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なぜ、私に関係あるのかしら?  作者: シエル


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9/20

Ep.9 嵐の前触れ




 


ハインリヒとアーサーが王都へ帰還して以来、トレヴァント辺境伯家は、火の消えたような静けさが屋敷の至る所で漂っていた。




セシリアが嫁いできた日に職務放棄を宣言したメイド長は、レオンハルトの母が嫁いできた際に連れてきた者で、母が出産と同時に命を落として以来、母の代わりのように傍にいてくれ、レオンハルトが信頼を寄せていた一人だった。




「メイド長、長年仕えてくれたことに感謝する…そろそろ、隠居するといい」


「なっ!旦那様!?なぜです!?私は旦那様に忠実にお仕えしてまいりました!!」




メイド長は長年仕えてきた主より、突如として隠居を勧められ、驚きのあまりに取り乱した。



 

「…セシリアから聞いた。見知らぬ土地に嫁いで来た彼女に、あのような部屋を与え、あまつさえ世話も放棄したそうだな」


「ですが、それは…!旦那様があの方を『妻とも夫人としても扱わない』とおっしゃったからです!旦那様に、あのような女は似合いません!歓迎されていないと分かれば、さっさと出て行くに決まっております!」




初めて見るメイド長の醜い形相に、激しい不快感と失望が込み上げた。



『母に仕えていたから』と、贔屓目で見ていたのだろうか?




「セシリアとの結婚は王命だ。それに背くことは陛下に異心を疑われかねない行為だ。それに、セシリアは公爵令嬢だったのだ。使用人ごときが軽んじるなど話にならない。打ち殺されても、文句は言えないぞ」




ため息をつき、メイド長に刺すような視線を向けると、強い言葉で非難した。



元々メイド長は男爵令嬢だったが、辺境伯家で働く平民の騎士と結婚し、現在は平民である。


たとえ、貴族が平民を殺したとしても罪にはならない。



それだけ、身分差があることは知っていたはずなのにも関わらず、レオンハルトの威を借りてセシリアを見下していたからこそ、できた所業なのだ。



レオンハルトに言われたことで、ようやく己の愚かさに気付いたのか、メイド長は顔を青ざめさせ、床にぺたんと座り込んでしまった。



セシリアはあの部屋を使っていなかったたため実害はなかったが、他にも嫌がらせに加担していた使用人も解雇し、職務放棄をしていた者たちは減俸処分とした。




その後、日当たりのいい一室を改装させ、そこをセシリアの新たな部屋とする。



夫人の部屋は、レオンハルトと続きの部屋になっているため、受け入れてもらえないだろうと判断した。




 

⸺⸺⸺




 

ハインリヒたちが王都へ戻って一月(ひとつき)が経つ頃、アシュフォード公爵家から手紙が届いた。



封蝋を見ると、当主であるアシュフォード公爵からのようだ。



……ただ、封を開けるだけの行為が、とてつもなく気が重い。




「主~?開けないんですか~?」


「…黙れ」




ユーリの暢気な声に苛立ちを感じながら、意を決して封を開けると、入っていたのは手紙がたった一枚だけ。




『先日は息子が世話になり御礼申し上げる。来たる21日午後、妻と息子と共に貴領を訪問する。その際、娘との席を設けて欲しい』




読み終え、深いため息を吐きながら手紙をハンスへ差し出す。




「…よろしいので?」




読んでいいのかと許可を求めたハンスに無言で頷くと、ユーリもハンスの横から覗き込んでいる。




「21日って…あと二週間じゃないですか~!?」




騒ぐユーリを余所に、ハンスは無言のまま手紙を二つ折りすると、私に返してきた。




「急ぎ準備はいたしますが…問題は、奥様です」




そうだ。アシュフォード公爵夫妻がやって来ると聞いたら、セシリアはどうするだろうか?



しかし、伝えないわけにもいかない。




「…私が伝えよう」




そう言うと執務室を後にし、セシリアの部屋へ向かう。



屋敷の中でも一番端にあるため、執務室からは少し遠いのだが、用があると呼びつけることはできなかった。



部屋の前で足を止め、一度深呼吸をすると、ノックをしてから声をかける。


少しの間のあと、セシリアの執事がドアを開き、中からセシリアが姿を現した。




「ごきげんよう、閣下。何かご用で?」


「ああ、すまない。これを」




セシリアは淡々とカーテシーをしながら挨拶をすると、早々に用件を促してきた。



レオンハルトが手紙を封筒ごと差し出すと、その筆跡に見覚えがあったのだろう。



表情は変わらず無表情だったが、僅かに眉がピクッと動いたのが見えた。


受け取った手紙の内容を確認すると、すぐに返してきた。




「悪いが、時間を取ってほしい」


「特にお話しすることはございませんが、承知いたしました」


「あ、セシリア!」




承諾すると用は終わったと、早々に戻ろうと背を向けるセシリアを、レオンハルトは思わず呼び止めた。




「…実は、ここではなく別の部屋を用意した。ここは何かと不便だ。君に連絡をするにも、ここまで来るのは少し遠い。できれば、新しい部屋に移ってくれないか?」




引き止めたことで訝しげな視線を向けられたが、『邪な気持ちではなく、不便だから部屋を移動して欲しい』と頼むと、少しの沈黙のあと、承諾してくれた。



恐らく、新しい部屋にも住むつもりはなく、単に出入口が変わる程度にしか考えていないからだろう。


そのまま新しい部屋へ案内をし、ドアを開いて中に入るよう促した。




「君の好みが分からなかったため、仮で整えさせた。好きに変えてくれて構わない」


「ありがとうございます。ですが、結構ですわ。私は普段、別邸におりますので」




部屋の中を一瞥したあと、そう答えるとそのまま入り口のドアに向かって指を向けた。


淡い光とともに、魔法陣のようなものが浮かび上がり、ドアに吸い込まれるように消えた。



あれが、セシリアへ知らせを送るための魔法なのだろう…


 

やはり、ここに住む気はなさそうだが、自分が蒔いた種だ。


とりあえず、出入口だけでも移動してもらえたことだけでも、一歩前進したと考えるしかないだろう。




部屋を出ると、セシリアは「それでは、失礼いたしますわ」と告げられた言葉とともに、パタン、とドアが閉じられた。


 



もう、ドアの向こうにセシリアたちはいないのだろう。



レオンハルトは、その場から動けず、しばらくの間立ち尽くしていた。








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― 新着の感想 ―
主人公がきてからも調べる権力あるのに噂を信じて 昔からいた平民メイド長を増長させ 形だけだろうが王命嫁がきても 精算しないで愛人侍らせてた (性病もちかもしれない)不誠実でポンコツ節穴 戸籍上旦那とか…
まあ執事は主君の管理がメインだけど、現時点でホウレンソウは出来てないからワンアウト。メイド長はプロ意識の欠落でツーアウト。ヤバい…スリーアウトが。
メイド長に自分の罪を擦り付けるとこが貴族特有の傲慢さだな 噂を信じて、独自の情報機関作らないのも怠慢だし控えめに言ってカス
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