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天井裏 遁走劇

 バタバタとうるさい足音を立てて、数人の男達がやってきた。

「おい!いないぞ!どこいった?」

「探せ!」

 下から、男達が怒鳴る声が聞こえる。


「陽菜子、ここから出るぞ。良いか、俺の歩いた後をついて来て」

 私は、コクコク頭を振ると、琉旺さんの後をソロソロと歩く。

 彼は、私の手を握って、私がついて来れるだろう最速のスピードで歩き始めた。

 天井の板は、ミシミシと音を立てているけれど、今のところ抜けることはない。

 薄暗い中、どこに向かっているのか、よく分からないまま、兎に角、琉旺さんに手を引かれて、先を急ぐ。


「おい、天井の通風孔が空いてるぞ。あそこから、上に逃げたんじゃないか?」

 しまった……。キチンと、通風孔の蓋を閉めておくべきだった。

「誰か、上がってみろ!」

 下では、上に上がるための椅子か脚立でも用意しているのか、ガチャ、ガチャンという金属同士が当たる音が聞こえてくる。


 琉旺さんは、私の手を、更にギュッと握ると歩くスピードを早めた。

 どうにか、転ばないように、必死で足を動かして琉旺さんの後を追いかける。

 そんな私たちを、光が照らす。後から追いかけてきた奴らの懐中電灯が照らしたのだ。

「いたぞ!2人いる。仲間か?」

「追え!逃すな!」


 何人いるんだろう?怖くて後ろを振り向けない。緊張と、焦りで喉が張り付く。どんどん足音が近づいてくる。

 琉旺さんは、私の手をグイグイ引っ張って、どんどんスピードを上げて、今では引きずるように走っている。

 私は、日頃の運動不足も相まって、とうとう足がもつれて、そのまま天井の板の上に転んでしまった。

 ドーンっという音と、ミシミシと板が軋む派手な音がする。


「陽菜子!」

 繋いでいた手が、転んだ拍子に外れる。

 琉旺さんはすぐに戻ってきて、私を抱き起してくれたけど、追いかけて来た男達に囲まれてしまった。

 どうしよう……。追い詰められて、泣きそうになった私の耳に、微かにだけれど、聞き覚えのある声が聞こえた。

「……どこ……たんだ………、……から、あれ…………に……」

 言葉の内容は、さっぱり分からないけれど、遼ちゃんの声だ。

「え………うの?……も…………さん……いてる………」

 三嶋さんの声も聞こえる。一か八かだ!私は、立ち上がると、その場で飛び上がった。


「琉旺さん、飛んで!下に降りよう!」

 琉旺さんは、何言ってるんだ?って顔をしたけれど、流石、日頃から訓練している人は違うのか、反応が早い。

 すぐさま足を振り下ろす。薄い天井の板に、飛び上がって全体重を乗せた私が着地するのと、琉旺さんの振り上げた足が板にめり込むのは、ほぼ同時だった。


 バシン!ミシ、メリメリメリ…………ビシビシ、バリーーーーン


 私たちの足元の天井板は、衝撃を受けて、見事に割れた。

 琉旺さんは、落ちる時に咄嗟に、私を覆うように抱きしめてくれる。

 そのまま周囲の板ごと、追いかけて来ていた男達も一緒に巻き込んで、下に向かって落ちた。

 ドスーンとも、ゴスーンとも聞こえる大きな音を立てて、天井ごと落ちた私達は、モウモウと巻き上がる木屑と、埃の向こうに、遼太と、三嶋さん、ムウさんに、シュウちゃんまでいるのが見えた。




 皆を見つけて、ホッとしたのも束の間、一緒に落ちてきた男達に、一瞬にして囲まれてしまった。

「陽菜子、俺から離れるな!」

「琉旺さん……、怪我してないですか?」


 私は、男達に囲まれたことよりも、琉旺さんの方が心配だった。

 落ちる時に、私を抱きしめて落ちたために、琉旺さんは私の下敷きになってしまったからだ。

「うん……ちょっとシャツが破れたくらい。鍛えてるから、どうにか大丈夫」

 琉旺さんは、チラリとこっちを見て、この場の空気に、全くそぐわないような笑顔で、フンワリ笑った。

 あれれ?私、どうしちゃったんだろう?何だか胸がドキドキする……。やっぱり、心臓が悪いのかもしれない。

 家に帰ったら、早めに病院で検査を受けよう。

 そんなことを考えながら、ぼんやり琉旺さんを見つめていると、周りを取り囲んでいた奴らが、琉旺さんに飛びかかってきた。


 琉旺さんは、私を背後に庇いながら、男に回し蹴りをお見舞いしている。

 シュウちゃんと、ムウさんも参戦して、みんなが暴れるもんだから、一旦落ち着いていた埃や木屑も舞い上がって、視界が悪くなり大混乱だ。


 琉旺さんが、男の腹を蹴るドスっという鈍い音や、シュウちゃんが、殴りつけるガスっという鈍い音、ムウさんが足払いをして、男が倒れるドスンという音が響く。

 映画やドラマのように派手な音じゃ無いけれど、鈍いけれど人間を殴るとくぐもった様な音がするんだなぁと、琉旺さんの背後で、周りの様子を確認しながら、脳が現実逃避をする。


「ねぇちゃん、ボーッとしてないで、こっち」

 遼ちゃんに声をかけられて、手を引っ張られる。男達が、乱闘をしている場所から、引っ張り出してくれる。

 三人の邪魔にならないように、なるべく隅の方によっていると、リーダー格の男が声を張り上げる。


「応援、呼べ!」

 それを聞いた別の男は、腕にしていた通信式だろうデバイスを操作した。

 そうして、物の数分で私たちは、応援だろうワラワラとやってきた男達に、再び取り囲まれてしまったのだ……。


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