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01 時計
カチ、カチ、カチ、カチ――
静かに音が その店を満たしている
色々な形の時計が 壁にも棚にも
飾られるでもなく、並べられるでもなく
置かれている
薄暗い明かり
カウンターには髭を生やした主人が
眠るように 本を読んでいる
時計はどれも 違う時間を示している
メロディーは流れない
針の音は子守歌だ
主人は本を読むように 眠っている
ある時刻のまま動かない時計の隣では
くるくるとやたらに早く回る時計
ゆっくり進むのは、不器用な時計だ
流行りのデジタルは 均一に時間を刻む
主人の腕にも、誰かに貰った時計が
静かに時を刻んでいる