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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
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#04-13 世界を越えて



紫苑の姿が現れたのを確認して、すぐさま門を閉じた奏と明日香。

少人数なので、やるまでもないといえばそうなのだが、一応点呼を行い、善意がいるのを確認した。


「じゃあ、全員確認。魔力は使える?スキルは?」


奏の号令で一通りの動作を確認する。

そして一通り確認した七海が報告をする。


「魔法もスキルもちゃんと使えますね。ただ、一つあるとすれば、グラスは通信圏外なので使えてないです」

「ってことは素で使えてるってことだよね?」

「そうなりますね」

「じゃあ、全員、武装はそのままでKグラスの装備を解除。その後、システムの動作確認をしてください」


不思議と、というよりもなぜかKグラスに搭載されていたAR機能や通信、チャットなどが素でも使えていた。

仕組み自体は謎だが、現時点では動作に影響はない。

そして、外部からの通信は途絶しているようだった。


「まーとりあえずは大丈夫かな。なにか違和感あったら即報告すること」

「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」

「さて、どっからいこうか?」

「最終目的地がスペーラなのはいいとして、どうしましょうか?」


そこへ星影が口をはさむ。


「ついでと言っては何なんだけど、一個片付けてほしいのことがあるのよね」

「え?なに?世界が重なってることについてだったら現在進行形で調査中だけど」

「流石にそれがすぐ片付く話じゃないってことは私でもわかるわ。頼みたいのは獣人のことね」

「獣人ってアリオの方ってこと?」

「そうそう。先の戦の時に、シオンが狼系の獣人に月の加護与えたでしょう」

「そんなこともありましたね」

「最近ちょっと増長してきてるから、加護消してもらおうかと思って」

「なるほど、そうでしたか。じゃあ―――――消しましたよ」

「え?そんなすぐ?」

「終わった後、消したつもりだったんですけど、残ってたんですね」

「まあ、あの後それどころじゃなかったし……」

「あ、王族一家の奴は残してますからご安心を」

「……まあ、気が向いたら伝えとくわね。何はともあれ、これで調子乗ってた馬鹿どももちょっとは大人しくなるでしょう」


「んで、どうするんです?奏さん」

「辰哉的にはどっかいきたいとこあるの?」

「辰哉的には、教国だけは顔出しておいた方がいいんじゃないかなって思ってますけど」

「それもそうか、他のみんなは」

「海翔的にも教国には行っときたいですね」

「それじゃ、教国行くか。星影、載せてってくれる?」

「いいわよ。というか、一応、フロス神殿にも顔出しておきなさいよ。私はどうでもいいけどあの白いのが煩いわ」

「そうね。じゃあ、フロス神殿経由で行こうか。砂天と嵐はどうする?」

「せっかくなので呼ぼうと思います」

「明日香に同じく」


そういうと、イーリスと明日香はそれぞれの龍の召還準備に入った。


「龍が3匹も固まって飛んでたら大騒ぎになりません?」

「なるんじゃないかな」


まあ、いまさらそんなことを気にする奏でもないので、特に止めたりもせずに召還を待った。

しばらくして現れたのは砂色の西洋龍と薄緑の西洋龍。


「嵐、載せてもらうけどいいね?」

「はいよろこんで」

「ラン、あなた、あっち側に召喚されたのなんで黙ってたのかしら?」

「ひっ、覇龍……」

「後でアスナも呼んで尋問するから、逃げずに待ってなさい。逃げたら羽毟るわ」

「ハイヨロコンデ」


「サテン、久しぶりですね。元気にしてましたか?」

「ええ、イーリスこそ、病気などしていませんでしたか?」

「ええ、上々です。あ、そうだ、リゼット。サテンに一緒に乗せてもらおう」

「え?構いませんの?」


「嵐ってたくさん載せられるフォルムしてないよね」

「ええ、細い感じですから」

「まあ、東洋龍タイプの星影があれだけ載せて飛べるのも若干謎なんだけど……」

「朔夜も呼び出しますか」

「お願いできる?」

「転移でちゃんと飛べるか怪しいのでまあ、仕方ないです」


しばらくして朔夜が呼び出され、その光景に驚く。


「……どういった状況ですか?」

「ちょっと移動手段がほしくてですね」

