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彼女に暇なし

森に夕暮れのオレンジ色が広がり始めた。「夜をどこかで過ごさないとな」「なーもう、どうせ魔法とかでテントとか簡単に建てれるんでしょ?任せるわ」ウィルドにテント立てを任せるとそのまま森の方へ入っていく。野草が豊富な森の中で夜ご飯となる食材を狩る。「木の実とか葉っぱ取ってきたぞ」戻るとテントというより土を盛り上げて作ったカマクラのような物が3つならんでいた。「ミコル~終わったよ!」エッヘンと威張るウィルドと俺が教えたんだけどねと呆れた風なボイスラ。

「ウィルドかまど頼むよ?ボイスラもなんかできる?」「俺はそうだな、水出したり火をつけるなら簡単にできるよ。あと少しだけど食材の下味の技術なら」「ん、なら頼むわー」ボイスラの鎖を取り、3人で料理を始めた。「肉は少し持って逃げれたからこれいいよ」また、どこからともなく出された肉。野営にしては上出来なスープが出来上がった。「うん、やはり野営はスープに限りますよね」「お、ボイスラも野営経験あるのか!いいよな、1人で過ごすときに暖まるスープが心に染みるんだよなぁ」「2人はすごいね、僕より短い人生なのに沢山の経験してるし」「まぁーな。ちなみに妄想話と捉えてくれていいが1人で2国程潰したことあるんだぞ!」時たま大きく腕を広げ身の上話を始める。「んで、そこでバーンって打って─────その時に敵がばって!……まだ子供だなぁ寝るなんて。ボイスラも寝てていいぞ、私は寝溜めれるし」「愚痴でも何でも付き合いますよ」「なんだぁ妻子持ちのくせに他の女にもちょっかい出すのか?」「いや、そんな気持ちは」「ジョークだジョーク。ほらお茶だ」「いただきます。ってまず……なんですかこれ」「睡眠薬だ、お前も眠れ」「はっは、毒殺ですか。油断のす……」ドサッと音立て横になるボイスラ。その重い体をテント押し込む。「まぁ本当は変わった世界に浮かれる姿を見られたくないだけなんだけどね」二人の眠るテント付近に鳴子を仕掛ける。事故で紐が切れたせいか範囲は狭いが効果はお墨付きだ。軽く指で弾くとクォーンクオーンと歪な音が響く。「音はこっちも向こうも変わらんのだな」更に、鳴子の外にねずみ捕りのようなシートを引く。「んじゃ現地調査しますかね。もしかしたらどっかの軍が開発した未知のテクノロジーに巻き込まれたのかもしれないし」草や木を触り、食べて近い物を出していく。地面に指を入れ温度や湿気、土の味を感じる。野生動物の痕跡を探り、生態系の確認をする。「ふむ、小一時間程見回ったが。変な見た目なだけで殆ど変わらない。日照や栄養、ここを根城とする生物達の特異的な見た目。遺伝子実験場の可能性も視野に入れないと」カバンからメモ帳を取りだし、いくつかのページを見返す。「だが待てよ?実験していたとしてそれならば彼等はなんだ?魔法とやらを使ったのを少なくとも向こうでは見た事がない」2冊目のメモ帳を取りだしメモを始める。「フォロンバスの生物進化促進法、ペルノメ・リカイル異界侵入伝記あたりが似ているが、フォロンバスはあくまで元あるものを沢山生やさせそれを利便性への追求による進化と称えた異端者。ペルノメ・リカイルに関しては悪魔崇拝の教祖だ」時期を記入していくがフォロンバスは今から30年は昔の人、ペルノメに関してはフォロンバスよりさらに100年昔である「軍に関係があると思えば何でも合点が行く、だがそれだからこそダメなのだ。つまり、私は異界に侵入したと考える他ない」結論を出し、いくつかの植物を指先サイズの試験管に入れて蓋をしていく。「異界侵入はたしか悪魔による統治世界の良さを見た彼が現実で似たことを起こそうとしたみたいな感じだった。なら私も何かそう思えざる得ないものを見つけるしかないということか」その時、クォーンクオーンと歪な音が森を包んだ。「うさぎかなにかか?」急いで荷物をしまい、戻ると足を取られて動けない野盗が3人ほど居た。「ほぅ、私相手にいい度胸じゃないか。何が欲しいのかな」3人は靴を脱ぎ、裸足でこちらに向かいなおる。「嬢ちゃんや、野盗が出るのは知っていたようだが。実態がギルドから派遣された特殊狩部隊なのは知らなかったようだな!」令状のようなものを見せつけながら武器を構える3人組。「ギルドだァ?頭おかしいんか!」1人を蹴飛ばし、ガン飛ばす。近くの岩場にカバンを置き、軽く構える「どうやら仕掛けられたようだな、我々が。ギルドに違反すると痛い目見るぞ!」下っ端の吐きそうなセリフを吐きながら下手くそな剣技で詰めてくる2人組。「んな!攻撃でっ!私を、倒せるかあぁぁぁ!!!」顎への張り手、金的への膝蹴り、肘で顔面を強打、手首を捻るように持ちながら背負い投げ。

