マナ番外編② 大魔王と大勇者⑤
「ダメ!」
私は誰もいない室内で思わず叫ぶ。
「どうされましたか?」
前の大臣は私が4歳の時、私と巨人退治にいった3日後に友人や家族、そして私に見守られながら天寿を全うした。ついて来た魔術二人もその1週間後と2週間後に同様になくなっている。ともに老衰だったという。
今来たのは次の私の担当大臣だ。
「すいません、怖い夢を見たみたいで」
といって微笑みかける、今の大臣は顔を赤らめたあた、礼をして部屋を後にする。
カメレオンの魔族の男、身の回りの世話とおそらく、私の将来の結婚相手候補なのだろうと思う。
私がけがをした3日後に大臣が死亡したことで私を気味悪がる人がたくさん出た時に優しい声をかけてくれた人でもある。
大臣は年を取っていたし、山歩きや、恐ろしい巨人に襲われたことが心身を蝕んだ事は否定できない。
次の日に体調を崩し入院、病院ではげんきそうにみえたが 2日後の夜に体調が急変し死亡した。
彼の奥さんは
「小さいころから、強い力をもつあなたの事を夫は心配していました。大臣という立場がなければもっと、無理をしてばかりのあなたを叱ることができたのにといっていました。」
と私に教える。
彼の友人の1人はこっそりと私に彼を救うことはできないのかと聞いた。それを聞くことは法律で禁じられている。
なぜならできて当たり前たからだ。
150歳程度まで寿命を伸ばす事は、ある程度なれた魔術師なら難しくない。私でなくてもできる。彼は私にそれをしないように言っていた。私が小さく首を振ると彼の友人は一言謝罪した。
そして本当は彼の死は私の魔術だった。
私について来た時の彼はまだ30代半ば程度だった。私の担当大臣は基本的に若い人から選ばれる。
魔術師二人も不老不死ではないとはいえ、普通の魔族よりは寿命がかなり延びている。
私は人を殺す罪悪感を減らすために、彼らに天寿を全うさせた。
無意識だった。大臣が死んでからきづいた。魔術師二人の死はもう止められなかった。私は怖くなって、幽閉を申し出た。
元から幽閉みたいなものだったけれど、正式にそうなった。今の魔王はいつでも出ていいとは言っているけれど、もし出れば私のいないところで部下に罵詈雑言を浴びせる事を知っている。
私が叫んだのは私の魔術がマナを襲うのを見たからだ。マナを殺せばエリーに嫌われる・・・違う、私はマナと仲良くなりたかった。私は今度は静かに涙を流す。
「あんたの魔術なんて私に効くわけないじゃん」
エリーとマナがニヤニヤしながら立っている。
私は2人に駆け寄る。私の渾身のラリアートがマナにクリーンヒットした。




