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向かう先

ずっしりとした雲が地面に雨を齎す。跳ね返る泥が足元を汚していくがグランディアは気にしない。街の外へ偵察しに行った間に実験施設の生体反応が空になっていた。そっちの方が重要だ。「まさか、魔力を辿られたか」入口に辿り着く。魔力の流れが見えない。「ちっ、仕方ない遺体でもいいから持ち帰るか」慣れた動作で穴の中に降りる。血の匂いが辺りを包んでいる。「いや、さては餌を吸い上げる研究員達を皆殺しにしたせいで餓死したのか?」奥へ進む。開かれた扉の向こうには何も無い。グランディアは焦った。外に出た形跡はない。ならばどこへ行ったという。「くそっ!あの魔族の仕業か?」壁を蹴るグランディアに近付く影があった。「魔族ってのはウィルドの事か?ゴミ野郎」慣れたステップでグランディアの頬に拳をめり込ませるミコル。「な、なんだお前は!私の気配察知を掻い潜るとは」奇襲に脳みそが追いつかないグランディア。「魔族に警戒とか言われたけどなぁ、こんなもんか」パキッパキと首を鳴らしながら近寄る。「人間風情がふざけるな!」手を前に突き出すグランディア。赤い魔力の流れがミコルには映る。「へぇー、炎か」グランディアの手を掴み、冷やせ垂れるその顔に当てる。「自分の魔法に焼かれるってどんな気持ちかなぁ」少しづつ肉の焼ける匂いがしだす「や、やめ!」魔力は色んな方向へ放出された「何だよ、辞めちゃうのか?私が手伝ってやるよ」ミコルが空いた手をグランディアの頭の上に載せる。「よーし、いい子だ。んじゃ洗いざらい吐いてもらおうか」


ラーサグレンジの背中に揺られながら旧ギルドに戻った。「お前名前なんだ?ずっとラーサグレンジって呼ぶのに大変だし」目を見る。赤い目から送られてくるのは優しい日々のみだった。「名前ってんだろぉ……まぁいっかモフモフって呼んどくわ」研究所に黒幕が来ると踏んで無理やり待機、奇襲を仕掛けたが。もう動くには限界だった。「ちっと馬鹿しやり過ぎたかな」誰もが寝静まる刻、森の一角からは煙が立ち上っていた。「安心しろモフ之助、お前の家族は弔いの火により天まで上がるんだ」それから朝日が昇るまでモフ之助に寄りかかっていた。

「うーし、ふっかつ。ほれ、行くぞモフ之助」酒場に入るとメイドが朝の掃除をしていた。「おっはー。それとウィルドも」メイドの手伝いをせっせとしていたウィルドの頭を撫でる。「ミコルおはよ、ぅてって?!なんだそのやばそうなあれは?!」メイドは知っていましたと言わんばかりに呆れ、ウィルドは混乱していた。

「────という経緯があってな。コイツはウィルド、お前と同郷だ」「そんな……」遠回しに種族全滅を告げられたウィルドは下を向く。「この方はシュメリドと名乗っていますが、ウィルドさん心当たりありますか」メイドがモフ之助を撫でながらウィルドに声をかける。「シュメリド?シュメリドなのか!」ウィルドがそう呼ぶと戯れる様にウィルドに乗っかるモフ之助。「メイド、これ治せるのか?」「率直に言いますと治せません。ラーサグレンジ……治せるなら私が……」「治せないか、ん?なにかいったか」メイドは明らかに濁すようにゴミを広い捨てに向かう「いえ何も」

