月とワインと腕時計
月がきれいだねと言っても
君には通じないから
僕はそれを利用して
君に愛を伝えた
テラス席を選んだのは
言葉に詰まったとき
君と目線を合わせずに
外を見れるから
背伸びしたワインを持て余す
僕をよそに
せわしなく減っていく
君のウイスキーが歯がゆい
僕を待ってる? 言葉を待ってる?
そんな甘い妄想を
気持ち悪いと言って欲しいな
嫌いになれたら楽だから
脈がないなら その気がないなら
いっそ断ってくれよ
仕事の愚痴を聞いてくれなんて
下手な誘いに乗らないでよ
腕時計を頻りに
君は気にしている
約束なら優先して
僕を置いていいよ
背伸びしたワインと君のことを
諦められたなら
この胸と頭を蝕む
痛みもなくなるはずなのに
僕を待ってる? 言葉を待ってる?
そんな甘い妄想を
気持ち悪いと言って欲しいな
嫌いになれたら楽だから
脈がないなら その気がないなら
いっそ断ってくれよ
仕事の愚痴を聞いてくれなんて
下手な誘いに乗らないでよ
帰らなくちゃと君が席を立った
行かないでほしい
僕は待っていたはずなのに
開放されるその時を
僕を待ってた? 言葉を待ってた?
そんな甘い妄想を
今更ながら抱いてしまうような
都合のいい自分が嫌だ
月がきれいだねと言っても
君には通じないはず
だけど何故か帰り際
君は悲しい目をした




