器用ではない私は自慢の体力で王子様に見初められたいと思います
私は、シャーベット・ヨルダと申します。シャーベット家の令嬢で、大切に育てられました。
しかし、私には欠点があります。それは、手先が器用ではないことです。料理や礼儀作法などを幼少の頃より教わっていますが、覚えるのも遅いし、ぎこちない動作ばかりしてしまいます。
そのため、家庭教師や親などからいつも叱られてばかりでした。しかし一向にうまくなる気配はなく、両親からは嫁ぎ先があるのか将来を心配ばかりされていました。
(私は手先が器用ではない‥‥‥このまま‥‥‥嫁ぎ先がなく‥‥‥一生独身のままなのかしら‥‥‥)
将来に対する不安が押し寄せてくる。
(でも、諦めるつもりはない。手先が器用ではなくても、他の長所でカバーすればいいじゃない!!)
そう私は器用ではないけど、特徴的な長所があった。それは運動神経が抜群ということ。
長距離などを走ったりしましたが、10kmを走れるほどの体力が私にはあります。他にも、腕比べなどでは女性相手であれば負けたことがありません。
(私にはこの運動神経がある。これを活かせる相手がきっといるはずよ)
私はあきらめず希望を抱いていました。
すると、ある電報がこの家にもたらされた。なんと、王子様とのお見合い大会が行われるみたい。
その大会は王国中の令嬢なら全員参加できるようです。私にも王子様と結婚するチャンスがあるということ。なら参加するしかありません。
私は両親にお見合いの大会に参加したいと直談判しました。
「ヨルダよ。本気で言っているのかい!! 相手は王子様だぞ! お前みたいな不器用な子が選ばれるわけないではないか」
父上は私が不器用だから選ばれることはないと残酷なことを告げてきました。
「そんなのやってみないとわからないじゃないですか。チャンスがひとかけらでもあるのなら私は挑戦します」
「決意は固いようですわ。でしたら、受けさせてみてはいかがでしょうか!?」
母上は参加してもいいのではと言ってくれました。
「しかし‥‥‥ひどい目に合うかもしれないのだぞ!!」
「それも覚悟のうえで参加したいと言っているのでしょう」
「くう~‥‥‥分かった。そこまでの覚悟を持っているというのなら止めはしない。しかし、家の恥となるようなことはするではないぞ」
「‥‥‥わかっています」
私は返事をしました。しかし、家の恥をかきませんとは言えなかったのです。
こうして、王子様のお見合い大会に参加することができるようになった私は礼儀作法などを何回も復習したのです。
不器用な私でも何回も練習すれば少しは上達するはず‥‥‥私は日夜練習をお見合い大会がある日まで行いました。
そして、お見合い大会の日がやってきました。私は、父上と母上にお見送りをされました。
「くれぐれも失礼のないようにな!!」
父上が釘をさしてきました。
「分かっております!!」
「ヨルダ、王子様に選ばれなくても落ち込まないこと。わかりましたね」
「はい。分かっております!!」
少しの沈黙があった後、私は行ってきますと伝えました。
王宮へは馬車で行くことになり、揺れながら王宮まで向かいました。
道中にはいくつもの馬車が並んでいました。それほど大勢の方が王子様を狙っているということでしょう。
揺れること2時間、王宮に無事つきました。
王宮に着くと身体検査が行われるため、馬車からおりました。そして無事検査をこなして中に入っていきました。
もちろん、馬車で中に入ることはできなかったので、徒歩で王宮まで向かいました。
王宮の中に入ると大勢のご令嬢の方々がおりました。素敵なドレスの服を着ている方がおりました。
私もきれいなドレスを着てはいますが、その華やかさには勝てそうにはありませんでした。
そしてお見合い大会が始めると、王子様が現れました。
王子様はとても凛々しく聡明そうな方でした。もちろん皆さんの目つきも変わりました。恐ろしいほどに‥‥‥。
(このような方たちと戦っていけるかしら)
私はこの先のことを考えるとすごく不安でした。
そして、お見合い大会が始まりました。礼儀作法や踊りなどが行われました。私は練習したと言っても器用な方に比べれば大したことがなく、どう考えても選ばれるはずはありませんでした。
(このままじゃ王子様には選ばれない。こうなったら一か八か恥をかいても注目を浴びることをやるしかない!!)
現在は踊りを行っており、大勢の者がきれいに踊っていたのです。その中私はあることをしました。
踊りの場から離れ観衆の場所に行くと、すぐ近くにある巨大な柱をよじ登りました。
もちろんその様子を見ていた令嬢の方などから指摘をされたり笑われたりしました。それでも私は柱の上までよじ登りしがみついていました。
相変わらず笑われたり馬鹿にされておりました。
「ねーあのこ何やっているの」
「頭がおかしいのでしょう!!」
「一体どこの子なのかしら」
口々に馬鹿にされる声が聞こえてきました。しかし、私は気にも留めずにそのまましばらくしがみついていたのです。
他の者達はあきれて私のことを気にも留めておりませんでした。
しかし、王子様は私の元に駆け寄ってきたのです。そのため周りではざわつきが起こりました。
そして王子様は私にこう言いました。
「なぜ柱にしがみついているのだい!?」
私は質問に答えます。
「私は体力と握力があることを王子様に知ってもらいたかったからです。私は踊りなどは得意ではありません。でしたら得意分野であるこの体力と握力を見てもらおうと思いました!!」
「そうか。フフフフフ。君は面白い人だな。君のような人は見たこともない。どうか降りてきて共に話でもしてくれないか!!」
「「えっ!!!」」
王宮内にいた者は皆驚きの声をあげたのです。私も驚きの声をあげました。
「分かりました。いまおります」
柱から降りると王子様と向き合いました。
「君は昔から体力には自信があるのかい!?」
「はい。よく長距離を走り回ったりしておりました。体力には自信があります」
「そうか。それはいいことを聞けた!!」
王子様は喜んでいました。その後、王子様と色々なことを話しました。どうやら王子様と気が合うようで長い間楽しく話せました。
その後、王子様にこう告げられました。
「私はあなたのことが気に入ったようだ。どうか結婚してはくれまいか」
王子様から求婚されました。もちろん返事は‥‥‥。
「はい。ふつつかものですがよろしくお願いします」
こうして、私は王子様と結婚することになりました。
両親は当然驚いていましたがその後、喜んでいました。
その半年後、私は王子様と結婚式を挙げ、幸せな人生を送ったのでした。