表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者とおまけの剣  作者: 帽子屋
幻獣覚醒
12/151

既知との遭遇

「この辺を散歩しちゃ、いけないってか?」

 現れたハルを金の瞳で一瞥。

「随分と縄張り意識が強いんだな。」

「…家で叩き潰したら、散らかるじゃない。虫ケラを連れ込もうなんて、どういうつもり?」

 返答がある事にまずはほっと息をつく。問答無用で殲滅されることはなさそうだ。

「虫ケラって。あんたの姿とそう変わらないと思うけどな。」

「姿?魂の問題よ。小狡くて残忍で。幾度追い払っても、またコソコソと忍びこもうとする。」

 彼女の答えは芳しく無い。

「だからって、いきなり攻撃はないだろう?それに人は短命だ。前の奴とは都度違う。」

「それも、常套句じゃない。そうやって諫言を弄し我々に取り入って、そしていつも欺くのよ。奴らは!」

 きっと眦を上げる。

 美人さんだ。

 だが、交渉相手としては感情的過ぎて話の持って行きように困る。

 早くシロンに丸投げしたいところだが、人即滅の鼻息を鎮めない限りは如何ともしがたい。

(こういうツンさんは、デレてくれると話が簡単なんだが。)

 残念ながら、ハルにデレる気配は微塵も無い。

 ウィラード(おっさん)シロン(ショタ)は接近で剣を交わしている。こちらもデレどころか虫ケラ扱いだ。

 ん?

 と、ハルは思いつく。

「もしかして、」

 柔らかく、ビクビク動く奴。

「ケモミミ、お好きですか?」

「そこ、正座!」『ゴブっ』

 蹴られた。


 月夜の荒野で正座。

 人型である。裸だ。

 痛い。寒い。

 お姐さまがキレられた。

「いっぺん、死んでみる?」

「…体験済みです。」

「でも、バカは治らなかったのね。」

 剣の鞘で、ボコンボコン頭を叩く。

「ミミ、好物なんですね。」

「ウォーター!」

『どバシャ』

 水責め。

「獣人が嫌いな幻獣なんて、ファイヤー!、いないわよ!サンダー!」

 火炙り、とどめに電流。

 よしっ、とハルはガッツポーズを決める。言質は取った。


「ご友人は中々の変態ぷりですな。」

 裸で虐げられて、挙句晴れ晴れと両手を上げる少年の姿をウィラードが評する。

「性癖までは把握していません。」

 困った顔でシロンが返す。

 美人とハルのやり取りが聴こえているヌコは次の展開を察して吐きそうな顔色になっている。


 竜型に戻って、煤けた身体を舐めながらハルは姐さんの話を拝聴する。

「私たち幻獣を、獣人さんがどう見てるかなんて、知ってるでしょう?私たちはただ、仲良くなりたいだけなのに。あの怖がりようったら、ふふっ、可愛らしい。」

 何やら思い出し笑いも混じる。

「もう、追いかけまわして食べちゃいたいくらい、可愛らしい生き物よね?」

 金の瞳が、キラッキラになっている。


 ヌコは夜目もきく。

 幻獣の目がギラギラになり、獣人を喰らいたいと言っているのも聴き取る。


「あのミミはですね、動くんですよ。」

「知ってるわよ。頭に張り付くんでしょ。」

「いえ、息をこう、ふっと吹きかけるとぱたぱたと。」

「何ですって!お前、どうしてそんな事を知って…はっ、まさか!」

「そのまさかです。召喚っ、出でよヌコさんっ!!!」


 壕に向かって手招きをするハル。

「話がついたのかな?」

 首を出したシロンに慌ててバツ印のポーズ。

「俺ですか?」

 訝しげにウィラード。勿論バツ。

 二人がヌコを見る。

 ヌコも真っ青な顔で二人を見る。

「無理なら出なくて良いんだよ?」

 シロンに言われて、無言のまま歩き出す。

 後ろ姿に悲壮感甚だしい。

「背を押し出しましたな、ご領主様。」

「人聞き悪いですね、ウィラードさん。」


 ヌコはかつて優しい両親と沢山の兄弟姉妹に囲まれて幸せに暮らしていた。中でも一番年下の妹は(以下、略)。

 走馬灯の如く人生が回想される。


 とぼとぼと、リビングデッドと化したヌコがやって来て、生気のない目のまま二人の幻獣の前に立つ。

 反対に、姐御のテンションはマックスである。

「こちら、猫耳獣人のヌコさんです。こちらは幻獣の――えーと、お名前は?」

煌華(コーカ)よ。よろしくね。」

「コーカさんです。」

「…。」

 ぺこり、というよりびくりとヌコが頭を下げる。

「えーと。ヌコさんもコーカさんと親睦を深めたいようですので、お宅になど招待していただけないでしょうか?」

 全くヌコにそんな気がないのは一目瞭然である。

「あら、そうね。是非ヌコさん、遊びにいらして。」

 勿論気付かぬふりで、優雅な微笑みの煌華。

「人型だと少々歩きますので、私の、背に、その、乗って、しっかりしがみついて、うふふふ。」

「色々すっ飛ばさないで下さい。お触り禁止です。」

 竜型になろうとする煌華をハルが慌てて止める。ヌコが気絶寸前だ。

「それに、月下の散策も乙ですぜ、姐さん。」

「誰が、姐さんよ。でも、…悪くないわね。ああ、あんたは、」

「ハルです。」

「おチビさんは、あそこの虫ケラ退治してからいらっしゃい。」

 しっし、と手を払う。

「それはヌコさんが悲しみますよ?彼の大事な人ですから。」

「私が慰めて差し上げるわ。」

「多分、泣いちゃいますね。かーわーいーそー。」

「泣いちゃうの?しくしく?えんえん?」

「方向性を間違えました。涎を拭って下さい。」

「失礼ね。」

 言いながらもそっと口許を手で隠す。

「煌華さん。自分の友人を殺せと言った相手と貴女は友になれますか?なりたいですか?」

「…わかったわよ。虫ケ、いえ、人間も、しぶしぶ、いやいや、ついて来てよいわ。」

 ものすごく嫌そうに、煌華が許可を出した。

年度末、忙しくなるのを忘れていたでござる。

いや、忘れたいので忘れていたのですが…。

前書き後書き小ネタの余裕がなかなかありません。

本編を頑張りますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