「あ、ァァ……俺の鼻が」地面に投げられた方は肘が逆に曲がり、食べたものを吐き出した。「オゲェェ」「汚ぇな。あと1人か……草むらに隠れて矢を番えてるのは知ってんだよ。出てくるか打つかしてみろよ」シュッ!と音がなり頬を何かが掠める。「へぇ、毒矢なら勝てたかもしれないのにねぇ」倒れ込むように、走り出し潜む弓使いの方へ突っ込む。「なっ、普通突撃してくるか?!」弓使いは転がりながら矢を番え打ってくる。「そういうお前もその姿勢からよく打てるなっ!」飛んできた矢を掴みながら別の茂みに飛び込む。「煽ってはいいが!こいつ強いぞ」三本連続で飛んでくる。青い光を纏い、草木を吹き飛ばす勢い。「はっ!手品か?!いや魔法かよ」ゴロゴロと土の道を転がる。青い矢は地面に刺さると同時に小さな破裂を伴う。「原理は知らないけど、物が分かれば避けるのは容易さ」さっき掴んだ矢を飛んできた方向にぶん投げる。矢は弓使いからそれ、後ろの気に刺さる。「ほう、私と同じ弓使いか。かなりの狩人スキルとみた」攻撃の強さが増す。雨のように降り注ぐ矢のせいで攻めに移れない。「危ねぇ危ねぇ。直感が無ければしんでたな、避けてスグそこに刺さる。まぁ負ける想定は無いけど」避けながらいくつか思考する。魔法が無いという固定観念を捨て去る。有る、確かにある。ならば自分も使えるのでは。飛んでくる魔法も何も無い矢を掴み取る「魔法、イメージだとアイツみたいに青い光。あぁ、ダメだ……向き不向きとかあるのか?いや、でも試すしかない」矢を持つ手に力を込め、イメージをしてみる。頭の中では青い光が集まるが目を開くと何も無い。「あぁ!力任せの方が楽だろォ!」ビュォッ!と風を切る音を立て矢が飛んでいく。「魔法もなしにこの火力、惜しいな」短刀で軽く弾かれる。「少なくともこの異界に迷い込んで会った中でいちばん強いな」気付かれないように拠点に戻りルイスとカバンを手に取る。先程倒した2人は未だに悶えている。「さーて、反撃っと」カバンからルイスの着せ替えパーツを取り出し、近接用に作り替える。「おっと、ネジが。まっいっか!うらっ」森に銃声が響き渡る。動きがなく好機と捉えて出てきた弓使いの脇腹を弾が抉る。「がはっ!」「敵を前に慢心するんじゃねーよ三下」反動でバラけたパーツを組み立ながら敵を見据える。何が起きたのか理解出来ず直感的に茂みに飛び込んだ弓使い。だが、血でどこに行ったかは明白だ。

