クレイジーメタリックブルーバード⑩
現代 某月某日
病に侵された妹から少年があらわれる。今にも泣きだしそうな顔をしている。
「君は?」 とボクは尋ね。
少年は泣きながらボクにいう
「ごめんなさい、ごめんなさい。」
謝っている。ハンナは身をかがめ、少年をあやすように頭を撫ぜながら話しかけた。
「どうしたの」
少年が泣き止んだのち答える。やさしいハンナでなく、子供が苦手そうなボクのほうにやってきて。
「ごめんなさい、お兄ちゃん、僕はもう力がなくなっちゃったんだ。今までエリーの病気を何とか抑えてきたけれど、僕はもう眠らなくちゃいけない。」
といった。少年はまた、瞳に涙がたまってきている。何を言っているかわからない。
妹を助けようとししていたことはわかる。ハンナは魔法で何か温かい飲み物を出す。
一瞬ボクのほうを見た後
「落ち着いて、ゆっくり話してくれたらいいから」
といって、テーブルに連れていく。
少しためらった後、少年は再び話始めた。
「ありがとう、お姉ちゃん。僕はピー助、君たちの言う。クレイジーメタリックブルーバード、願いをかなえる金属の青い鳥だ」
といった。ボクとハンナは顔を見合わせる。伝説が今目の前に現れた。誰も見つけられなかったが、願いを叶えたものはその残り香だけを嗅ぐといわれている。その伝説の鳥が妹を助けられないといったのだ。ボクは目の前が真っ暗になり倒れかけたが、ハンナが支えてくれる。普段は優しく女性であるけれど、困難を前にしても前を向き続けられる。ボクの愛する女性。
「はじめました、ピー助様、今は人族の姿を取っておられるのですね」
と話しかける。
ピー助は最初の泣きそうな顔は治っていた。落ち着いてきたのだろう。
「そうだね、大勇者のエリーは僕にいろいろな人の願いを叶える様にいった。僕は寂しかったけれど、エリーはいつでも帰ってきていいよといってくれた。だから僕は3人願いを叶えたら帰ろうと思った。それから10年、僕は3人の願いを叶えた。でも本当は違ったんだ。僕が願いを叶えたいと思った人は、きっと僕が何もしなくてもその願いを叶えていた。僕にはきっと特別な力なんてなかった。」
ピー助はそのことを気づいてとてもうれしくなって、もう10年頑張ろうと思ったり、何度も3女神のほうから会いに来てくれたことを話す。ボクの今日話した話も、ティアラの願いを聞いて、自分は応援しただけだといった。
ボクは
「エリーはどうなるのですか」
と聞いた。ピー助の表情が曇る。悲しい話なのだろう。
「僕は彼女を生み出した、錬金術師の死の間際の最後の願いを聞いた。大昔の錬金術師によってつくられた。欠陥だらけの技術。天使長の兄妹の言った人族と魔族だけが自然発生しないその理由は1次魔法到達者でもわからない。その誰にもとけない秘密が呪いとして彼女をむしばんでいる。
誰にも解けない呪い。僕は呪いの影響を弱めるしかできなかった。その力ももう残っていない。」
ピー助は続けて、エリーが呪いにより死ぬと新たな大魔境ができること、今つながっている世界は天使姉弟が話の分かる王の世界を選んでおり、それ以外の大魔境の先の世界はつながると強力なもんも含めて攻めてくる可能性が高い事を告げる。それは世界の崩壊を意味する。彼は最後にごめんなさいとエリーを助けられなかったことを謝った。
ボクは何も言えなかった。ボクに彼を責めることはできない。
世界を守るために、呪いにより死ぬ前にエリーの命を奪う。ボクがやらなければハンナがやるだろう。彼女は強い女性だ。でもそれだけはさせたくない。それでも一晩考えたかった。
翌日1通の手紙が届く。
ボクとエリーへの天使の世界への招待状だ。