「なぁ、ウィルド……って大丈夫そうだな」落ち込んでたはずのウィルドはシュメリドと床を転がるように遊んでいた。「そうだ、伝えに行かないとな」ゴミ捨てから戻ってきたメイドに軽食を作ってもらい食べる。「ちょっと前視察来た人の所に行くから留守番頼んだぞ」行こうとするとウィルドに止められた。「シュメリドの事も伝えるの?」不安の目を見せられる。「グッ、そんな顔で私を見るな……はぁ、ただ単に依頼されてた魔族を倒したって報告だ」シュメリドとウィルド、それからメイドの2人と1匹を見る。「メイドとシュメリド、ウィルドを頼むよ」酒場を後にする。タイミングを見計らったようにペルド達が前を通る。「おや、ミコルさんじゃないですか」「おっす、丁度向かうとこだったぜ」「その様子では無事倒せたようですね」「あぁ……だが何個か言いてぇ事がある」睨むようにペルドを見る。「いいですよ、しかしなんのことですか」「本当に消したいのはこの辺り一帯じゃねぇのか?」退路を確認する。「魔族は狡猾です。嘘の一つや二つ、死に際でも吐きますよ」読めない表情でミコルを見るペルド。「あともうひとつだけ、ラーサグレンジ研究に王族関連の出資があったのはなぜだ」微かにまゆが動くのを見た。「そんなハズは……いえ、それは知りません魔族の改竄ではありませんか?」ペルドは部下に指示を出し、ミコルに追加のお金を渡すとそのまま去っていった。「ペルド、お前利用されてるだけじゃねーのか」

出たのにまたギルドに戻ることになった。ドアを開けるとチラホラと活動し始めていた。「ミコル!今思い出したけど、魔族倒す時は僕も着いてくって言ったよね?!」ウィルドがずかすがとやってきて問い詰めてくる。「悪い悪い、なんつーか?夜な夜な動くのが好きなんだよ。ウィルド、お前寝てる時間に起こすと脳みそ動いてないだろ」「そうだけどー、でもよく倒せたね」ウィルドが首を傾げる。「ん?そうかな、奇襲したらすぐだったけど」「奇襲?出来るはずがない、大勢や追われてない限り魔族には気配を察知できるんだ。後ろからなにか来ると首筋がゾゾって」ぶるっと震えて再現するウィルド「なるほど、運が良かっただけか?まぁそういうことだ」

昼時に勝機の声が上がる。唐突に告げられた現悪環境の撃破。「吉報だ!悪徳領主と手下共が縄かけられたぞ!」ギルド内はお祭り騒ぎに変わる。中には家族の元に帰ると言って酒瓶を持ち帰る者もいた。「さて、メイド行くぞ。わしらの仕事じゃ」「はい、ギルド長」メイドとギルド長は祭り騒ぎに目もくれず旧ギルドを後にする。「ウィルド、行くぞ!」ウィルドを引連れ2人に追いつくミコル。「あんたらどこ行くんだ?」「今のギルドを制裁しなければならん。1部のものたちは洗脳されていたが、それでも悪は悪じゃ」ケジメを付けさせると新ギルドへ乗り込んだ。

