錬金術師と魔術師①
某年某月某日 天使の世界
敵対する天使たち、我々に興味のない天使たちエリーを守りながら進むのは厳しい。
勇者タリアの話が本当なら、天使長二人はエリーを疎ましく思っている。
自ら道を切り開かねばならない。エリーは戦えない。リセットボタンや、マイクロブラックホールなど2次魔法者しか存在しない天使には効かない。
ほとんどの天使を難なく倒せるようなものは3女神と勇者タリアのみだろうか。その4人にしても天使の世界の誰にも負けないかといわれたらそんなことはない。最上位の魔法使いでせいぜい真ん中より少し上くらい、歴史に名を残す魔法使いたちでも、実力の高い天使では勝てないものは珍しくはない。入り口付近のそれほど強くないものと戦ううちに天使長兄妹の招待を受けることが基本的な突破法といえる。
5人の天使を倒した招待は来ない。10人の天使を倒したまだ招待は来ない。一人として弱い相手はいない。杖が折れる。ドラゴンキラーブレッドは生涯で20体程度のドラゴンを倒し伝説となった。僕も負けてはいられない。僕が戦うべきなのは今日なのだ。僕はまだ戦える、杖は魔法を制御するもの、威力だけならないほうが強い。
11体目の天使とボクの間に斬撃の壁ができる。1次魔法に匹敵する斬撃、永遠に残り続ける壁だとわかる。
「さすがは剣聖様」
「まだまだですよ、剣の強さに助けられました。」
二人の事は知っている。
剣聖ケイン、勇者グリフィン時代の離れた二人、この世界を難なく進む。二人は僕たちの元へやってくる。
この二人が僕より強いかはわからないけれお、一緒にいるだけで安心してしまう。ケインの斬撃は少なくとも僕には出せない威力だった。
「お二人がなぜ?」エリーが首をかしげながら訪ねる。二人は顔を赤くしている。やはりエリーはかわいいのだ。
「タリアを迎えに来たのだよ。」グリフインはそう答え僕を見据える。
「オマール様、カティア様に剣の稽古をつけてほしいといわれたのでね、ついでにこの剣も自慢しよう」と先ほどの斬撃を放った剣を見せる。最強の錬金術師により育てられた黄金色の剣。
二人は天使長を全く恐れていない。二人は天使長がタリアを殺していないことを確信している。
二人は天使長のお気に入りであり、天使たちは手を出さない。僕は2人について行くことで、天使長の館の前へたどり着く。
「ケイン様はあの天使長にまで剣を教えられるほどの腕前なのですね。」と話しかける。ケインは僕の頭に手を置き、微笑みかける。
「この剣は君に預ける。妹を守り切りなさい」と僕に剣を渡す。
「いただけません、これはあなたの身を守るもの」と返す
「君の杖は壊れてしまったのだろう。それに・・・」といいケイン様は剣を構える。普通の剣だ。
ケイン様は持っている普通の剣を降ると先ほどの斬撃と同じものが出る。グリフィンはニヤニヤとボクを見ている。それを見たケイン様は剣をしまい手を小さく降る。それだけで先ほどの斬撃が放たれる。
「すごいです。」エリーがははしゃぎながらそういう。ケイン様に手を見せてもらっている。悔しくて僕は宝剣をふるうけれど同じ斬撃は出ない。軽い剣なのに僕は体幹がぶれふらつく。グリフィン様は
「私も、その剣使っても出ないから安心していいからね」といって僕をねぎらい笑った。
僕は扉を開く。エリー様とカティア様は談笑している。タリア様はサラに何かを自慢話をしている。怒ったサラをオマール様がなだめる。平和な光景だった。