黄泉の国入り口①
某年某月某日
黄泉の国にたどり着いた。移動型の家からでる。何もない広場にぽつとある扉。
扉を入ると生きるか死ぬか。実力のない魔法使いでも1割は突破できるけれど、最上位の魔法使いでも3割が死ぬ。試練を超え勇者になったようなものでも死んだ例は少なくない。さすがに2次魔法に達したような人は大丈夫だとは思うけれどそんな人がそもそも歴史上でも20人はいない。兄と私どちらが死んでもおかしくないし、兄が死ねば私にカティア様やオマール様の元にたどり着けるわけがない。それでも私の突破できる可能性のある唯一の大魔境だ。
「それじゃあ、黄泉の国の突破方法を教えるよ。黄泉の国の自分見つけられないとしぬ。見つけても負けてころされると死ぬ。勝って相手を殺しても死ぬ。2次魔法到達者やそれに限りなく近い実力があれば呪いに打ち勝てるかもしれないけれどそれは望み薄だ。2次魔法に達していない頃なら勇者タリアでさえ普通に自分を殺してたら死んでたと思う。呪術師系の最上位の魔法使いが行けるかいけないか。それならどうするか多くの人が二人が一人になる感覚を得て生き延びている。疑似的な2次魔法化だ」
と兄は説明を始める。聞けば聞くほど私に突破できる気がしなくなる。疑似的な2次魔法化というのは少しわかる。人族や魔族の魔法は結局、剣や銃がすり抜ける事と自然現象の再現と死なない体。ただそれは人族と魔族にとっての2次魔法
「師匠、2次魔法の本質はむしろそこにあるのですね、世界との一体化、一体化を目指す限り一体化はできない。一体化の後の状態を目指さないといけなかった。」
私は私の考えを述べる、最後の授業になるかもしれない。最後の会話になるかもしれない。死ぬかもしれない。倭足の握りこんだ手には力が困る。師匠はそれを見てほほえみを浮かべる。師匠は
「そうだよ、一体化したという事は一体化した後の状態になったという事なんだ。だけど今回の黄泉の国は突破を最優先する。過去にはいろいろな人が突破してきた。一つは衝撃を受けると光る石を持った人。身代わりでそちらが砕けることがあるらしい。ボクはカトリーナさんからもらったのを持ったら行けそうな気がする。」といって笑う。カトリーナさんに呪いを操ってもらう事も出来たかもしれないけれどできなければ大惨事、やはり黄泉の国には2人で行くしかない。自然とそう思える。血はつながっていなくてもかぞくなのだ。私は
「カトリーナさんのは効きますね。呪いも操れますし」
といって笑う。とんでもない美人で、泣き虫で、怒りっぽくて、ぶつぶついって、暴走するカトリーナさん。一緒にいてこんなに楽しい人はいない。どんな困難も逃げ出していきそうに思う。私が錬金術師にあこがれたのは、カトリーナさんや忍者男さん、そしてニアさんたちがいたからだ。私はきっとこの魔境を突破できる。根拠のない自信がわいてくる。さっきまで自分には無理だと思っていたのが嘘のようだ。
師匠は本当の今回の案を話始める。




