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ねぇちゃん、それだよ!

 廊下を挟んで、左右のガラス張りの奥に見える部屋は、机の上をパーテーションで区切られ、何かの計測機や、顕微鏡、シャーレーやフラスコなどが置かれている。

 無数にある棚には、薬品であろう液体の入った遮光瓶が並べられている。


 しかし、人気はなく、非常灯と常備灯の灯りしかない室内は薄暗い。

 当然、私たちの歩いている廊下もだ。

 その薄暗い廊下を進めば、頑丈そうな扉に行き着いた。

 扉のノブには、暗証番号を入力するためのテンキーがついている。


「ムウさん、この番号って分かりますか?」

 私の問いかけに、眉間に皺を寄せたムウさんは首を振った。

 そりゃぁ、そうだろうな。今までここに入ったことがない人に、暗証番号がわかるはずがない。


「ただ……お屋敷の中で、暗証番号が必要なものに、共通の番号がいくつか使われています。

 試しに、知っている限りの番号を入れてみましょうか?」

「そうだな……。じゃあ、ムウさんの可能性が高いと思える番号から入れてみて」

「分かりました」


 ムウさんは、何度もテンキーを押して、思いつく暗証番号を入れていた。

 けれど、上手くいかない。

 座り込んで、その様子を見ていた遼ちゃんが徐に立ち上がる。


「ねぇ、ちょっと俺にやらせて」

 遼ちゃんは、テンキーをテンポよくピピピピと押す。

 カシャンと音がすると、扉が空いた。

「え?どして?

 何で、わかったん?

 何番やったん?」

 扉が開かないことに嫌気がさしたのか、座ってお握りを食べていた三嶋さんが、興奮したように立ち上がる。



「一先ず、先に進んで。どうぞ」

 お握りを包んでいた、アルミホイルやラップや片付けると、慌てて扉の向こう側に入る。


「………0000。初期設定番号だった。

 この施設さ、立派だけど古いじゃん?扉についてるテンキーだって古いタイプだし。

 絶対しばらく使ってなかったんだよ。

 古いタイプの暗証番号入れる機器って、一旦電池がなくなると、電池交換した後に、初期設定に戻ることが多いからさ」

「確かに、一昔前の設備だよね。顕微鏡、ちょっと古いタイプだった」

 私は、ここまで来る途中で見た研究室に置かれていた設備のことを思い出す。

「ずっと、使っていなかったものを、慌てて使用することにしたのでしょうか?

 この施設の入り口エリアに、人の出入りが多くなったのもつい最近のことです」


 何だろう?人のいない古い施設、いなくなってしまった琉旺さんシュウちゃん、それに唱子さん……。

 胸の中がもやもやする。


 誰もいないことをいいことに、私たちは、ボソボソと話しながら先を進む。

 けれど、古い施設が広がるだけで、何もない。

「何もないねぇ……。こことは違うんとちゃうの?

 若しくは、違う通路があるとかやないやろか?」

「なんか、もやもやする。罠にかかってる気分……」

 そう呟いた私に、遼ちゃんがグワッとこっちを見る。


「ねぇちゃん、それだよ!ねぇちゃんにしちゃあ鋭いよ。

 これ、罠だな。

 琉旺さんなんか、拉致ったら、早々にバレる。

 琉旺さんを探しに誰かが来たら、如何にもそれっぽい、ここに誘導して、誤魔化すつもりなんだよ」

「え〜、ほな、本当の琉旺さんの居場所はどこやの?」

 対照的に、のんびりした口調で聞いた三嶋さんに、遼ちゃんはビシッと指さした。

 推理もののドラマみたいだ。


「唱子さんの部屋だよ。唱子さんは、いなくなった時に、部屋から出てないんだよ。

 部屋から続く何処かにやられたんだ。

 お嬢様の部屋に踏み込んで探すやつなんて、まずいないだろうからな。

 逆手に取ったんだ」


「出ましょう」

 私たちは、急いで元来た道を戻って、地上に出る。

 その足で、唱子さんの部屋に向かった。


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