顔をしかめながら、白い実をポケットにしまった。
まだ名前も効果もわからないが、神がくれたものなら、いつか役に立つかもしれない。