中は壮絶だった……自らが行った事に気付き贖罪での自死、獣のように重なり合う男女、隅で怯える者。「麻薬組織みてぇーだな……うげ、くさい」ミコルの軽口を他所に奥へ進むギルド長、階段をのぼりギルド長室の扉を開ける。「来ると思っていたよ、元ギルドマスターの老耄」目の前に居たのは筋骨隆々の男、力による支配を謳ってそうな見た目。「直にここも終わる。だから洗脳は解いてやったよ、そしたらどうだ!俺の部下も貴様が育てたかつての英雄達もみんな野生の動物に下がった!」下品な笑い声を上げる男。「ミコル、あいつが僕たちの種族を」ウィルドから嫌な魔力が溢れ出す。「お、無彩のガキか!自ら来るとはなぁ、お前を交渉に使ってやろうか?」「このく───」飛び掛かろうとするウィルドをメイドが抑える。「やめろ!あいつは仇なんだ!」それを見て男は笑う。「いいねぇ、御仲間に止められるなんて?仇だぞぉ?そういえばお前をずっと庇ってたあのメスガキ居ただろ?あれは絶品だったぞ」汚く舌を出し、煽り尽くす。「ほれ、言わんこっちゃない。2人は楽しく祭りでもしておけばよかったものを」ギルド長が呆れるように前に出る。ミコルでさえも飛びかかるそうな状況下で冷静だった。「ギルド長、あなたは別に述べていませんでしたよ。2人が着いてくることに対して」「あれ、そうじゃったか?まぁええ」ギルド長が杖をメイドに渡す。「なんだ、そのガキを喰わせてくれんじゃねーのか?老いぼれをヤル趣味はねーぞ」相変わらず汚い煽りを述べる男。「なんでワシがギルド長と崇められたか知っておっての狼藉、中々大きくでたのぅ」ギルド長の手にはいつの間にか剣が握られていた。「ぬんっ!」その一振で全てを表すのに最適だった。天井に振り上げた剣撃は屋根を突き破り、天に浮かぶ雲さえも引き裂いた。「っと、こんなもんじゃろ」それを見てさすがの男も焦りを見せる「うっ、うぉぉぉ!!!」斧を取りだし斬り掛かる。「丸見えじゃ、ほれ!」斧を持ったまま、左手が宙を舞う。「あ、あぁぁ……いてぇ!何しやがる!いてぇ」無くなった腕を抑えながら転がる。「るさい、慈悲など無用じゃ」顔に剣を振るう。だが、寸前でメイドが止めに入った。剣先は男の目にプツリと刺さって止まった。「ギルド長、生きて償わせるべきです。それにヌゥロス鉱山の人手が足りていないので」「そうじゃった、いやー!罪人とて殺せんのは辛いよじゃのぅ」最後の方はドスを効かせ、白目むいて痙攣している男に吐き捨てた。「ウィルド、泣くならなけ。喚け!私だってギルド長が居なければ飛び掛ってた……それにこれはギルド長のケジメだ」ギルド長は剣を落とし口から血を吐いた。「そうじゃ、ワシが啖呵を切ってもっと早くからアイツを始末しておけば君の種族は無事だったのじゃ……」ウィルドは泣いた。思いっきり。

動けないギルド長をメイドが、泣き疲れて寝たウィルドをミコルが運び旧ギルドに戻った。「はぇーな……仕事してる時とおんなじだ。楽しい時間は過ぎ去るのが早いって言うけど、私はこんなのに楽しさはねぇーぞ」用意された自室のベッドに横になる。初かもしれない休みに備えて居たせいで、脳みそがフル回転しない。「休みって確か、家族と過したり旅行行くことだよなぁ」思い返す、家族は居ない。旅行は仕事でだが踏み込んだことのない土地は無い程に出向いた。「同業者にバレず、ゆったり過ごすのが一番いいのか?でもなぁ厄介事ってのは」ゴロゴロ布団の端から端を移動していると部屋の扉がノックされた。「ミコルー、夜ご飯だよ」ウィルドが扉を開ける。「お、そっかすぐ向かう」横にはシュメリドがいた。「シュメリドはいい子だなぁ、ふむ。なるほど」「どうしたの?ミコル」「シュメリドがお前の事を心配してるぞ」シュメリドに意識を当て、思考を読み解く。「え、ミコル読めるの?!」「まぁーな、でも抽象的って言うか、なんというか……」布団から起き、カバンを背負って降りていく。「なぁウィルド?この後はどうするんだ」「この後って?」キョトンと首を傾げるウィルド。「前に言ったボイスラの入ってた教団を潰すって奴だ。お前はどうするんだと思ってな」「僕はミコルに着いていくよ。僕も少しは役に立つだろ!」「まぁーな、シュメリドくれぐれもウィルドを頼むぞー」顎下を撫でると嬉しそうにコチラに頬擦りをするシュメリド。「なんで僕じゃなくてシュメリドなんだよ!」

