黄泉の国④
黄泉の国出口、エリーが木陰で休んでいる。
それを守るように精霊たちが取り囲む。
精霊姫、太陽を目指す者、大きくてにぶくて優しいもの、噛みついたら離さないもの、物欲しそうなもの、どこかの馬の骨、赤い木の実の育つ青い森のもの。小さな悪事を積み重ねて悪魔になったもの、偽エリー一味カトリーナの発見したもの、空飛ぶ魚のプライド。そのほかたくさんの精霊たち、まだ名も無きもの、それ以外にもたくさんの精霊がいる。
「やぁ、エリー」と話しかける。エリーが呼んでいた本から目を離し顔をあげる。学生時代のシオンとザルスの本の1冊、”あ”の魔女、シオン、ザルス
の3人は月に向かう。道中”あ”の魔女がシオンの足を引っ張ろうとするけれど逆にやり込められ、シオンは笑って許す。無事たどり着いた3人でこの星を眺める。”あ”の魔女は「やっと月に来れたわね、私は月の民の血を引いてるから、どうしても来たかったの、わたし一人だと来れなかった。今日は連れてきてくれてありがとう、それと、途中邪魔をしてごめんね」といい、シオンは意外そうな顔をする。3人は結界を張り、思う存分魔法を使い笑いあう。もとの星では難しい事だ。そして、シオンは2人に衝撃を受けると光を放つ石を渡す。そういう話だ。
‘あ‘の魔女が痛い目にあわず、賛否の分かれる本だが、エリーはこの本が一番好きだった。
おしりを払いエリーがこちらへ歩き出す。エリーお嬢さまは駆け寄ったりはしない。
「君のおかげで、ここまで来れました。天使の世界でもエスコートしてくださいね」といって微笑む。本物のエリーがボクの事を君というのは久しぶりだ。エリーは場合によってボクの呼び方を変えている。今は師匠やお兄様、先生よりも君という言葉あっている。信頼の証。迷い続けていたボク相手ではきっと出なかった呼び方。精霊たちに見守られながらボクたちは進む。ハンナの飴をエリーに渡す。僕たちと一緒にいられたよかった、そして無事を祈りいつまでも待ち続けるというメッセージが添えられている。
「エリー、この飴を舐めておくんだよ」
天使の世界では素養のないものは呼吸するだけで死ぬ。ハンナの飴があれば進める。ハンナは戦う道よりも皆を助ける道具作りの道を選んだ。無差別な魔法攻撃で世界が滅ぶことを防ぐ魔道具を作ろうとしている。世界を救うため。そしてその傍らで友人たちを救うため大魔境や外の世界の呪いから身を守る魔道具の開発も行っているのだ。
エリーは「ハッカの味、やっぱりお兄様は気に入らないウホ」といって笑った。僕もつられて笑ってしまった。
赤い木の実の育つ青い森のもの 好きな感じの精霊の名前ができました。
最後すこし変えて最終回にしてもよかったんですが、一応顛末まで書く方向にします。




