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1.名物100段ソフトクリーム

かわいい女の子が薄汚れた甲冑と武骨な剣を取って戦う姿はかわいい!と思って書いてしまってます。


「おばあちゃーん!100段ソフトクリームくださーい!」


春の暖かい風に梅の香りが混ざる頃。

ある駄菓子屋に元気な女子小学生の声が弾んでいた。

木の一枚板に「ちよ」と書かれた古風な看板が玄関の上にかかっている。いつ建てられたのかわからない木造家屋を改造したような店構えは、お世辞にも綺麗とはいえない。だが古風な落ち着いた雰囲気は小さな住宅街に溶け込んでいた。


「おばあちゃーん?いないのかな?100段ソフトクリーム食べたかったのに」


赤いランドセルを背負い黄色い学生帽を被った彼女はガラス製のショーケースに顔をくっつけて中の様子を伺う。ところどころ霞んでいて中の様子はぼやけて見えるようだ。


「うーん、テレビの音は聞こえるからおばあちゃんいると思うんだけどなー。おばあちゃーん!」


彼女の声だけが反響し、彼女以外の声はない。


「おかしいなー、お出かけ中なのかな」


暇を持て余した彼女が、ふと店の前に飾られているソフトクリームサインに注目する。

ソフトクリームを模造した看板。適当な商店街でも歩けば簡単に目に入るだろう。しかし、今彼女が眺めているこの看板は異様と背が高い。それはもう駄菓子屋の2階へ突き刺さるのではないかという勢いでそびえたっていた。


「それにしても大きいなー、こんなのと同じソフトクリームが出てきたから初めはびっくりしちゃった」


あまりの高さに倒れないかどうか手で押したりして時間を潰していると、店の奥からいつもの優しい声が聞こえてきた。


「はいはい。誰か呼んだかね?」

「やった!おばあちゃん、こんにちは!100段ソフトクリームください!」


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ガラス製のショーケース越しにいつもの元気な声が聞こえてくる。

年季が入って霞んだガラスにも関わらず、赤いランドセルを背負い黄色い学生帽を被った女子小学生が明るい笑顔をこちらに向けているのがわかった。


「はいよー。その声は美咲ちゃんかい?今から作るからねぇ。ちょっと待ってておくれよ」


100段ソフトクリームを始めてからかれこれ20年は経っただろうか。齢を取るごとに腰が曲がってしまい、今では台座でも使わないと美咲ちゃんぐらいの子供相手では直接顔を見ることさえできなくなってしまった。

ソフトクリームコーンを左手に持ち、右手でソフトクリーム機のレバーを引く。


「千代子おばあちゃん、いつもありがとうございます。」

「あっ、ママも来たんだね!」


3段ほどソフトクリームを巻けたところで、同じく聞きなれた声が聞こえてきた。ソフトクリームを作りながらも声が聞こえた方に目をやると、美咲ちゃんと同じく短めの茶髪が似合う女性が立っていた。


「あらあら、裕子ちゃんまで。今日はお仕事がお休みなのかい?」

「美咲がどうしても食べたいと言うものですから。それより”ちゃん”付けは恥ずかしいですよ」

「あなたが美咲ちゃんと同じぐらいの時から知ってるからねぇ。あたしにとっちゃどちらも可愛い孫娘みたいなものだよ。それにしても美咲ちゃんは裕子ちゃんが子供の頃とそっくりでびっくりしちゃうねぇ」

「ママも100段ソフトクリーム食べてたの?」

「美咲ちゃんのママがね『もっと大きいソフトクリームが食べたい食べたい』と、お店の前で暴れていたのを見かねて作ったのが100段ソフトクリームだからねぇ。おばあちゃんはよく覚えているよ」

「そうなんだ!ママ、おばあちゃんに迷惑を掛けちゃダメだよ!」

「お、おばあちゃん、今日もソフトクリームが長いですね」


分が悪くなったのを感じ取ったのか今作ってるソフトクリームに話題を変える裕子ちゃん。


「全く、話を変えようとしたってそうは…あら、ちょっと長すぎたかねぇ」


話に夢中になって少々作りすぎてしまった。


「100段どころか150段ぐらいになっちゃったねぇ。美咲ちゃん、今日はいつもより多くしといたから沢山食べておくれよ」

「わーい!おばあちゃんありがとう!」

「いつものよりも長くなってるからねぇ。食べる時は気を付けるんだよ」


一生懸命両手を伸ばし受け取ろうとする美咲ちゃんに、こちらも手を伸ばして手渡す。


「おばあちゃん、私が受け取りますよ。ほら美咲、手伝ってあげるから」


美咲ちゃんだと落としそうで不安を感じたのか裕子ちゃんが代わりに受け取った。


「ま、ママ大丈夫?手震えてるよ!」


受け取ったのはいいものの手を震わせながらソフトクリームを少しずつゆっくりと地面近くまで降ろしていく裕子ちゃん。

冷や汗を垂らしながら裕子ちゃんが美咲ちゃんに何か話かけているが声が小さくてよく聞こえはしない。口の動きからして「はやく、はやく食べて!はやく」とでも美咲ちゃんに言っているようだ。そんな苦労も関係無しに美咲ちゃんはショーケース上に置いてあったプラスティックスプーンでソフトクリームを食べる。


「ふふ、微笑ましいねぇ。ん?あらぁ、なんだか今日は人が集まってるねぇ」


店を囲む形で人だかりが出来ているのに気づいた。


老若男女様々でお祭り前のような雰囲気を感じる。ビール片手に集まっている父兄達もおり、何やら試合観戦でもするかのようだ。

美咲ちゃんがソフトクリームを削り食べることによってバランスを取りやすくなったのか、落ち着いた口調で裕子ちゃんが話しかけてきた。



「あれ、今日はおばあちゃんのお店が甲女試合の係争店ですよ」




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