マナ番外編② 大魔王と大勇者③
エリーとの出会いは3年後、エリーがキマイラ退治により人族の世界で大勇者とあがめられてからのはずだった。
私の巨人退治はすでに嘘か本当かあいまいになっている。4歳の子供に倒せるわけがないという意見が多い。この二人は戦闘のすべてを知っている。マナでさえ知っている。
「今日はまだ戦う時ではない。知っているでしょう?」
私はエリーにそう語りかける。人族と魔族の争いにまだまだ魔法使いは駆り出されていないし、
私は魔術師協会に狙われもしていない。戦う理由などどこにもない。
私とエリーどちらかが死ねばその種族は滅びる。どちらも死ななければ私たちは人間を諦め悲しみの中、それぞれ、それが義務であるかのような100年の幽閉の後旅立つ。
エリーは「優しいんだね。」と私の事を心配してくれている。
私がエリーを憎んあさだことなんて1度だってない。「私は優しくなんてない」という私の言葉を遮るようにマナは「臆病なだけでしょこいつも」といった。も、という事はエリーの事も含んでいる。私の大切な運命の人。世界でただ一人の私の味方。マナはエリーの死んだ無限にある未来では私に策を弄して挑み返り討ちに合う存在だ。2人生き残る未来ではエリーに私たちの記憶を消される。それらもいつも同じ結果というわけではない。蝶のはばたき一つで簡単に変わってしまう。同じ人間、同じ時間、同じ過去でありながら、敵の時もあり味方の時もある、とりあうに値しない存在でしかない。
今回のこいつはエリーと仲がよさそうだから過去を変えていないだけなのだ。
エリーは「私は臆病じゃないよ!」と怒る。”私は”といった、つまり私は臆病だという事は否定しない。
敵対した世界でさえいつも味方だったエリーがそういった。戦うことになる世界は互いに涙を流しており、その決着はエリーがわざと負けるか、私がエリーがわざと負けようとしていることに気づき負ける道を選ぶかばかりだった。このエリーだれだ?私は混乱していく。何かが狂いだしている。




