表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/31

8.クジ運のない奴ら

 店に戻ると、交渉が終わったのかメイが笑顔でこっちに手を振っていた。


「んで、いくらになったんだ?」

「んふー、なんとね」


 メイははちきれんばかりの笑顔で言ってくる。

 よほど高く売れたんだろうか。


「金貨30枚よ。30枚! 1年は暮らしていける金額よ!!」

「いやぁ、メイちゃんには参ったね。降参だよ」


 こちらも何故か笑顔でシバ。

 ふむ――。


「その30枚っていうのは、何の値段なんだ?」

「何の値段って言うと?」

「ほら、物理的な部分の値段とか、音楽が聞ける部分とか」

「ああ、それでいうとアレだな。ちゃんと動いていて音楽が聴けるっていうところと、見た目の綺麗さだな」


 音楽プレイヤーをクルクルひっくり返しながらシバが言う。


「音楽の値段って、入ってるか?」

「あん?音楽の値段だと?」

「ああ、その中にはざっと1000曲の異世界の音楽が入ってる。こっちの世界では未公表だろうから、音楽自体もそれなりに売れるんじゃないのか?」


 ミケの言葉に考え込むシバ。

 異世界の音楽――作曲家とかアイドルとかだったら喜んで買うだろう。


「つまり、何が言いたいんだ?」

「つまり、だ。音楽一曲あたり、例えば銀貨一枚の価値があるとすれば、銀貨1000枚の価値がさらに眠ってるっていうことだ」

「要は金貨10枚上乗せしろっていうことか?」

「まあ、平たく言うとそういうこった」

「んーむ……」


 なにやら考え込むシバ。

 メイが1年暮らせる金額っていっていたが、いくらくらいだろう。

 自分の年収が300万ちょいだから、一年暮らせる金額――金貨30枚で300万、金貨1枚で10万円くらいと考えておけばいいか。


「確かにな、よしっ! 兄ちゃんのその根性に免じて金貨5枚分、上乗せしてやろう」

「やったー!おっちゃん大好き!!」


 メイが勢いよくシバに抱きつく。

 そんな様子をミケは羨ましそうに眺めていた。


「ほれ、金貨35枚だ。しっかり数えな」


 ミケは差し出された金貨袋を受け取ろうとしたが――メイが横からかっさらっていった。

 彼女は金貨袋をシバに突き出すと、そのままとんでもないことを言った。


「おっちゃん、これ全部でクジ引くわ!」

「うぉい!?」

「あいよ。」

「いや、あいよじゃなくて!それ、俺の金!」


 シバは金貨袋を受け取るとくじ引きの箱を机の上に置いた。

 ミケが金貨袋に手を伸ばすが、シバはそれを隠してしまう。


「もう支払い終わってるからな。くじ引きは返品不可だ」

「ちょっと待て、おいっ!?」


 にらみつけるが、飄々とそっぽを向かれる。


「おい、お前の取り分は1.9割だけだろう。何で勝手に全部突っ込んでんだよ」


 ぐわし、とメイの頭を掴みつつミケが言う。

 彼はお釣りの金貨2枚を受け取ると、しっかりと手の中に握り締めた。


「だってほら、一等賞は金貨500枚よ! これはやるしかないでしょ!」


 徐々に頭を締め付ける力が強まっていくことに焦ったのか、メイは手をわたわたさせながらよく分からない言い訳をしてくる。


「ほら、あたしクジ運強いし! この間も商店街のクジで3等賞取ったし!」

「ほう?これの3等賞はなんなんだ?」

「投げ槍一年分だな。」

「いらねぇ!!」

「ちなみに2等は異世界の魔剣だ。 キーワードを唱えると、刀身がなんか暖かくなる。」


 暖かくなるだけかよ……。

 何で剣にそんな機能を付けようとしたのか――燃える炎の剣を作ろうとして失敗したとか?


「んじゃ引くわよ。」


 気合を入れているつもりか、腕をぐるぐると回してから箱に突っ込む。

 メイはしばらくごそごそと迷っているようだったが、カッと目を見開き一気に腕を引き抜いた!


「これよっ!!」

「3等だな。投げ槍一年分。」

「いらねぇっ!」


 本当に3等引きやがったよこいつ。

 クジ運あるんだかないんだかよく分からんやつだな、おい。


「次は俺が引く。」


 そう言うとミケは箱に腕を突っ込み、適当に掴んで引き抜いた。

 こうなったらなんとか一等を引いて金を稼がないと……。


「5等だな。おい、なんか適当に持ってきてくれ。」

「適当にって……。」


 結局、1回金貨3枚で11回くじを引いたが、結果は惨々たる結果だった。


・3等:投げ槍1年分

・4等:バリスタ

・5等:巨大なメイス、ラウンドシールド、よく分からない形状をした剣、ナイフなどなど

・6等:女性用下着

・7等:雑貨(――何故か映画のポスターが混じっていた)


 ちなみにバリスタはコーヒーを入れるほうではなく、馬鹿でかい石弓の方だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