夜飯は豪勢だった。新ギルドや領主が蓄えていた高級品の食材がふんだんに使われた。「メイドー!手伝うぞー」ウィルドと別れたミコルはメイドの所へ向かう。慣れた手つきで鍋を、フライパンを駆使していた。「ミコルさ……ミコルでいいですか?私も」「なんだ、唐突に。良いけどよ」フライパンの方へ行き続々と焼いていく。「実は全て終わったら話す予定でした。私が産まれたのは今より億年は昔です」鍋に調味料を入れ、掻き混ぜるメイド。「確か龍だっけ?」「そうです。それと何故すべて終わってから話す予定だったかと言いますと。アナタは知ってしまってはこの街を捨てて先にそちらへ向かうと思ったからです」申し訳なさそうに下を向く。「気にすんなよ、時に情報ってのは命より重い。現に出し渋ったお陰で私は今ここにいる」出来た料理を皿に乗せてシュメリドの背中に乗せていく。「お前はいい子だ、ほれ」シュメリドがみんなの方へ運んでいく。「私は億は生きました、その中で何度か貴女のような狂言を吐く人を見ました。耳が良いので街に来る前から聴いていましたので……」「狂言ってそりゃ無いぜ、んで?それだけじゃないんだろ」メイドが箱を取り出す。「なんだこれは?」古びた小箱にAMと書かれていた。「見てください。死に際に渡された物ですが」綿の上にリボルバーが鎮座していた。「型式は私が居た時より100年は昔だな」「私が受け取ったのは確か1000年は昔でしたが。確かに貴女のように別の世界から来た方はいました」小麦を練り始めるメイド。「ほかの手がかりは無いのか?」「もうひとつあって、似た境遇の人達が作った村がここから300ドラフィ程にあります」慣れた手さばきで練られた物を切っていく。「聞きなれない単位だな」「かんたんに言うと私達の種族が1度に飛べる距離が単位です。たしか昔に別世界から来た人がそれらしいものを」ボロボロの紙切れが出される。「1ドラフィー辺り360?3kmか。んで1ドランあたり2506kgと……メイドの体重はさ──────」焼きたてパンを口に入れられ悶絶するミコル。「今は人間の値で測れます」

自分たちの分を作り終え、調理台の物をどけていく。「んじゃ、食べますか」コップとコップをぶつけ乾杯をした。「ミコルが解放したも同然ですが、出なくていいのですか?」「あぁ、別に賞賛欲しさにやってねーからな」メイドは気にかけるがミコルは気にしていない様子だった。「それにさ、私の行為は全て誰かから生活を奪う行為だ。褒められたもんじゃない」「でもそのお陰で穏やかに過ごせるもの達もいます」メイドと他愛無い話を続ける。「で、その時にホイって投げてさ」昔の仕事の話をするミコル。「数千年前なんて私ですら神ですよ、人々は縋らないと生きていけないんでしょうか」人間への愚痴をこぼすメイド。そんな穏やかな時間は唐突に終わった。

「辞めろよ!」ウィルドの声が響きわたる。キッチンからみんなの所に駆け付けるとペルド率いる、王族と思われる兵士達がシュメリドを囲っていた。ウィルドは地面に押さえ付けられ、助けようとしたのかボイスラも捕らわれていた。「メイド、ひとつ聞きたいんだが。王族に喧嘩売るって大丈夫か?」横に来ていたメイドに尋ねる。「この街が危険に陥るかも知れませんね」切ない顔をするメイド。「ですが、貴女はいつも誰かの生活を守る為に誰かの生活を奪ってきたのでは無いですか?」街のことは私に任せてくださいとメイドが肩を叩く。

