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11.初めてのダンジョン

 ドゴッ!


「きゅいぃぃぃ」


 ミケが振り下ろしたメイスが洞窟コウモリを潰し、勢い余って地面をえぐる!

 ころん……と、コウモリの体からビー玉のようなものが転がり出た。


「なんだかなぁ……」

「なによ」

「無抵抗の動物を殴り倒すって、どうなんだ?」

「いや、言われても」


 洞窟コウモリのコアを拾いながらメイが答える。

 ダンジョン内のモンスターを倒すと、コアと呼ばれるビー玉のようなものがドロップする。

 ミケとメイはダンジョンの1Fで洞窟コウモリ――ただのでかいコウモリだった――を倒してはコアを回収していた。


 ひんやりとした少し湿っぽい空気。

 まだ1Fだからなのか、あるいは何か仕掛けでもあるのか、天井や壁が薄っすらと光を放っている。

 手を伸ばし壁を触ると、空気と同様にひんやりと湿っていた。


「ダンジョンっていうより、洞窟だな……」

「ん?」

「いや、なんでもない」


 つい考えていたことを口に出してしまっていたようだ。

 治さなければと思いつつ、この癖は中々治らない。


「で、いくらになったんだ?」

「えーっとね」


 メイが袋を開け、コアを数え上げていく。


「ひー、ふー、みー……全部で20個だから、銅貨20枚ね。」


 ダンジョンの入場料が1人1回で銀貨1枚=銅貨100枚だから、最低200体倒さないと元すら取れないのか……。

 まだ狩りを始めて1時間しか経っていないが、すでに半日は経ったかのように感じる。

 あまり旨みがないのか、他の冒険者たちはコウモリを無視して先へと進んでいるようだった。


「そういや、メイはダンジョン初めてじゃないんだよな」

「まあ、そうね」


 歯切れの悪い回答を返すメイ。

 ミケは気にせず質問を続ける。


「何階まで行ったことあるんだ? 紋章がないっていうことは10Fのボスはまだ倒してないようだけどよ」

「いいじゃないそんなこと」


 別に隠すことでもないと思うが、何か理由でもあるんだろうか。

 メイはごまかすようにミケの背中を叩くと歩き出した。


「ほら、そろそろ次の階層に行くわよ!」

「まあ、いいけどよ……」


 さすがにコウモリばっかり殴るのも飽きてきたし。

 ぱたぱたと下に行く道を探していたメイだったが、ふと何かに気づくと駆け出した。


「おい!」


 慌てて追いかけるミケ。


「何かいたのか?」

「しっ!」


 二人は動きを止め、曲がり角の奥を覗き込む。

 そこには薄っすらと黒い光をまとった、他のものよりも一回り大きなコウモリがいた。

 メイがささやくように言った。


「希少種よ」

「希少種?」

「ほら、これ」


 差し出された買取リストをみると、そこには買取の値段の横に大きな文字でこう書かれていた。


『希少種は10倍以上の値段で買い取ります!

 希少種の特徴:

 同じ通常のモンスターよりも体が大きいです。

 黒いオーラをまとっているので、ひと目で分かります!

 希少種は通常種にない特徴を持っていることがあります。

 十分注意してレッツ一攫千金!!』


「つまり、あれを倒せば銅貨10枚になるっていうことだな」

「そゆこと」


 10倍になっても所詮銅貨10枚だが、それでも新しい刺激にやる気が出る。

 希少種はこちらに気づいていないのか、天井にぶら下がったままだ。


「んじゃ一丁やるか!」


 言うと同時に飛び出し、メイスを希少種に向けて下から上へ振り上げる。


「きゅきぃ!?」


希少種はメイスをかわすと洞窟の奥へと逃げていく。


「ちょっと、何やってるのよ!」

「何だあいつ、めっちゃ速いぞ!?」

「だから希少種なんでしょ!」


さすがは希少種っていうことか!

幸い逃げる相手よりもこちらの方が若干早い。


「動きを止めるから、任せたわよ。

重力の楔よ(グラビティ・バインド)!』」

「キュィ!?」


 希少種は急に増した重力に逆らいつつ、なんとか飛んで逃げようとする。が――

 ゴシャァ!!

 ミケが振り下ろしたメイスが、今度こそ希少種を叩き潰したのだった。


「へー。希少種のコアって、こんなんなんだな」


 手のひらの上で薄黒く光るコア。

 それはまるで黒い真珠のようだった。

 メイはコアを受け取ると、それを袋にしまった。


「意外と宝石みたいで綺麗なのね。

 指輪にしたら売れるかしら」

「いや、んな時限爆弾みたいな指輪、誰も買わんと思うが」


 いつモンスターに変わるか分からない指輪なんて、テロリストでも欲しがらないと思う。


「さて、今度こそ下の階に行くか」

「そうね」


 言って地図を広げるミケ。

 下に行く階段は、すぐ近くだった。

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