あの頃、僕たちは、FABだった。
「よろしく。」
オレンジ色の笑顔で、ニカッと彼は笑う。
あまりの空気の違いに、一瞬面食らってしまったのだが、直ぐに握手を求められていることに気づき、手を握る。
重い荷物を腰から下ろし、席に着こうとすると、あの人がテーブルへ移動すると言うので、言われるがままテーブルへ移動する。本当は、あの人の顔を正面から見るのは苦手だったので、極力避けたかったのだが…
「…おぅ…まぁ、なんか…飲めや…」
勧められるがままに、僕はいつも飲んでいた、ウォッカで作ったマティーニを頼み、浮かんでくる疑問を、そっと押し殺していた。
マティーニを飲みながら、しばし歓談(とは言え僕は、相槌を打っていただけだが)していると、どうやら何かを決心したらしい熱血漢風の男が、
「まぁ、こいつで良いかな〜。つか、よっぽど変なやつでもない限りなんとかなるし。」
と、唐突に言い出したもんだから、僕はまさか自分を指しての事だとは思わずに、お得意の適当な相槌で、いいっすねーなんて、返事をしていた。
「じゃあ決まりだね。明日…そうだなぁ…池袋の西口に十三時。よろしく。」
-これが僕と彼との出会いであった。




