妹番外編③
私は幸せだ、私はまだ幸せだ。
今の流行りの魔法は一瞬で死ぬ事が出来るから、だから苦しまなくて済むからじゃない。
死ぬ覚悟が揺らぐ前に死ぬからだ。
夜がふけると怖くなる。そうなる前の事。
後は悪態をつくか、命乞いをするか。
姉の偽の恋人は優しい顔をしている。錬金術師は魔術師より優しい顔、覚悟の決まらない顔をする人が多い。一人ならこいつに生かされたかもしれない。もう一人の女は、まだまだ幼い。年上だけれど子供だ。ただ魔法の才能のあっただけの少女。こんなヤツがお姉ちゃんに勝っているのは容姿だけだ。
少し挑発したら私を殺してくれるだろう。
「シオンさん、この人が'あ'の魔女の妹なんですね。本当に保護する必要があるんですか」
と言った。師弟だがまだそうなって日が浅い。この女はまだシオンさんを師と認めらないのだ。
けれどこの女は師匠にバレないよう一瞬だけ、私に勝ち誇った表情を見せた。シオンさんと私は昔数度あった事がある。シオンさんは
「君のお姉さんは今朝死んだよ。理由はまだはっきりしていないけど自殺とされている。彼女は許されない事をしたけれど僕とはともだ…、恋人だった事もある。冥福を祈るよ」と言った。演技なのかホントなのかは分からない。弟子ちゃんは
「何言ってるんですか!あいつは私の師匠や仲間、それに数万の国民を殺したんですよ!」と感情的に叫んだ。彼女は分かりやすく魔法を用意する。普通の、いや今主流の魔法は人の目には見えない。師匠は小さくため息をついた。止める気はないのだ。私はダメ押しのため、彼女を見つめ?「あなた、お姉ちゃんに負けたんだ。」と言って満面の笑みを見せた。私は笑顔で死ぬ。虚勢の為に作った笑顔で死ぬ。苦しい顔より、泣き顔より、そして本当の笑顔で死ぬよりずっといい。
弟子ちゃんは怒り魔法を放つ。彼女の魔法は無限の速さではない。無限の速さにもできるのだろうがそうしなかった。私は駆ける。私は魔術師じゃない。最後に彼女の顔面を殴る為に駆ける。魔法よりはずっと遅い足。魔術師の体は拳も剣もすり抜ける。
お姉ちゃんは確かに宮廷魔術師にはなれなかったけれど弱かったからじゃない。性格が捻じ曲げってたからだ。私は誰にも知られたくない涙が流れている。
ふと弟子ちゃんの魔法が掻き消える。私の拳は彼女の顔面を捉え彼女をノックアウトした。
これで本当に思い残す事はない。
私は許しを求めるようにシオンさんを見上げた。私は精一杯やった。
何も書き溜めがない。
もう一つ番外編を書きたいけど誰の話にするか決まらない。エリクとサラの世代は既に連載で書き始めてる。
ホラーのキャンペーンがあると話がホラーよりに、文芸のキャンペーンがあると話が文芸よりになる。
ティアラとミシェルが隊長を取り合う話か、月の民関係か、女神教関係は文芸キャンペーン用に書いた女神の秘密のかきなおしになるし。




