日が香る
何処からだろうか。私が私自身を見限ったのは。謙遜、孤立、小さく生きようと心掛けてきたのは。世に求められるままに身を振ってきた。窮屈で息が詰まった。つまらなかった。いや、そんなことはないな。そんなことはない。気がする…まだ分からない。私は私の器で生きてきた筈だ。背伸びもしゃがむこともしなかった。不意に過去の羞恥を思い出すこともない。何も恥じるべきことはない。そう、何も。何もない。ただの砂道を歩き続ける。
人間なかなか生きるのが難しいのである。しかし、死ぬことはもっと難しいことである。実際難しかった。何者にもなれない自分が情けなく、一刻も早く消えたかった。しかし、私のような人間は何をするにも一歩目が出ないのである。その一歩を出すべきで出さないといけないと分かってはいる。しかし、出さない。いや、出せない。実に情けない人間だ。実に情けない。森を抜ける。
嫌になって、下を向いていたら目的地に着いた。目の前には真っ白に光る鳥居と階段、拝殿。神々しい建造物が唯にそびえていて、どこか圧迫感がある。私はあそこから呼ばれている。救いの声が頭に響く。もういいんだ。繰り返さない。決意は悲しく輪廻は廻る。