3流魔術師⑥
某年某月某日 永遠の渇きの迷宮
みんなカサカサになる。魔術師でないものなら数秒で砂になる渇き。
ケロちゃんは心なしか、いや確実にちぢんでいる。
毒舐め男は毒をたくさん飲んで少しましだ。どう見ても100歳超えてる男は体が石になりはじめさっさと出た。元から余り水気がなかったからだ。ハンナさんから
「ついて来てくれてありがとう」といって何か飴と水をもらっていた。永遠の渇きの迷宮の怖さはでても入っていた時間の数百倍の間渇きに苦しめられること。
きっと何か治す力のあるものなのだろう。
ケロちゃんが石になり始める。
「ゲロぢゃんいぞいで」カトリーナは渇きでのどが枯れている。
ハンナさんの用意していた飴を舐めとりあえず落ちついた。まだ入り口が見える距離。すでに二人が脱落した。
その後はカトリーナが脱落し、分身男も脱落、分身男はしれっと飴を4つもらっていた。
忍者も脱落し、最後の飴を受け取る。
私たちにはまだ早かった。
ハンナさんだけは全く影響をうけていない。
私ももう石になりだした。
「ニアさん、あなたも早く逃げて」といわれる。だけど負けたくない、ハンナさん1人だったら成功していたなんて思われたくない。一瞬だけそう思ってしまった。呪いが一度に私のほうに向くのがわかる。心の迷ったものを狙う。大魔境の呪いはそういう事があるという事は聞いたことがある。
「ニア殿」忍者の声が聞こえる。
私はもう体が動かない。ハンナさんが私を迷宮からつれ出すけれど、迷宮から出ても呪いは続く。大魔境に挑むのに遺書を書いてこなかったことを思い出した。
「かして」
ハンナさんは毒舐め男の毒を奪い飲み切る。毒舐め男が数か月かけて舐める量を一気に口に含み私吹きかけた。私はとっさにハンナさんを殴ってしまった。体が動く。ハンナさんはケロちゃんにかまれ、どう見ても100歳超えてる男に若さを吸い取られ、忍者に手裏剣を投げられ、分身男に四方を囲まれる。
「ニアさんにあやまれ」皆に責められるハンナさん。目に涙が浮かんでいる。
「ごめんなさいニアさん。私はいつもそう。せっかくお友達が出来ても、自分のやりたいことばかりで、みんなを巻き込んでしまう。明日からは一人で探すわ」とハンナさんが謝る。内心お高くとまりやがってと思う。
「やだ、太陽石見つけるまでついて行く」と私は答えた。
太陽石のありか、その候補地は神隠しの樹海、月の光で育つ樹木の森。どちらも学園生には荷が重い。永遠の渇きの迷宮だって入り口しか探せていない。
すぐにでも突破できる力をつけるため私は錬金術クラスへの編入を決めた。
まさかエリク君も同じ日に編入するとは思わなかった。私は初めて運命というものを信じようとおもった。




