シロンの領民
フレンズ召喚っ
「ケモミミパーク‼︎」
「ハル、落ち着いて。」
「ケモロリ、ケモフジコ、しっぽモフラー。」
次々指差す。
「失礼だよ、ハル。」
帝都より実家の伯爵領に帰還し、そこから更に辺境のシロンの荘園にたどり着くなり、ハルは大興奮である。
成年し、名実共にこの荘園の主人となったシロンを総出で出迎えた領民達は、ドラコ種の鼻息にじりっと後退る。
「シロンさま、お帰りにゃー。」
ケモロリ、と指さされた猫耳少女がハルを警戒したまま代表して挨拶をする。
定番の語尾にハルは悶絶する。
メインターゲットのケモフジコとしっぽモフラーは怪しすぎるハルを見て、すっかり小さくなりぷるぷる震えている。
萌えすぎだ。
見れば更にその後方に多くの獣人と数少ない人間族が並び、シロンの帰還の言葉を待つ。
「皆、ただいま。留守中、変わりなく過ごしていたかい?」
「は、いつもと変わりにゃく。」
同じ猫耳でも、豹を想像させる精悍な青年が少女の横で膝をつく。
(妹に手を出したら、ドラコ種でも容赦しない!)
おそらくはそんな牽制も、同時に察せられるのだが。
「にゃって言ったぁぁ。男でも萌えてまうやん。」
流石に小声で、ハルのニヤニヤが止まらない。
「ハル。彼らも、ヒトなんだよ。愛玩動物じゃない。僕より、君の方が身にしみてわかっている筈だろう?」
表情はにこやかなまま、シロンは低く諭す。
「わかってるさ。俺も、獣人奴隷を解放してここにケモミミランドを作るよ!」
耳の良い獣人達に色々ともう筒抜けである。
開き直ったかのような友人にシロン眼差しが冷ややかになる。
正しく軽蔑の空気を読みとり、ハルはため息を吐く。
「シロン様。もういいだろ?呪紋を消して、角を治してくれ。俺を元の姿に、」
「わかった。だが、その態度を改めないのならここから出て行ってもらおう。」
「おう。幻獣舐めんな。本当のチカラを見せてやる!」
シロンが自称した通りの、いや、それ以上の魔力を集め、ハルへ一気に術をかける。
即座に。
重ねに重ねられた縛が解かれ、角と牙も再生し、ハルがグオオオっと雄叫びを上げる。
その瞬間。
ケモフジコちゃんは長い耳の残像を残し脱兎のごとく。
それ以外の獣人達も蜘蛛の子を散らすがごとく。
恐怖に気絶した猫青年を残し、全員逃げ去った。
「獣人奴隷しか話し相手がいなかったのに、」
涙目でハルは言う。
「あ、うん。なんか、ごめん。」
「妖剣だのキモオタだの、前世でも散々言われて来たけどさ。人の顔見て気絶って、流石に無いわ。」
人の目には仔牛ほどの可愛いらしい只の小竜である。
「獣人は強者を察するからね。」
「おかげでずっとぼっちだっだよ。」
ハルは見た目に反し、人との関わりを好むのである。
「まあ、そのうち皆んな慣れてくるよ。」
「モフらせてくれるかな?」
「困っている人間の人も救けて、普通に友達を作ろう?」
無理、とは和えて言わず、シロンは友を励ます。
前世と今世のぼっち二人組は、奴隷解放にむけて決意を固めるのであった。
ケモミミパーク、もといシロンの荘園に居るのは、獣人も人も辛い過去を持ち、シロンに救けられた者ばかりである。
トラウマから色々と問題を抱えた者も多いが、皆一様にシロンを崇拝している。
辺境伯の更に果ての地。
大地は貧しい。
獣人達が本能で畏れている幻獣の棲も、遠くは無い。
其処を抜け、更に続く魔の森を抜ければ商都イズールはほど近いのだが、厳しすぎる旅程にこの路を選ぶ商人はいない。
人の出入りといえば親伯爵の下へたまにシロンが出向く位で、つまりはやりたい放題である。
「地下田んぼ…。」
人型に戻っても、角と牙を備えたハルに近づく獣人はいないので仕方なくシロンの案内で荘園をまわる。
ドヤァ。
シロンの、得意げな顔。
「前前世は中世相当だったけどね。一度生活レベルがあがると、現世は耐え難くって。特に米!」
荘園の地下にはシロンの魔術を惜しげもなくつぎ込んだ秘密田園が広がっていた。
「醤油、醤油はあるのか?転生ライフの成否はこれに尽きるぞ!」
「勿論、ある。むかしハルが文化祭のテーマを転生に必要な現代知識って決めただろう?あの時の勉強が役立ったよ。」
「うはぁ。はずかしぬる黒歴史、役立ったのか。」
荘園の地下は階層化していて、水田の下は醸し部屋やら農具工房やら温泉施設やら、転生ラノベでお馴染みの設備が完備されている。
どの階層でもシロンの力が必要なのか、案内ついでに入り口に設置された賢者の岩に魔力を充填してゆく。
「おい、大丈夫なのか?」
士郎の頃を思い出し、ハルは心配する。
「本来のチートスキルを貰えたみたい。まだまだ余裕だよ。君の方は?異世界接続を頼んでいたよね、確か。」
「ネット接続スキルな。獣だぞ?二百年奴隷だぞ?あの意地悪神様がそんなチート、くれる訳無い。」
「案外千年ぐらい経ってコンピューターが発明されたら使えるようになったりして。」
「普通過ぎるわ。」
まあまあ、となぐさめる。
「風呂にでも入る?重要設備なんだろう?女子がドン引きしてたけど。」
「混浴ハレムなお楽しみも無いのに、風呂に入る意味はない。」
きっぱり、と、ハル。
男湯、女湯の暖簾分けにテンションだだ下がりである。
「この世界、金と権力があれば何でも許されるんだろう⁈なぜ、分ける!」
「普通にモラル逸脱してるから、それ。」
「何故その常識だけ完全に一致なんだ…。」
フラグを立てても立てても鞄二個でつるむ(涙)
「シロンさまと遊べなくてつまんにゃいにゃ。」
「ドラコのせいですわ!」
「落とし穴に埋めると良いのん。」
「それにゃ。にぃも作るの手伝ってにゃ!」
しばらくして。
「やあ、君たち、土遊びかい?」
「にゃっ!「ひっ!「ふぇっ!」」」
「あ、ちょっ待って、って今日も逃げられた。お、一人残ってる。」
自分の掘っていた穴の中で猫耳青年は気絶していた。