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推理小説を書くって難しいですね・・・。
事件が発覚したのは五月二十日の朝。被害者は、IT企業「アルタイル」で秘書として働く宮尾静香さん二十八歳。会社から三百メートル程離れた公園で遺体となって発見された。刺殺だった。
私達捜査一課のメンバーは、まず彼女の交友関係、殺害の動機の面から探る事にした。宮尾さんは独り暮らしで、まず彼女の友人達に話を聞いたが、動機になりそうなトラブル等に心当たりは無いとの事だった。
次に、アルタイルに勤める彼女の同僚を当たる事にした。名前は横川瑞穂。
「静香に恨みを持つ人物ですか?・・・思い当たりませんけど・・・」
横川さんは、目鼻立ちがはっきりした美人だった。ブランド物のスーツを着ている。
「ああ、でも、よく人のものを欲しがってましたね。数日前も、私のバッグを欲しがってました。といっても、本当に奪う気はないんですけどね、彼女。・・・そういえば、あのバッグ彼女に貸したけど、返してもらってないですね」
「・・・それは、もしかして赤くて小さい、四角いエンブレムが付いた・・・?」
私の隣にいる御厨さんが聞いた。歯切れが悪い。
「ええ、そうですけど・・・」
「・・・そのバッグ、ご遺体の側に落ちていたので、証拠品として警察が預かっています。事件が解決すればお返しする事は可能かと思いますが、バッグに血が・・・」
横川さんは、顔をひきつらせた。
次に、横川さんと同じ位宮尾さんと接触が多いであろうアルタイルの社長、高岡篤に話を聞いた。
「うーん、宮尾さんにトラブルがあったという話は聞いていませんが・・・」
四十代後半の社長は、首を傾げていた。
「私も、そんな話は聞いていませんね・・・」
社長と同年代の妻、律子も側で考え込んでいる。
宮尾さんの交友関係や勤務態度等も聞いたが、何も収穫は無かった。
「お役に立てず申し訳ございません」
「いえ、お忙しい中ありがとうございました」
そう言って私達が部屋を出ようとした時、御厨さんがふとキャビネットに目を向けた。
「仲がよろしいんですね」
彼の視線の先には、写真立てがあった。高岡夫妻がツーショットで写っている写真だ。旅行の際に撮ったものだろうか。
写真の中の社長はカジュアルなジャケットとスラックス姿で、大きい旅行用のバッグを持っている。律子夫人は、白いカーディガンに女性らしいロングスカートのワンピースといった装いだった。
「いや、お恥ずかしい」
社長は、そう言って苦笑した。
その後も、宮尾さんと接点のある人物に聞き込みをして回ったが、収穫は無かった。
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