「うし、組み立て終わり。ごめんよぉルイスちゃん」スコープを覗き、動きを見る。ガサガサっと動きを見せる。「誘いか、んなのにハマるはずはないんだよ。おらよっと!」石を投擲する。茂みからの反応はない。「やはり逃げたか、んなら上に上がるまで」木の上に登り、敵の位置を探る。血の跡は無いことから止血したと見る。「ビーコンで見ると向こうか、居るかな」たまに仕込んだマイクロ発信機の電波を辿り敵の大凡の位置を割出す。「あの洞穴か、確かに都合がいいな。私からは見えないが奴からは見える」岩肌に無数に空いた洞穴、そのどれかに弓使いが潜んでいる。「まぁ私には強い味方があるんですがね、フラッシュバン!なんて便利なものはなくて、激臭を放つなんかやばい液体っ!」使用注意と書かれた瓶を取り出し、天空で撃ち抜く。散布された液体が風の流れで洞穴へと流れていく。「ふふーん、そこだっ!」ケホケホと咳き込む小さな音を頼りにひとつの洞穴に飛び込む。「ルイスたーん、しこたま敵にぶち込んであげるよ!」天井、壁、床に弾がめり込む。「なんの魔法かは、ケホッ……知らないが私だってあの下卑たる男達とつるむしかない理由があるんだ!マジックアロー!」洞穴の奥から3本の青い矢が飛んでくる。「しまった、奥に部屋があったとは」避けながらリロードする。「ちっ、ルイスちゃんの調子もなんか悪いし。他の武器はっと、あれ?投げナイフが増えてんぞ。数え間違えてただけか」走りながら奥へ向かう。曲がり角の手前で止まり、潜む。「なんだ、その理由は?よく分からないけど困ってるなら助けるぞ」「話しても意味は無い!絶対的権力に逆らうなんて不可能なんだ」奥から悲しみと怒りに満ちた声が飛んでくる。「あいにくわたしゃその権力に逆らい続ける存在なんでね。それに今私に逆らって死ぬか絶対的権力に逆らって生き延びるか。こんな簡単なやり取りに結論が出せない程に馬鹿じゃないだろ?」弓使いの弓が投げられる。「わかった投降する」手を挙げながら出てくる弓使い。「その、なんだ魔法とか使ってくるなよ?」「使わない、なんなら縛ってくれてもいい」弓使いを連れ、元のテントに戻る。肘の曲がった方はもう息絶えていた。「リドブ……」かつての仲間に蔑む視線を送る弓使い。「もう1人居たな、おっ木の上に隠れたって意味ねぇーけどね!」投げナイフを上に投げる。ドサッと音がして首にナイフの刺さった男が落ちてくる。「で?お前の話ってなんだ」丸太に腰をかけ弓使いの目を見る。「私はヘルゲル、元々ギルドで狩人を生業にしていた。だが、ギルドは悪に支配された────」ギルド長が追い出され、新しいギルドに変わったが。ライセンス保持、家庭生活の維持を優先するため、腐りきったギルドに残ると決めたと。

「なるほどねぇ、んでその悪いギルドが絶対的権力とやらか。ギルドねぇ、ギルドってのは職安みたいなもんか?」「ショクアン、なんだそれは。ギルドは存在しない国もあるから知らぬも当然か、ギルドと言うのはクエストを生産する場所だ」「なるほどねぇ、決まった仕事をする場所って訳でなく向こうが頼んできた仕事を自分らの技量の範囲でこなすと」「定住権や生活保護、色々な手当が貰える。黒くなっても抜けれないのは生活があるからだっ!くそっ、それを利用して……」「まぁー、話はわかった。ちょうどいい、ボイスラだけじゃたよりなかったしな。あんたもウチに加われ」手を差し出す。怒りと悲しみを浮かべるヘルゲルは驚きの顔を上げる。「いいのか?私は確かにお前を殺そうとした」「そんなこと言ったらボイスラも私を殺そうとしてきたぞ」ここに至った経緯をヘルゲルに話すと、ヘルゲルも納得をした。「なるほど、強い訳だ。にしてもその教団とやら、クエストにあったな。高給だが私は選ばなかった、日々の生活が送れる範囲のクエストしか受けなかった」「ってことはギルドを討伐すればいいんだな?」「危険だ、それに私みたいな者もいる」ヘルゲルの話では10も行かない少女達まで狩りに行くはめになっていると。「大人なら自己管理って言ってやりたかったが。ちっ……」

ヘルゲルから夜明けまで詳しい話を聞いた。

朝早くボイスラがテントから出てきた。「あぁすいません見張りしていた筈なのに寝ていましたね。と、その方は弓Sランカーのヘルゲル」ヘルゲルの顔を見て驚くボイスラ。「んだ、知り合いか?」「知り合いというか、妻です」よくよく見ると2人の首に同じペンダントが下がっていた。「なんだ!お前ら、まじで殺す気かっ!生活維持の為に野盗をする妻と、家族の為に沢山金を稼ごうとやばめの仕事に着く夫!」ラヨミコルは笑いながら転げる。ひとしきり笑い、2人にドン引きを食らったあと立ち上がり真面目な顔になる。「いいか?生活のため、大切な人のため。信念があるならそれは良い」2人の肩に手を乗せウンウンと話し始める。「だがな、ボイスラは小さい子を殺害していたかもしれない。ヘルゲルは愛する人を殺していたかもしれない。それだけは覚えておけ」俯く2人。「ふぁ~おはよー、2人とも?あれ」ウィルドが空気を読めずテントから出てくる。一旦ヘルゲルを見たあと、ラヨミコルの顔を見て頭にハテナを浮かべる。「あれ?ミコルが二人いる?」「なわけねぇーだろ、ちゃんと見ろ」コツンとウィルドの頭を小突く。痛いと文句を言うウィルドに細かい事情を説明する。「へぇー、ボイスラにこんな可愛い奥さんが居たなんてねぇ」照れるヘルゲルとウィルドにからかわれた事に不服なボイスラ。「お前には言われたくない!おらー!」走り回る2人を見てため息を吐くラヨミコル


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