「んじゃ、蹂躙するか!」白銀の鎧に金色の獅子が描かれた兵士10名、スーツに身を纏ったペルド。「狙うならお前だろ」まだ気付かれない内に銃を抜き右の腸骨を撃ち抜く。「ぐぬっ?!」変な声を上げ、ペルドが跪く。兵士達の半分は即座にペルドを守るように、残りは攻撃先を探し始めた。「いてぇーだろ。私も昔に撃たれたから知ってるよ」近くに落ちていた串焼きの串を拾う。「魔法ばっか対策してるだろ!あめーんだよ」目の隙間に串を投げ込む。1人目が倒れ、もがき始める。「何処だ!お前らどけ!」焦って周りの一般人達を剣で追い払う兵士。そのすきにウィルドとボイスラがシュメリドを回収して行った。「周りが退くと好都合だね」みんな2階に避難し、一階にはミコルだけが残った。「ペルドさんや、生かしてやっただけ感謝しな。まぁその様子じゃ脇腹から抜けたみたいだがな」ミコルのセリフにスーツを脱ぎ青ざめるペルド。白い下の服は脇腹あたりが赤く濡れていた。「いやぁ、魔法ってんだっけ?上手く利用すると弾道が的確に分かるんでねぇ」その言葉を皮切りに兵士達が一気に掛かってくる。「剣は混乱時に意味を成さないぞ」ヘルムを強打する。頭を抑えてる兵士で、次の斬撃を受け止める。「ほら、味方を切っちまうぞ」2人目の腕を掴み、3人目の剣で切断させる。「おらよっと」慣れた感じで3人目の頭を掴み、4人目のヘルムに衝突させ、5人目の股ぐらに蹴りを入れる。

「で、まだ5人残ってるけど、どうするんだ?」後ろから何とか立ち上がった5人目を無視しながらペルドの方へ向かう。「は、話し合いをしようっ……私を殺さないのそのためだろ?」痛みに悶えながらペルドは話す。「ならまずは礼儀ってもんだろ」斬り掛かる5人目の剣を手で掴みペルドの方へ投げる。それを危機とみて5人の兵士が剣を突き刺す。「なるほどねぇ、出来る部下は残して置いたと」ルイスを取りだし構える。「別に生かす道理も無いけどな。ただ聞きてぇのはなぜシュメリドを狙う」隙間を掻い潜るように守られているペルドの太ももに弾を撃ち込む。「は、はく!だから」兵士達の武装を解除させるペルド。「鎧はいいわ。武器だけでいいぞ」「王からの勅命だ。ラーサグレンジを持ち帰れと」白い封書がミコルに投げ渡される。ルイスをしまい、拳銃に切り替え、ペルドに向けながら封書を読むミコル。「隙があるなんて思うなよ、動いたら撃つぞ」封書にはラーサグレンジ関連施設の破壊とデータの略奪が書かれていた。「教団が持ち去った可能性を視野に旧ギルドとされいる施設にも立ち入り調査をしろと?新ギルドが指示してたのにか」ミコルが呆れる。封書を空に放り投げる。「疑問すら持たないのか?お前らは」「王の命令は命より重い」はぁ、と溜息を着いたミコルにウィルドの声が飛ぶ。「ミコル!後ろに下がって!」咄嗟に後ろに下がるミコル。「ちっ!」兵士の1人が魔法を放っていた。「せんきゅー、ウィルド」ペルドはその行動に対する見返りを知ってか肩から力が抜け、ヘナヘナとへたれこむ。「お前らが一国の王様の命令で動いてるとかなんだか知らねぇーが。わたしゃ国潰しの達人だぞ?あんまり舐めんな」拳銃を投げ付ける。謎の投擲物に魔法を放った兵士は慌てふためく。「投げ物は受け取らず直ぐに判断しないと死ぬぞ?」拳銃からはワイヤーが伸びていた。「うっしライトニング!」ワイヤーをつたい、ミコルの手から拳銃へ紫電が走る。「ぎゃっ?!」変な声を上げ、痙攣する兵士。「んで、あと4人!」魔法を構える2人、剣と槍で上手く踏み込んでくる2人。「連携ってのもいいけど、簡単に壊れる事は周知してんのか?」ワイヤーを引っ張り拳銃を手に取る。構えると2人は攻めの歩を止める。「ほらよ」引き金を引く。すぐさま2人は顔を守る。「まぁさっきのでおかしくなるのは知ってから弾なんてこめねぇーよ。ばか」鉄の矢を生成し、剣を持った方の足の甲に突き立てる。そのままワイヤーを首にかけ、ミコルが引っ張る。それを見た槍使いがワイヤーを切ろうと槍をワイヤーに当てる。「思い通りに行き過ぎると怖いなぁ。ライトニング!」ワイヤーから槍へ、そこから兵士へ紫電が巡る。2人が倒れたのを見計らってか火球がふたつ飛んでくる。「えっと、水!」手から湧き出た水が火とぶつかり水蒸気が発生する。「あっちぃ!だけども、隙飽き飽きなんだよ」水蒸気で蒸されて鎧を外そうとする兵士2人の頭を地面にたたきつけたミコル。木の床にめり込み、2人は動かなくなる。「んじゃお待ちかねの」ペルドを見ると、既に消えていた。「んー、逃げられたか」

