表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

様々な世界・世界の詩

獣だらけの世界

作者: 仲仁へび



 ナイフをふるって、獣たちが寄ってこないように追い払い続ける。


 この世界はなんだ。


 獣しかいないのか。


 数は尽きない。


 それらはひっきりなしに、襲いかかってきた。






 俺は、世界航海士。


 まだみぬ星や、まだ見ぬ世界を探して、様々な場所に出かけている。


 相棒はいない。


 一人であちこちふらふらするだけの、気軽で気楽な旅人だった。


 しかし、たまにピンチに陥った時は考える。


 一人で旅をする事はつくづく危険だなと。


「あっちもこっちもけだものばっかじゃねーかよ」


 何度目かに訪れた世界。


 俺がたどり着いたそこは獣の世界だった。


 どこもかしこも、獣、獣、獣。


 獣しかいない世界だ。


 そいつら、ただその世界で生きているだけなら、まだいいが。


 その獣は俺を見かけると襲い掛かってくるもんだから質が悪い。


 船から離れなければよかったと、後悔しながらナイフを振り回し続けていた。


 数が多すぎて、こちらが力尽きる方が先なのではないだろうか。


 死の世界が脳裏に見え始めた頃、遠くから笛の音が聞こえてきた。


 すると、獣は嘘のようにどこかへ消えてしまった。


 あの音がなかったら、死んでいたかもしれない。


 ほっと息を吐いていると、「大丈夫ですか。外から来た人ですね」と声をかけられた。


 その人物は、男性の老人だった。


 よれよれのシャツを着た、もじゃもじゃのあごひげをたくわえた人物だ。


 その首元には、笛があった。


 男性は「もうじき、デビルが徘徊するので早く船に戻った方がいいですよ」と言ってくる。


「外の世界から来た人は、この星の事を知らずに獣に食い殺されるか、デビルに殺されてしまう」


 俺は、この世界の事を尋ねた。


 どうして獣だらけなのか。


 おじいさんは、なんなのか。


 デビルとは一体。


 おじいさんは答える。


「この世界には、過去に突如別の世界からデビルが現れました。悪魔の様な外見だったので、デビルという名前がついたのです」


 説明するおじいさんは、悲しそうな表情になる。


「人々やほかの生物はみな、デビルに殺されてしまいましたが、そんなデビルは獣だけは殺さなかった。だから獣しか生き残らなかったのです」


 おじいさんは首元に笛を示した。


「獣以外の人間の数人が、デビルが自然にどこかへ去っていく事を願って、コールドスリープしたのですが、ある日故障して強制的に目覚めてしまいました。目覚めた人間達は獣に食い殺されてしまいましたが、私は笛の音で彼等を制御する方法を見つけたのです」


 なるほどと俺は思う。


 それで、おじいさんは笛で操った獣に守られて、デビルから生き残ってきたのだろう。


 俺はよろしければ、と提案した。


「俺と一緒に人のいる世界に行きませんか」


 この世界に一人ぼっちになる人間が、気がかりだったからだ。


 しかし、おじいさんは首をふった。


「最初は恐ろしかった獣たちにも愛着がわきました。だから彼等を残す事はできません」


 おじいさんの今後の事は気になったが、それが選択ならば仕方がない。


 俺は、おじいさんの意見を尊重する事にした。


 数時間事にデビルがあらわれるというので、俺はいそいで船に戻る事にした。


 船を動かして、別の世界へ旅立つ前に、おじいさんと獣が仲良くよりそうのを窓から見つめた。


 この世界には獣とデビルしかいない。


 人間は一人しかいない。


 それでも、おじいさんはそれほど寂しくはないのだろう。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