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薄暗い森の中で

 ――どうして、どうして。


 真っ白な頭の中でその言葉だけが繰り返される。


 おかしい、ありえない。こんなこと、起こるはずがない。


 何度否定したところで目の前の光景は変わらない。


 鬱蒼とした森の中は暗く、ランタンの明かりだけが頼りなく揺れている。

 静かな森の中で聞こえてくるのは僅かな呼吸音。だがそれもいつ消えてもおかしくない。


「駄目、駄目よ」


 縋りつくように抱きしめても、反応は返ってこない。

 今手放すと永遠に失われてしまうのではと怯え、湿った服を握りしめた。


「助けて」


 震える声で紡がれる懇願に応える人はいない。

 ここにいることを知る人は誰もいないのだから当然だ。


 ――たとえ近くに誰かいたとしても、助けられる人はいなかっただろう。


「助けて」


 だけど、ひとりだけ助けられるものを知っていた。

 今の今まで忘れていたけど、確かに知っていた。


 他の誰も知らないものを、私は知っていた。



「助けて――」


 ――その名を呼ぶのは、まだ先の話。

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