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能力をためす

佐藤悠真は目を開けた瞬間、息を呑んだ。

そこは果てしない赤茶色の荒野だった。

地面は乾ききった砂と岩ばかりで、風が吹くたびに砂塵が舞い上がる。

空は灰色に覆われ、太陽の光も弱々しい。

生き物の気配は一切なく、ただ死のような静けさが広がっていた。

不毛の大地――本当に何もない。

「……ここで生きろっていうのか」

悠真は乾いた地面に座り込み、ふと過去を思い出した。

地球の病院のベッドで過ごした最後の春。

窓の外で桜が蕾を膨らませていた。

もう少しで満開になると言われていたのに、

彼は開花する前に息を引き取ってしまった。

あの時、心残りで一番悔しかったのが桜だった。

「そうだ……能力があるなら、ためしに」

悠真は立ち上がり、掌を強く握り締めて祈った。

「緑の守護者よ、種を賜れ。桜の種を」

すると掌に、小さな桜の種が現れた。

悠真は急いで地面に穴を掘り、種を丁寧に埋めた。

そして両手を地面に当て、心の中で強く念じた。

「開いてくれ……」

瞬間――

緑の淡い光が爆発的に広がった。

地面が盛り上がり、茎が一気に伸び、枝が広がる。

わずか30秒ほどで、一本の立派な桜の木が完成した。

そして、ピンク色の花が一斉に咲き乱れた。

「……綺麗だ」

悠真の目が熱くなった。

病床で一生見られなかった満開の桜が、目の前で風に揺れている。

荒野の真ん中に、信じられないほどの美しさが広がっていた。

「よし、次は……」

感動を抑え、続けて祈る。

「緑の守護者よ、種を賜れ。林檎の種を」

「緑の守護者よ、種を賜れ。蜜柑の種を」

林檎の木と蜜柑の木も瞬く間に成長し、赤い林檎とオレンジ色の蜜柑がたくさん実った。

しかし、三本の木を一気に育てたせいか、急に強い疲労感が襲ってきた。

軽く息が上がり、膝に手をつく。

能力の使い過ぎは生命力を消耗するという、神の警告を思い出す。

「一気にやりすぎたか……

でも、これで少しは生きていけそうだ」

悠真は満開の桜を見上げながら、小さく微笑んだ。

不毛の大地に、初めての緑と花が咲いた。


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