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トカゲ姫と恐竜王子 〜襖に 頭突っ込みそうなほど、愛しいです〜  作者: 静寂
第17章 トカゲ姫と恐竜王子は、力を合わせます
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キノコにホタル

「さあ、戦いの始まりです」



 センザンコウの鱗を纏ったリチャードがそう言って、口の端を歪めて笑った時だった。

 バツンと周りが真っ暗になったのだ。

「ええ!なにこれ?停電?」

 そう言ってから、これが停電でなく、リチャードが起こした何かの作戦や罠ではないかという考えに思い至り、自分のその考えにゾッとした。


 近くの気配がサッと動いて私を守ってくれようとするのを感じる。

 シュウちゃんだ。急に真っ暗になって不安だった気持ちが、ホッと安心する。

「シュウちゃん……」

「大丈夫ですよ、お嬢さん。私は夜目は利きませんが、気配には敏感なのでちゃんとお守りします」

 そっか、トカゲは昼行性だもんね。夜目は利かないよね。

 ってことは、このままじゃ、危ないってことじゃん。


「シュウちゃん、明かりって復旧しますかね?」

「どうでしょう?原因が分からないので、なんとも……」

 そりゃ、そうだな。

 これが、リチャードが起こした罠や作戦であれば、復旧は難しいだろう。

 と言うことは、かなり不利な状況になるわけだ。


 出来れば、どうにか明るくしたい。

『願うのだ。願えば、その飴色の珠が力を引き出してくれようぞ』

 頭の中でロンちゃんが言っていたことがリフレインされる。


 えーっと、私はこの部屋を明るくしたい。

 けれど、電気の供給は止まってしまっているかどうかさえ分からない。

 つまり、暗くなった原因が分からない。

 じゃあ、どうやって明るくすれば良いのか?



「グルルルルルル……グワァァァーー」

 琉旺さんの咆哮と共に、何か重いもの同士がぶつかり合うようなドスンという音が、暗闇に響く。

 始まった!

 リチャードと琉旺さんが戦っているんだ。


 琉旺さんは、獣脚類の肉食恐竜だから夜目が利くんだろうけど、リチャードはセンザンコウだよね?

 この真っ暗な中で見えるんだろうか?

 そんなことを考えている間にも、ゴスンっと鈍い音が聞こえてくる。 

「グワ、キューーーーーゥゥッ」

 琉旺さんの威嚇する鳴き声が聞こえる。

 早く、早く明るくしなきゃ……。



 私は、数珠を握りしめると、頭の中に浮かんだ映像を膨らませながら、リノリウムの床に片膝をついて座り込むと、数珠ごと手のひらを床に押し当てる。


「願わくは 夕月の光の如く 月の光し 清く照らしける 昼とまかはむ」

(出来ることならば 夕方の月が照らす光のように 月の光が冴え冴えと照らしだす 昼と見まごうばかりに)


 焦った私が思い浮かべたのは、先日大学の別の研究室で見た、光るキノコだ。

 トモシビタケ、ツキヨタケ、ヤコウタケ、シイノトモシビ……他にも見たけれど、詳細を忘れてしまった。我ながら、かなり雑だ。

 淡いグリーンの発光する、3センチ程度の傘の小さなキノコたちは、群生してかなり明るい光を放つのだ。

 それらのキノコを思い描いた私の足元からは、緑の光が放射線状に輪を描きながら、広がっていく。

 その光は、床を覆うと、壁や長い作業机、棚や薬品を入れた瓶にまでびっしりと生えて広がる。

 最後に、天井にもその範囲を広げると、部屋中を淡いグリーンの発光体が覆い尽くした。


「おお!これは幻想的ですね」

 シュウちゃんが隣で、ホウッと小さく息をつく。

 全く見えなかったシュウちゃんの表情も、優しい緑色に照らされて、ぼんやりだけれど見えるようになった。

 ……いやぁ……けど、やっぱり暗いな……。


「キレ〜イですねぇ……」

 リチャードは、そう言いながらも琉旺さんからの攻撃を受け流している。

 長く尖った鉤爪がリチャードを捉えるが、センザンコウの硬い鱗がリチャードを守っているので、ガギっと派手な音がするだけで、大した打撃になっていないようだ。


 もう少し、明るさが欲しい。

 私は、今度は数珠を大きくゆっくり空中で回してみる。

 黄色く丸い点のような光が、無数に飛び立ち始める。

 小さな明るい光は、煌めくように明滅を繰り返して、部屋の中をふわふわと飛んで、光の軌道を描く。


 もう季節は冬だと言うのに、私が頭の中で思い描いたのは蛍だ。

 相変わらず、琉旺さんとリチャードは、ガシン、バシンと音を立てながら、戦いを続けている中で、私が願った発光体たちは、全く違う世界にいるかのように光を放っている。

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