生き残った4人の兵士を縛り上げる。「お前たち生きたいか?」ニヤニヤと笑うミコルに必死に頷く兵士達。「3人だけ生かしてやるよ」ミコルは口に巻いてた紐を解き話させる。「ギルド長、どの道ワタシは指名手配みたいな事されんだろ?」「じゃな、なんならこの街も危ういかもしれんなぁ」街の人達はさっきの勝利とは違い影を落とした雰囲気だった。「みんなで移動はできないのか?昔移民ってのを手伝ったことが……」ギルド長が話を遮る。「まぁワシらってのは元々流れ物たちさ。なんかやらかしたりした者達の子孫。気に病むことは無い」「ギルド長、下手な慰めは意味ありません。ミコル」ギルド長を押し退けメイドが前に出る。「この街は私の力でどうにか護ります。あなた達は安心して旅路に着いてください」リュックを手渡される。「これは」中には非常食や、簡易テントが入っていた。「それに皆さんが暗い顔をしているのは貴女との別れを惜しんでいるだけです。飲みの席にも参加しない英雄が居るのですよ?影の暗躍者も大概にしてください」よくよく見るとメイドの目尻に涙が現れていた。「泣くなよ、それにみんなありがとうな。仕方ねぇー奴らだ」見ればみんな泣いていた。ギルド長はヤレヤレと椅子に座り酒を注いでいた。

「ほらよ、みんなグラスは持ったか?」ミコルがグラスを掲げる。周りのみんなもそれにのっかりグラスを上につきあげる。「おまえら!また飲もうぜ、あと強くなれよ」ぐびっと飲み干しグラスを割るみんな。「おい、何割ってんだよ」ミコルが困惑する。「あー、ミコル……また飲もうって言って飲めた話は無いんだよ。だからこうしてみんなグラスを割るんだ。そうすれば今の飲みはなかったことになる」ウィルドがやれやれと説明を挟む。「なるほどねぇ、ならシンプルにさようならだな」荷馬車を貰い中に入る。「あ、そうだ。今は中継地がねぇーからメモくらいだが……これを」記録機能付きの通信機をメイドに手渡す。「知ってるぜ、お前実は異界の物を熟知してるってな」

ウィルドが空気を読まずに馬を進ませた。「お、おい!まだ話がって」「殺す時は冷静なのにこういう時はダラダラなんだね。まったく」「いいだろ別に……まぁなんだ、こういうことしたこと無かったからな。少しやってみたかったんだよ」

荷台にウィルドが戻る。「ミコルも子供じゃないか。さて、どっちが先に寝る?この先しばらくは村とかないし道なりだからさ」「ウィルド寝とけー、それとシュメリドももういいぞ。まぁバレるだろうけど村から出たところが見られて無ければ少しくらいは向こうも困るだろ」積まれた木箱の布を剥がすと少し苦しかったのか溜息を吐くシュメリド。「お前って寝てる時も意識とか共有出来るのか?そんならってダメか」軽く意識を合わせるが、花畑を楽しそうに走ってる回想が流れるだけだった。馬車は舗装された道を進んでいく。「にしても馬車も変わった形だなぁ。馬は先頭ってそうばだけど、人用の籠と荷台。軽トラみたいな見た目だ」謎の関心をしつつメモに留めていくミコル。「よし、メモ終わりっと。最近記憶が曖昧なんだよな」

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