3流魔術師①
某年某月某日
女神教の隆盛とともに魔術師が増えた時代。数か国で1つだった魔法学園は領域国家になるにつれ、また人口が増えるにつれ1国に1つに、そして今や1つの国に複数作られるようになった。
それでも100人以上の魔術師、錬金術師を抱える学校も多い。
彼は私のあこがれシオンのように男前だけど、授業をあまり聞かず、成績も悪い。
シオンとの違いは魔術師な事、実技も特にできるわけじゃないことだ。
「宿題みせて」
最近の魔法学園は徐々に普通の学校に近づく、彼は宿題もしない。女の子の宿題を写す。
珍しいことではない。魔法学園などといってもかつての威光はない。
魔術師の誇りが、なんていっていた時代は終わった。
多少成績が悪いことなんて気にしない。魔法研究もおこなわない。
先生だって気にはしない。なんなら宿題を提出しなくても何も言わない。
かといって他に何かを熱中しているわけでもない。
友人はできても硬い友情までははぐくまれにくい。
私だってそうだ、真面目で成績は良いけれど、魔法の研究なんてほとんどやっていない。
それに100人のクラス、名前を知らない生徒がほとんど、一人でいるのはつまらないから友人はいるけれど、卒業後疎遠になるのだろうか。意外とみんなこんなもので、なんだかんだと友人関係が続くのかと考えてしまう。
こんな状態でも魔法が進歩しつづけるのは数の多さと、魔法使いが多いと強い魔法使いが生まれやすいとされる説だろう。
いっそ錬金術師クラスに入ればよかったなんて思わなくもない。いつも騒ぎ声が聞こえて、よく喧嘩をしてる子や、一人でなんかぶつぶついってる子、先生の授業のあらさがしばかりしている子、毒物を舐めてる子、使い魔を持ち込んで教室で放し飼いにしている子。真っ黒の格好でなぜか魔術師クラスの授業に潜り込んでる子(後に一人でぶつぶつ言ってること同一人物と判明。)分身して4人になって授業受けてる子。忍者みたいな子。どう見ても100歳超えてそうな子。
とても気になる。
非常におこがましいけれど、大賢者マナが大勇者エリーを心配した気持ちもわかる。
顔だけがいいあいつは錬金術師を毛嫌いしていたけど、もちろんそんなことをおくびにも出さない。
1人でぶつぶついってる子に
「結婚してください」といわれ、絵描き男の光る石を渡されたときもうれしそうにしていたけれど。
「気持ちはうれしいけど好きな人がいるから」
と断っていたし、その石に込められた盗撮と盗聴の魔術も気づかないふりをして、大切にしまったから盗聴も盗撮もできないようにしたのち友人に解いてもらっていた。
魔術はダメだけれど男前の彼は人を家に呼ぶことは少ない。彼の両親は魔術師と錬金術師のいさかいに巻き込まれ死亡している。彼は魔法学園に入る前は孤児院に住んでおり、本当は魔法なんて学びたくないのかもしれない。




