ドラゴンを倒す者③
某山奥
一人の少年が店の前の掃除をしている。錬金術師の弟子だ。掃除をしているだけだが隙のなさがうかがえる、山奥に住んでいるが、買い出しや売り込みにやってきている。魔物よけの薬、氷を作る箱、軽くて丈夫な足漕ぎの台車、仕組みは想像もつかないが共鳴して震える携帯式の石。火を使っていないが長時間光る明かり。彼らの持ち込んだものは村をとても豊かにした。
「ブレット、今日も勝負よ」私は剣の勉強をしているけれど、ブレットには勝ったことがない。私の村は近隣ではとても豊かで、子供の頃は働かない、世界に魔力が満ちている男女の身体能力の差はもうほとんどないといってよく、私は剣の実力が認められ今は、近隣の魔物や獣退治をして村から報酬を得ている。それでもブレットから1本も取れない。「やぁ、メリッサ」といって彼は手に持っている箒の先を外して構える。彼の変則的な剣を私は交わしながら間合いを詰めていくけれど私の木剣は簡単にからめとられる。今日も勝てなかった。
「今日、ジョンさんはいる?」と私が問いかける。今日は彼の師匠に用事がある。彼の師匠は錬金術師だ。錬金術師は体を鍛えることも修行の一環だという、村への貢献も考え、魔物退治はよく出ている。
「今はいるよ」といって私を案内する。私たちより一回りくらい年上の男性。私の村の近くの山奥にブレットとともに越してきた。錬金術を見せてもらった事はあるが、石の塊から熱や薬品を使って少量の銀色の金属を作り出していた。無口な人だが、確かな実力だ。「メリッサ、ドラゴン退治の件かな」と依頼内容を言われたので私はうなずく。すでにいくつかの村が滅んだと聞く。国からは悪魔認定を受けた。人を襲うドラゴンはそれほど多くない、襲われたときに反撃をするような場合は関係ないがドラゴンの討伐対を組むためには国の許可がいる。それが悪魔認定だ。近隣の各村で戦士を募り、討伐に向かう。ドラゴンとゴブリンの例えなど嘘だ。ドラゴンは飛ぶのだ、とばれたらドラゴンは誰も傷つけられない。そうさせないための魔法、それはやはり必須なのだ。
今回の300人の討伐隊は全滅するか、勝てても半分生き残れることのほうが少ない。そういう戦いだ。10の村で募集がかけられ、150人が集まるが、どうしても300人に届かなかったため、各村で15人づつくじにより選ばれた。逃げ続けれてもいずれ滅びる、運による部分が大きいため必要以上の人数はさかない。今回は私が選ばれた。昔と違い女だからとかは関係ない。男には女の妻がいるのだ。
「はい、すでに高名な魔術師何名かにもあたっていますが・・・」といった、魔術師は作戦を立てる。すべてが絡み合い奇跡を起こすため魔法と呼ばれる。今のドラゴン退治は魔術師5人組制をとっている。5人の魔術師に順番をばらばらにしつつ3回魔術を聞きに行く、前の人の魔術を次の人が一つ補強する。15回聞きに行くときには通常の魔術より強力な大魔術となる。今回の大魔術はドラゴンの吐く毒の種類とそれに対応する解毒剤、緊急時の毒対策、毒を引火させることで大爆発起こさせる。飛び上がろうとすると自然と足に絡まるなわの配置。縄をつないでおくべき大木。燃えない金属の縄などの魔術が用意され。それを錬金術に伝える。けれど嫌な予感がする。怯えているだけだろうかともおもう。
錬金術師は魔術師と仲が悪く、大魔法に入れられることはない。それでも話を聞いておかないといけないと思ったブレットに最後に会いたかったのかもしれない。明日招集されるともう2度と帰れない可能性が高いのだ。錬金術師は
「ブレット、何とかしてあげられそうかい?」と尋ねる。私の不安な気持ちなどお見通しなのだろう。
錬金術師はドラゴン退治に興味を持たない。進んでドラゴン退治をするのはいつも魔術師だ。私の村のように直接恩恵を受けているような村以外では錬金術師より魔術師が好かれる傾向がある。それでも私は錬金術師が優しい人たちだと知っているのだ。私はフレッドを見つめる。
「ドラゴン退治はすごく大変だけど、今回の作戦だと全滅は間違いないし、ボクが行くしかないだろうね。準備したらボクも合流するよ」と私をみていった。大変なことをしてしまった。私の村には魔術師はいない、錬金術師の二人が変わりをしていた。その2代目を危険にさらしてしまう。私が何としても彼だけは守らないと。




