黄泉の国②
ニアさんとの邂逅
所詮、ニセモノのニアさん。昔、彼女はボクの事を好きだなんてうわさが流れていた。彼女はとても芯の通った人だが、直接好きだといわれたことはないし、にわかにはしんじられなかった。彼女はボクが宮廷魔術師になったことにとても喜んでくれた。宮廷魔術師は昔のような権威はなくなったけれど、今は世のため人のためにと尽くす仕事に代わった。無気力だった頃のボクを知る彼女は、ボクの決断を褒めてくれた。それでもニアさんの活躍はそんなものじゃない。人気探検家として世界をめぐる。色物だなんていわれることもあるけれどそんなことはどうでもいい。彼女は魔術師の恐怖に怯えていた人達を笑顔にし、魔術師とそうでない人達の間に出来しまった溝を埋めようと日々いそしんでいる。心から尊敬出来る友人だ。ボクは見極めなければならない。こちらの世界のニアさんは敵か味方か。おそらく、ハンナとこちらの世界のボクとの戦いも控えている。消耗は避けたい。ニアさんの質問に
「大悪女サラの呪いだ。僕では解けない」と答えた。呪いさえ解ければ、状況は良くなる。大悪女サラと互角に戦えたボクであれば突破できる。ニアさんは
「ちょっと見てみる」といって規格外の探知魔法でボクの傷口を覗く、目が泳いでいる、現実世界の彼女も嘘が下手だった。
ボクはニアさんの魔法により拘束される。ニアさんはすぐに倒す、魔術師の戦いは実力が開きやすい。
隠れて様子をうかがっていたハンナの魔法を受けてしまう。それでもやはり大悪女サラとハンナの実力を黄泉の国の呪いでは再現できないことは大きい。ハンナの魔法はボクに大したダメージを与えない。「あなたの事はよく知らないけれど、私の親友のニアさんに手をかけたことは許さない。ニアさんはあなたの事が好きでずっと応援していたのに」といった。ボクは瞬時に理解する。多分ここは、エリーが病気にならず、エリーは妹でなく恋人になった世界だ。妹の病気がなければハンナ親しくなる機会はなかった。それならこのハンナはどうでもいいや、気が楽になった。こちらの世界で今まで戦った中では一番強い。大悪女サラとハンナがどちらが強いかなんてわからないけれど、最強の武器が再現されなかったサラと、元からたくさんの武器や薬品、そして体術を使いこなすハンナの差だろう。芸術的な小内刈り、足車、鞭、刀、飛びクナイ、マンゴーシュ、デリンジャー、呪術、彼女は魔法勝負持ち込まない。魔法であればボクも魔法使い一気に戦況をひっくり返せた。それ以外の行動は呪いせいでで新しい攻撃に対応がワンテンポ遅れる、それでもボクは負けるわけにはいかない。ボクはサラとの戦いで覚えた技術、捨て身で魔法をあてに行く。簡単なことだ、魔法は迎撃され普通は当たらない。ある程度の実力差があっても100回の攻防で1発当たればいいほうとされる。だから迎撃の魔法をあえて受けることで相手にも魔法を当てる技。迎撃の魔法は普通威力が落とされ、こちらは全力の魔法。
何度も使える者じゃない。タネを知っていればそれでも迎撃されるだろう。一発勝負だった。
ボクの魔法はこちらの世界のハンナを消し飛ばした。
「本物のハンナはこんなもんじゃない」ボクはそうつぶやいた、