青少年がゆく
コウとユアのスキルを交換しました
西にイズール。北に獣人の森。
リデル本領はイズーリア守備の要であり、旅人の通過は許されない。
従って、商人を始めとする旅行者はイズールから東へ抜ける為には外領をぐるっと周る必要がある。
獣人との手打ち以降通過出来るようになった北のエリム周りか、南の沿海域周りか。
獣人の森に残ったという元領民も気にはなるが、流民にさせてしまった負い目のあるシロには合わせる顔がない。
何より。
エリムに行くと、また軽薄殿下が網を張って待ち構えていそうだ。
「なんかカブトムシにでもなった気分。」
「うん?」
「なんでもない。ねえ、ハッタさん。」
「うむ?」
傾国美女モードでひらひら歩いていたハッタが振り返る。
ミルガルムにとことん相手にされなかったのが少々詰まらなかったようだ。
「僕はサーリフで剣を鍛えようと思うのですが、ハッタさん達はいかがしますか?お国への旅を進められますか?」
「そうよのう。コウとヨンは共に行くであろうが、余は剣に興味は無いしの。ユア、ムイどうする?」
「剣に興味があるの?」
ヨンに肩車されているコウにハルが尋ねる。
「剣の師匠です。」
ヨンがてれっと爆弾発言をする。
「え、えええっ?!」
「武の師匠がユアなのよ。」
ムイもいい添える。
「なんでそんな人達が捕まってたの?」
最強クラスである。もっともな質問にヨンとムイが顔を見合わせる。
「ハッタ様が、」
「ヘマをして、」
「手足出せないー。」
「降伏したのー。」
「えーと。ハッタさんがやらかした尻拭い?」
ハッタを除く神人達がうん、と頷く。
「ハッタさんって、もしかしてど貧乏神?」
「お茶目なだけじゃ。」
目を見てにこお、と微笑みかけるのを慌てて俯いてやり過ごす。
うっかり余波を食らったシロががちと唇を噛みヒールと呟いてからささっと口許を拭って何事もなかった顔で歩く。
シロの一連の動作を目撃したヒースが慌てて駆け寄る。
「シロさん、大丈夫か?」
「ひゃ。だ、大丈夫ですから。」
言いながら耳を塞ぐ。
その仕草にヒースはムッとする。
「なんだよ、シロさん。俺は話しかけたら駄目なのか?」
ミルガルムにスルーされたのはヒースも同じで、少し落ち込んでいたのにシロにまで相手にされない。
「違うよ、ヒーさん。いやん、耳はやめてー、だよな?」
ニヤニヤとハル。
「し、仕方ないだろ!テストステロン分泌なお年頃なんだよ。」
「また二人で訳の分からない話を…。」
ヒースに拗ねられて、渋々シロが向き直る。
「耳に、息がかかったんです。」
「だから、何の話…うええっ?ごめんシロさん、俺、いくらシロさんでもちょっと無理。」
「ぼ、僕でもって何ですか!僕だってヘテロですからね!ハッタさんのせいですよ!?」
「責任とろうぞ?」
「結構です!少し走ってきます!」
どどうっと走って行くシロをヒースも追いかけてゆく。
「おー、青春だ。で、ムイさんとユアちゃんもサーリフに行く?温泉もあるけど。」
「温泉?それはいいわね。」
「女湯入るー。」
間髪入れずに賛成したコウをハルがじと目で見る。
「コウちゃん、もしかして中身おっさん?」
「なんのことー?」
「うぬぬ。怪しい。」
「あれ?もう休憩してんの?」
次の宿場まで先に走って行ったかと思ったシロとヒースが割と手前で座り込んでいるのを見つけ、ハルが首を傾げた。
「シロさんが声をかけられ過ぎて進めないんだよ。」
「お、おう、それか。」
「この先、農耕地が広がっているらしくってね。イズールへ売りにいく荷馬車がとおるんだけど。」
背後の貢物の山を指す。
「生の魚まで貰ったよ。ハル、預かってくれる?」
「なんなんだろうね、このフェロモンは。」
「この辺りは海が近いんですか?見たこともない魚だ。」
仕舞うのを手伝いながらヒースが聞く。
「地理的には沿海域だった筈だけど。」
「ああ、宿場の先で本街道と漁村に降りる路に別れているよ。ナーさんに教えられてウーさんが商い始めをしたとこだ。俺も荷車繋がれて頑張ったんだよ?」
シロン領を出て直ぐの頃の話だ。
懐かしそうに語るハルをシロが複雑な顔で見る。
「本当に頑張ったって。エリムまで運んだんだから。」
「…。」
「いや、その後は、うん。ちょっとエリムで休憩していたけど。」
シロは苦笑した。
「別にサボっていたなんて思わないよ。ただ、何でウィラードがあの人達と連んだのかと不思議だったんだけど。何となくわかった。」
「俺も、察します。」
お喋り幻獣の人懐こさを思い出し、ヒースも笑う。
「あー、うん。察された通りだと思う。だってさ、エリムに着いたらあの人達首刎ねられそうになってたんだよ?で、ナーさんの実家に行って保釈金積ませて、逆にサーリフはリュヘルさん奪還で画策していたから焔さんに動いて貰って牽制して。傍観していた殿下を焚きつけて事態収束させて。」
「凄いですね、ハルさん。見直しました!」
「今までは見下してたんかいっ、て。采配したのはウーさんだけどね、全部。」
「そのウィラードを動かしたのは君だろう?ハル。」
「まあ、そうなるのかな。だって斬首だよ?見たくないでしょ?ウーさんは見物する気満々だったけど。」
「僕だって見物にまわるよ。あの人達はそれくらい、酷い事をしてきた。」
シロの強い物言いを、だが、ハルは軽く受け流す。
「お前がそんな事出来るわけないじゃん。人を助けるのが勇者だろ?」
「勇者はもういいよ、疲れるから。転生パンツとか、困るし。」
「それだ!ヒースさん、貴方もしかして前世はシロの、」
「ハル!」
「自分が先に思いついたんじゃないか。さ、行こうぜ。ハッタさんが追いついて来た。早く宿場に着いて美味いもん食いたい。」
「魚、あるかな?昨日の、凄い美味かった。」
「貝もあるといいなあ。」
「僕は肉。肉食べて筋肉つける。」
「よし、頑張れ。今夜はご馳走にしよう!」
胃腸炎で頓死なう。
明日の更新は休みます




