10/21
要塞
――不毛の大地から遠く離れた、闇の要塞の奥深く。
薄暗い部屋に、かつての威光を失った影が座していた。
闇の魔導士、アークス。
百年前の災厄を起こした張本人だが、今は力を失い、痩せ細った体で玉座に寄りかかっている。
肌は灰色に枯れ、目は濁り、息遣れ遣れだ。
周囲を黒い霧が薄く覆い、辛うじて命を繋いでいる。
残党の部下たちが、怯えながら跪く。
アークスは弱々しい声で、しかし威厳を保とうと命令した。
「不毛の大地に……。
緑の気配が増している…。
あの霧が、弱まっているのか?
お前、偵察に行け。
月影狼の残党などいないはずだが……確認せよ。
報告を待つ。失敗は許さん」
跪く残滓の一人が、黒いローブを翻して立ち上がった。
「はっ、主の意志のままに……」
影は霧に溶け込み、要塞を離れた。
アークスは独り、玉座で呟く。
「私の霧は…永遠のはず…」
――そして、荒野の偵察へ。
そのころ、月狼たちの進化が完了し、荒野に静かな夜が訪れていた。




