第2話 真っ白な異空間的な場所にて……
季節の変わり目だからでしょうか?憂鬱になってきました……健康には十分お気をつけください。
気が付くと辺りは真っ白で何も見えない。真っ白で何も無い空間だと気が狂うと言われているけど、これはヤバイな、自分の耳鳴りがうるさいし立体感がないように思えて気が狂いそう…………何故か思考がクリアで平静を保てているが。
すると前方に光が差して1人の女性が降り立った。白銀の鎧に金色の髪、右手には斬撃と突きが可能な方天戟を持っていて、オルレアンの聖女:ジャンヌ・ダルクを連想してしまうほど美しく見惚れてしまう。でも、白い空間に白銀は分かりづらい。
「そう、貴方なのね」
いきなり現れて、いきなり納得されても困る。以前会ったことありましたっけ?
「えーと、話が見えないのですが?」
「あなたが生きていた世界から来たのなら大体は予想は出来るのでないですか?……まぁもう生前の世界に戻るのは無理ですので、それは諦めてもらって……さて、貴方は己の意思とは関係なく異世界に飛ばされる訳なのですが--------」
「ちょっと待って、ちょっと待って、お姉〜さ〜ん♪異世界転生って何ですね〜ん♪」
「……続けても宜しいですか?」
そう言いつつも方天戟の先端を俺の心臓に向けて構えをとって………え?いやいやいや!生前は確かに「ヤンデレになら刺されてもいいかな」とは思っていたけれども!実際にヤンデレからでは無いが身をもって死を体験すると馬鹿だなと180度意見が変わらざるをえないから!
「……話の腰を折ってすみませんでした。」
「分かればいいのです。さて、無理矢理人生に終止符を打たれて異世界に飛ばされるのは些か可哀想なのでステータスかスキルを優遇してあげようと考えているのですが何を求めますか?」
「えーと、向こうの世界ってどんな世界なんですか?そしてどうして生前の世界には戻れないんでしょうか?」
「……説明が必要なのですか?」
「え?」
「…………うふ、冗談デス。貴方の疑問についてですが………簡単に言うと貴方は死体に自分の精神を宿したいのですか?」
「え、嫌に決まってるじゃ……そう言う事ですか。」
つまり元の身体は死体となって色々な人に周知されてしまってるので生き返ることは不可能だということか。アンデッドとかマジで笑えないよな、某アニメのハイスクールなんとかと同じようになっても嫌だし。
そして向こう側の世界について纏めてみると
•魔力という力が存在し、それによって世間からの扱いが変わる。
•魔力があれば魔法が使える。基本的にイメージを具現化させるのだが、魔力を原動力として必要として呪文を唱えると制御がしやすくなる。
•国はそれぞれ種族ごとに分かれていて、人間の国だけ皇国フリズスキャールヴと帝国フェイハムーアの2つに分裂している。色々とツッコミを入れたいが止めておこう。次に獣人の国サーバン、エルフと妖精の国シャリーウッド、竜人国ドラグニア、魔族の国アンフェールで成り立っている。
•教会の後ろ盾を持った人間族連合という名の、人間族の諸国が結託して魔族を討伐するために組織された軍と魔族が何百年も争いを繰り返している。
•教会は人間至上主義を主軸に布教しているので教会の教えを重視する都市では亜人種差別が横行している。
•最近になって人間側が異世界から「勇者」と呼ばれる人物を召喚にして"便利な駒"としているらしい。
ざっと纏めるとこんな感じだがなかなかに酷い世界だよな。生まれた時には既に生き方を決められる世界なんて。
「えーと、転生を拒否した場合はどうなるのでしょう?」
「簡単です。ここと同じような、何も見えずに真っ暗な空間で永遠とも思える長い時間を過ごすだけですので。」
いや、これは転生した方がいいに決まっている。転生して人生を謳歌してみたい気持ちもあるし。そう心の中で呟きつつ腹を括るのだった。
「……分かりました。転生することにします。」
「それはよかったです。……では話を戻しますが、転生する際に欲しいスキルや優遇して欲しいことなどはありませんか?」
魔力で優劣を決められてしまう世界で生き抜くにはまず魔力が必要だけど……どれくらいがいいのだろう?膨大過ぎても"駒"として利用されるだけだし、少なすぎても魔力の高い者に奪われるだけの存在になってしまうだけなのだから……前者でいいか。嫌なら力を盾に逃げればいいし。
「では、膨大な魔力が欲しいのです。」
「……まぁ、その程度なら構いませんか。ですが、心しておいて下さい。もし貴方がそれを悪用して世界のバランスを崩すようなら我々は貴方を討たねばならないことを。」
「えぇ、承知しております。ですが、俺がその世界に入った時点でバランスとか崩れませんか?」
「えぇ、簡単に崩れます。なので転生させる際に記憶を消す予定ですのでご安心を。」
いや、安心出来ないから。というか召喚された勇者には記憶を継承させているの?
「では、いきます。……少し痛いかもしれませんがなるべく一瞬で終わらせますから安心して身体の力を抜いてくださいね?」
そう言って彼女は獲物を構えて……待って。また殺されるの?え、嫌だよ……まだ聞きたいことがあるのに…うぎゃァァァァァ!!
そうして池田暁彦は2度目の死を体験したのだった。
「………あ。彼が生きていた向こうの世界の記憶を消し忘れてしまいました……うぅ、お父様に怒られるぅ~……」
そのあとに暁彦を転生させた女性は父親にお尻ペンペンを2時間受けたそうな。
今月は簿記の試験があるので、次話を投稿は遅くとも今月末までには間に合わせたいです。なお、近代兵器はまだまだ登場しません。すみません。