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潜入開始

「まさか、屋敷の地下にこんな立派な施設があるとは思いませんでした……」

 足音を消しながら、そろそろと進むムウさんの後に続いて、私と遼太、三嶋さんの3人は遅れを取らないように気をつけながら進む。



 あの後、遼ちゃんは自分のPCと琉旺さんのPCを繋いで、凄まじい勢いで、ダカダカとキーボードを打っていた。

 一体何に使うのか、大量のUSBメモリーを自分の部屋から持ってくると、それに何かのデーターを移しているようだった。

 その様子を見ていても仕方がないので、お台所で米を炊いて、お握りを握ると息巻いている三嶋さんに従って、いろんな具(いつも私が常備している冷蔵庫の常備菜だ)のお握りを握って、ラップに包んだ後、アルミホイルでもう一度包む。

 空きペットボトルにお茶を入れると、お弁当の出来上がりだ。

 三嶋さん、遠足に行くくらいのイベントだと勘違いしてないと良いな……。


 

 お屋敷には、従業員通路というものがあって、私たちはそこからお屋敷に入った。

 勿論、従業員通路も警備がしっかりしていて、何処の会社の誰かっていうことを確認される。

 ムウさんは、日頃、唱子さんの、筋の通らないわがままばかりを聞いているとあって、『唱子お嬢様が、必要だと言われている』と言う必殺技を使ってPASを用意させていた。

 

 何事もなく、お屋敷の中に潜入出来たは良いけれど、さて、これからどうしたもんか?と、思っていると、遼ちゃんが弾んだ声でムウさんに聞いた。

「秘密の通路ってどこですかね?」

()えねぇ!そこ行きまひょ」

 三嶋さんも軽く乗って答えている。

 え?秘密の通路?なんだそりゃ……?そう思ったのは私だけだったようだ。


「ご存知でしたか……」

 ムウさんは硬い表情で話始めた。

 ええ!!どうしてご存知なのよ?遼ちゃんや、三嶋さんに問いかけるように顔を向けたけど、ふふん!と得意げな顔をされただけだった。

「けれど、俺も実際のところは詳しくは知りません。

 屋敷のどのあたりにあるのかくらいで、なぜあるのか、なんのためにあるのか、どこに繋がっているのか、そう言ったことはまるで分からないのです」


「良いよ、良いよ。兎に角さ、その場所に行ってみようぜ」

 軽く言う、遼ちゃんにムウさんは険しい表情を崩さない。

「しかし、琉旺様の大事な方々にもしものことがあったらと思うと……」

 この人、真面目なんだな。

 私の中のムウさんの、最初の乱暴で横柄なイメージが少しずつ変わっていく。



 思えば、琉旺さんも似たようなもんだった。

 皆、多かれ少なかれ、二面性と言わず、三つも四つも自分の中にいろんな顔を持っていて、どの人も似たようなものなのかもしれないな。


 私は、今まであまり他人様と関わり合いにならないように生きてきた。

 だから、自分以外の人が、どんな内面を抱えて生きているのかなんて、大して興味もなかったし、知ろうともして来なかった。

 けれど、どんな人にも、きっと、いろんな面があるんだろうな。


  琉旺さんと知り合って、図らずも、知ることになった他の人の気持ちや、自分の中に生まれた色んな気持ちを、まだ上手く整理も出来ていないし、飲み込めてもいないけど、それでもこの変化を楽しんでいるところがあるのは事実だ。

  琉旺さんが、人との距離をとりたがる私に対して、少しずつ距離を縮め、何度も自分の気持ちを打ち明けて、安心させてくれたおかげだ。


 そこまで考えて、そういえば、自分は琉旺さんに自分の気持ちを言葉にしたことがあっただろうか?とふと思い立った。

 一生懸命考えてみたが、いくら考えても、私は琉旺さんに『好き』の一言も返していない。

 なんてこった!この上は、一刻も早く琉旺さんに会って、自分の気持ちを伝えねば!


「ムウさん、うだうだ言ってる暇があったら、さっさと進みますよ。

 こうしている間に、唱子さんは泣いているかもしれませんよ?」

 一気に積極的になった私に、遼ちゃんと三嶋さんは不審げな表情をしたけれど、ムウさんは対照的に、ハッとした顔をする。

「はい、参りましょう。ウダウダ考えるのはやめにします」

 そう宣言するように言うと、屋敷の奥の方に向かって歩を進めた。

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