狂錬金術師②
某年某月某日
師匠の技術の高さに驚く。
師匠は私を作るさい、生き物が自然発生する仕組みを探っていた。
その未発表のレポートがある。生命はやって来るという言葉が最も近い。
歩きながら徐々に姿を現す。親から生まれた生き物以外は、子供の姿で生まれる。
師匠の共同研究者だったものは発生個所、半透明な生物の核に触れようとして死んだと聞いた。
強力な呪いだった。別の世界に続く門。
私は師匠の孫ミラに話しかける。
「大魔境と呼ばれるところがある、昔神様がこの世界を創ったとき、この世界はあるとないが同時に起こる±0の世界だった。それをいくつかの世界をつないであるにしたんだ。それぞれの世界の生き物になりたいと目指すものがこの世界に生まれる。魔族領は獣と魔物の世界、ドラゴンの世界の入り口が確認されているし、人族領にはエルフの世界と巨人の世界の入り口がある。その影響で人族と魔族の違いができると考える人は多い。人族と魔族は自然発生しないとはいえ影響は受けている」
錬金術師の間で語られる神話だ。±0外の世界からの流入で+に傾く。それならば外の世界は逆に薄くなっていくように感じるかもしれない。そうならないために我々は生きている。心を鍛え、技を磨き、世界と一体になることで世界はより強くなる。と付け加える。
「やっぱりおかしいです。錬金術師の話はいつも矛盾だらけ、その強くなる分の力がどこから出てくるのか全く分からない。」
ミラの反論はすべてその通り。錬金術師の話は矛盾に満ちている。矛盾を押し通す事こそ魔法。
その言葉は知っているが私はいまだにわからない。魔術師としての才能を見せ始めるミラに理解させられる術を私は持っていない。
「わかるよ、ボクの師匠、君のおじいさんに何度も説明を受けたけれど、結局わからなかった。大魔境と呼ばれる地域があるのは知っているね?あそこの先に別の世界がある。優秀な魔術師でも超えられるものはほとんどいない上に、あちらの世界の王に合うと達成不可能な試練を与えられる。自然発生する生き物の発生個所には大魔境ほどではないが呪いが発生している。君のおじいさんが世界で唯一、その呪いを超えて、生命発生の素を手に入れることができた。他には誰もできない。呪いを消さすと消えてしまう、呪いにやられると死んでしまう。このことは本当に師匠の親友数人と弟子のボクしか知らない。矛盾を昇華させられるかもしれない成果だ。ただボクにはその解明はできていない。君はこのことを発表してもいいし、同じように黙っていてもいい」
世界を揺るがすかもしれないこと、師匠は生命発生の素を一つ手元に残していたが師匠の死後それは消えており証拠はもう残っていない。本当に生命発生の素だと証明する方法もない。
ミラだって聡明な子だ、私がその生命発生の素により生み出された人造人間だという事には気づいているだろう。
ミラは
「どうして私に話したの?」
と聞く
私は
「師匠の親友たちはもう死んでしまったり生きていても年を取ったものも多い。今の私と同じように誰かに話しているかもしれない、何も語らずに死んだかもしれない。ただ消えてしまっていい話ではないと師匠が死んでから思うようになった。きっと自分だけで秘密を抱えられなくなった時に話すんあろう」
という。
ミラは少し考えをえぐらせるようなしぐさをした後
「やっぱり、錬金術師って意気地なしね」
といった。
全くその通りだ。
説明的なせりふがながくなってしまった。




