”あ”の魔女③
宮廷魔術師長は自分が死ぬと錬金術師に手紙が届くようあらかじめ魔法をセットしていた。
私の魔女に関する記憶を呪いを妨げる所まで曇らせ、自分が”あ”の魔女を倒した時点で解く。
もしも負けた場合に備えて錬金術師に連絡をつけていたのだ。
他国の者を巻き込むまいという彼なりの配慮であろうか、錬金術師の学園での成績は最も低かったと聞く。
からめ手を用いよというわれわれへのメッセージなのかもしれない。
錬金術師含む魔術師の実力は大差がつきやすい。
大魔法の対策以外にも、相手の実力を出させない策を用いねば、数年で学園での実力が覆ることはまずない。錬金術師は死を賭して策を練らねばならないのだ。
「魔女の暴走はボクにも原因がないわけじゃない。いつも成績の悪さをからかわれていたボクをかばってくれた友の頼みでもある。魔女退治は引き受ける。そっちの魔術師の子も弟子にしてあげるし、大人が半分死んだ国だ、復興にも力を貸すよ、他国の錬金術師に頼るというのは最後の手段だ、ボクは幸い国の機関につとめてはいないけど、それを差し引いてもボクの国からも非難される事だろう。それでもボクにたのみますか」
ひょうひょうとしら雰囲気の男だ、きっと彼は私が頼まなくとも一人で戦いに行くのだ。表向きの理由が友の仇うちになるか王に頼まれたからに変わるだけ。
「勝手なことを言わないでください。未熟とはいえ私も宮廷魔術師の一人、私が必ず”あ”の魔女を倒して見せます。」
最も若き宮廷魔術師は決して未熟ではない。それでもまだ若き宮廷魔術師長には及ばない。”あ”の魔女には勝てない。
師を失った無力感が最も若き宮廷魔術師を意固地にさせている。
私は「我は王としては間違った回答をしよう。錬金術師よ力を貸していただきたい。」
と頭を下げた。王とは孤独なもの、心を許せるものは少ない。
若き宮廷魔術師長は私にとって友でもあったのだ。
平常の私であれば断っていた。
国を半壊させられ、友を失った。私は損得を抜きにして戦いに参加しない道を選ぶ事は出来なかった。
私はまだまだ自分を御しきれない未熟な王であった。
「うん、力を貸そう。そこの魔術師の子。ボクは錬金術師シオン、君よりも圧倒的に実力のある世界一の魔法使いだ。君のことは友から託された。君は今日からボクの弟子だ。まず魔女退治の方法を見せよう」
といった。彼は私も実力ある最も若き魔術師でさへ戦力とは見ていない。
最初から一人で魔女を倒す気だった。
シオンが弟子に言った時の言葉を修正。はっきり自分を世界一という方がらしいというのと、実力を伝えずに弟子にとるのも変かと思っての事です。
この話の後悔。魔女の大事件起こす前をもう少し想起させるように書きたかった。精神的に弱いまま強い力を持って、その精神的な弱さも魅力だけどやっぱり・・・みたいに。終盤でもってこれたので一応成仏。
感想アドバイス等待ってます。