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今回で完結です。

推理小説って難しい・・・。

 次の日、私と御厨さんはまたアルタイルを訪れていた。社長室には、高岡夫妻がいる。

「今日はどういったご用ですか?」

社長が口を開いた。御厨さんに促されて、私は話を切り出した。

「今日は、奥様にお願いがあって伺いました。そこのキャビネットの写真立て、奥様がワンピース姿で写っている写真がありますね。先日伺った時も、写真と同じワンピースを着ておられましたね。そのワンピース、警察で少しお借り出来ませんか?」

 律子夫人の顔色が変わった。

「先日伺った時、おかしいと思ったんですよ。写真のワンピースは足首に届きそうなくらい長かったのに、先日はふくらはぎの半分が隠れるくらいの長さだったので。・・・裾を折って自分で縫い直しましたね?」

夫人は何も言わない。私は、続けて言う。

「もしかして、裾が汚れたんですか?・・・例えば、血痕が付いたとか」

宮尾さんを殺害した際、レインコートを着ていても、ワンピースの裾に少しだけ血が付いたのだろう。件のワンピースは、夫人がよく身に着けていたもので、急に捨てるのも怪しまれると思い、縫い直す事にしたと思われる。きっと、まだ捨てていないだろう。

 「布に付いたわずかな血痕からでもDNAを検出できますが・・・やましい事がないなら、提出して頂けますよね」

何も言えない夫人を見て、社長は茫然としていた。

「律子・・・お前・・・」

「あなたが悪いのよ。あなたが、浮気なんてするから・・・」

自白したも同然だった。


 数日後、私は警視庁の廊下の隅にある自動販売機でコーヒーを買っていた。

「よう、お疲れ」

御厨さんがこちらに歩いてきた。

「例の事件、律子夫人が完全に自供したようですね」

「ああ、血痕からDNA鑑定が出来るっていうハッタリが効いたかな」

本当は、ワンピースに付いた血痕が微量で、DNA鑑定できるかどうかわからなかったのだが。ちなみに、恥ずかしながら私は、ワンピースの長さが違う事には気付いたが、血痕を隠す為だとは気付かなかった。

 「・・・でも、私はまだまだですね。御厨さんは、花音さんを呼ぶ前から、犯人が高岡夫妻のどちらかだと目星を付けていたのに」

 実は、高岡社長は横川瑞穂さんと浮気していた。横川さんが宮尾さんに貸したバッグと、高岡社長が写真の中で持っていたバッグが同じブランドで同じシリーズのものだったので、御厨さんはもしかしてと思ったらしい。横川さんがブランド物の服で身を固めていたのも、高岡社長が貢いでいたからかもしれない。

 そして、律子夫人は夫が浮気相手と会っているのを遠目に見た事があった。相手の顔はわからなかったが、相手が赤いバッグを持っているのはわかった。

 浮気相手を探して殺害する機会を伺っていたが、ある日、宮尾さんが以前見たのと同じ赤いバッグを持っているのを見かけた。それで、夫人は宮尾さんが浮気相手だと勘違いしたのだ。

「経験を積んでいけば、お前もわかるようになるよ」

御厨さんがそう言って励ましてくれた。

 「・・・あの、話は変わりますが」

「ん?」

「・・・花音さんの両親って、どうしてるんですか?」

解離性同一性障害は、親の虐待や強いストレスで発症する事が多いらしい。

「・・・彼女の母親はシングルマザーで、父親は誰かわからない。花音さんは、母親の恋人から虐待を受けていたらしい。その恋人は今刑務所の中。母親は、アルコール依存症で、今更生施設にいるらしい。花音さんは、今養護施設で暮らしている」

「・・・御厨さん、先日花音さんと会った時、『申し訳ないが、力を貸してもらいたい』って言ってましたよね。事件解決の為に秀一郎さんの力が必要だけど、本当は花音さんの人格が一つになる事を望んでいるんですよね?」

「・・・俺はそんな善人じゃねえよ」

御厨さんはそう言って去って行った。

 また、秀一郎さんの力が必要となる時が来るのだろうか。なんにせよ、花音さんには幸せになって欲しい。

 そう思いながら、私もその場を後にした。


よろしければ、私の別作品『月下の鬼』も読んで下さい!

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