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転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
幻獣覚醒
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転生からの転生

元勇者とおまけの剣

→元残念イケメンとおまけの社畜

→⁇?

 士郎だったモノと春人だったモノは不思議な空間の、不思議な存在の前にいた。

 神―――なのだろう。

 勇者よ、と神は言った。

 魔術を使えぬ世界に生を与えたのは我の試練だ。

 よくぞ己を制し、使えぬ筈の能力すら開花させ、他者をよく救けた。

 そう続ける。

 次世では、己が生を愉しむと良い。

 其方に祝福を授けん。


 元士郎は深く傅く。

 側で元春人は。


 何故にまたソレも在るのだ?


 神の言葉が揺らぐ。


 ソレは其方を戮したモノ。

 二度も身を滅ぼされ、哀れな。

 ならば我が罰せよう。


(神よ、それは違います!私はハルテシオに救けられ、だから春人を救けたかった!―――命を賭しても)


 其方が連れて来たのか。仕方あらぬ。

 次世こそ、この者によく仕えよ。人の身ではさして役立つまい。剣、でも使えぬモノだったな。

 では―――


(是非そこはチートスキルの方向で!シロに足りないモノ、えーと、なんだ。コミュ力?じゃなくて、えーと。ググり力、いえ、せめてネット接続を―――)





 そして、二人は再び転生した。





「見つけた!」

 かつてシロキオンであり柳士郎でもあった少年は、待ちに待った親友に駆け寄る。

「成年の祝いにはあまり相応しゅうないかと。」

 見すぼらしい姿に従者が反対を述べる。

「いや、流石はお貴族様、お目が高い。コレは幻獣、ドラコ種でございます。」

 揉み手をしながら、奴隷商が寄ってくる。

「シロン様、竜型になれぬ折れ角は何の役にも立ちません。奴隷をご所望されるのでしたら、せめて他のモノにしましょう。」

「荷運びの力はありますし、何より餌も要りません。また目を見てやって下さい。この金眼、上位種ですぞ。」

 カモを逃すものか、と揉み手にも力が入る。

「…何故轡を嵌めているの?彼に言葉は通じないのかい?」

「いえいえ、命令は解しますとも。言葉も話せなくはないのですが、少々噛み癖がございまして。」

「咬まれるのは困るなぁ。」

「なに、甘噛みですよ。調教はしっかりしてありますし、牙も抜いております。その分勉強もさせて頂きます。」

「グルゥ、」

(遊んでないで、早く買えっ。)

「わかったわかった。彼を買う。連れ帰るから手続きしてくれ。」

 ほぅ、と安堵のあまり元ハルテシオであり、春人であったドラコ種の子どもは涙を流した。


 二人が今世で言葉を交わしたのは、更に半月程後であった。

 地方領主の五男であれど、そこは伯爵位持ちの名家である。成年の報告に帝都へ来たからにはとかく忙しい。

 誕生日には必ず再会できる筈、と無理を通して成年の日当日に街中を奔走した分、その後のスケジュールは従者にきっちりと握られ休む間も無く務めをこなして来た。

 だから、開口一番に「遅い!」と怒鳴られ、ムッとする。

 しかし、その後に続いた言葉に息を呑む。

「大体二百年だ。待たせ過ぎだろ…。」


 居間に通され、渋る従者は人払いされる。

 暖かな部屋で甘みたっぷりの飲み物。

 軀に染み渡る。

 幻獣であるせいか苦痛に鈍く、また、いつか士郎が現れるという希望のおかげで何とか精神(こころ)を保ってきた。

「貴族様か。何て呼べばいい?」

「今世ではシロン。家名は長いから覚えなくていいよ。君は?」

「奴隷に名前なんてある訳ないだろ。ハルでいい、シロン()。」

「気持ち悪いな、嫌がらせ?」

「違ぇ。隷属紋、主人にへりくだらないと痛むんだよ。」

 ああ、とシロンは顔を顰める。

 見れば多数の紋様で絡められている。一瞥しただけで、随分と厳しい奴隷生を過ごしてたとわかる。

「解除は少し我慢してくれないか?今、魔術師バレしたくない。」

「魔法、使えるのか?」

「バレたら即、宮廷魔術師採用レベル。ハルも幻獣なら精霊魔法は…それも制限されているのか。酷いな。せっかくの能力が形無しだ。」

「無能でも飯は要らないから大賢者(ヒキニート)スキルはレベル最大です、ご主人様。」

「引きこもりたければ手を貸すけど、勿体ないよ。この世界は面白い。」

 シロンは晴れやかな笑顔を向ける。

「君のおかげで僕の使命が漸くわかったよ。―――奴隷解放をする。先ずは虐げられている獣人奴隷を。」


 転生して直ぐ、まだ蜥蜴さながらの幼生の頃に人に捕えられ、ハルは長らく虐げられきた。

 前世の記憶も、もはや泡沫の夢のごとくおぼろだ。

 かつて、坂中春人として生きた世でも社畜と言われる奴隷のような身であったが、それなりの自由もあった。

 だが、この世界での扱われ様といったら…。

「出来るのか?そんな事が。」

「するんだよ、僕らが。」

 ああ、こいつはやっぱり士郎だ、とハルは懐かしく思い出す。

 神に愛され、どんなに楽な人生を用意されていても、己の進む路を、それも困難な、そして高尚な路を見つけ出して歩む。

 ハルは深く傅く。彼にとって傅くは神ではなくシロンであった。


士郎は救急搬送された春人を救けようと、魔術を使いすぎ死亡。

春人は多分過労死。現代医療でも絆創膏ヒールでも回避不可でした。

合掌。

可愛い息子はニートにしよう、って諺、そろそろ出来ませんかね?

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