「いえ、それはまあもちろん構わないのですがね……これだけ女神と竜がいるのも珍しいです」

「ということで、美咲さん、海翔さん、翼さんはこちらに」


現在地点から目的地であるところのフロス神殿までは、マップ機能を見るところによるとおよそ2500km。

あの時とは縮尺具合が若干違うというか、こちらの方が本当なのか。東京からだと台湾を越えてフィリピン辺りまで行ける距離だ。


「まあ、龍のスピードならそんなにかからないでしょう」


ついさきほども1500kmほどを10分ほどで駆け抜けたところだ。

よく考えたら光の速度に迫っているような気もするがその辺はファンタジー補正という事で考えないようにした奏たちだった。


おおよそ20分弱でフロス神殿にたどり着くことになったが、こんな速度で飛んでいればいくら巨大な龍とはいえ人間の目には捉えられないため、地上側で大した混乱はなかった。


「お母さんはアトランティスって言ってたけど、北太平洋に出てきたってことは、どっちかというとムー大陸よね?」

「そうなりますね」


各々、龍の上で雑談に花を咲かせていたらあっという間に目的地である。

なお、紫苑、海翔により馴れ初めを聞きだされ、チャットで全体共有されていた翼は若干ぐったりしていたようだ。



フロス神殿は、いつも通りというか、通常営業の最中であるため、参拝客も多く、神官たちも忙しく走り回っていた。

星辰はというと、神殿の奥で何となく地脈の調整などを行っていたのだが、そこに強大な気配が近づいてくるのを感じて、神殿から飛び出した。


「……まさか来るとは思わなかった」

「星辰も久しぶり」

「健常そうで何よりだ」

「ほら、あんたものカナデを乗せて運びなさい。どうせ暇なんでしょう」

「お前と違って暇というわけではないが……」

「今は、アザレアはいないの?」

「ああ、今日はスペーラの方だ。このままスペーラの方に行くか?」

「いや、様子見で先にメンシスに行きたいかな」

「承知した」


奏と萌愛、七海が星辰の方へと移り移動を開始する。

んはお、この会話はすべて神殿の真上で行われているため、下から見上げている信者たちは龍が集まってなにやらやっている光景にわりとハラハラしていたのだった。


なお、ここからメンシスまではまた2000kmほどある。

よく考えてみればこの1時間ほどで日本を出てアメリカ側まで移動してきているような気もする。


「星辰、こっちのほうって何か異常なモンスターの活性とかは起きてない?」

「起きていると言えなくもない程度だな。現時点では対応が間に合っているようだから大きな被害は出ていない」

「こっちで起きてる異常との関連を疑うにはまだ微妙かな……。変な龍とかは出てきてないんだよね?」

「変な龍とは?」

「知性のないというか、会話できないタイプの龍が私たち側の世界に出てきてね。3体ほど殺したんだけど……」

「そう言ったものが現れれば流石にどこかから報告が来るものと思う。今のところは確認はできていないな」

「そっか。まあ、何にしてもちょっと調べてみないとダメかな」

「しかし、また何で其方の世界と繋がる様なことが起きたのだろう?」

「根本的な原因はわからないけど、現状のまま放置するのは双方の世界にとって良くないみたいだから。不思議とさっき言った変な龍を倒すと、世界同士が離れていくみたいで、今はそれを進めながら原因調べてる段階かな」

「なるほど、ちなみに、あとどれぐらいその変な龍とやらはいるのだ?」

「最大数わからないけど世界同士を安全な距離感まで離すにはあと5体は倒さないといけない。それでもこっちの世界とこの世界が繋がったままではあるんだけど」

「面倒な話だ。何か新しい情報が出てくるとは思わないが、一応、龍の谷の方にも確認は取ってみよう」

「よろしくね」



メンシスの神殿では教皇ステラが政務に追われていた。

机の上にあるのは、たいして読む価値もない陳情書とかそのあたりなので、適当に目を通しては不許可のスタンプをペタペタ押しているところだった。


「ヴェガ。そろそろ飽きたのだけど」

「まだたくさんあります。諦めてください」

「よくもまあ、この程度のことで陳情書など提出してくれる。片っ端から死罪にしてやろうか」

「それはやめてください。国が潰れます」


文句を言いながら仕事をしていたところに、ノックの音が響き、ヴェガがそれに答えると、騎士の一人が入室してきた。


「ご報告いたします。ポロスよりの連絡で、精霊の森方面より不確定名:竜種がメンシスに向けて飛び立ったとのことです」

「は?コウヨウがサクヤのところに喧嘩しにいったのではなく?」

「はい。コウヨウ様は神殿におられるとのことで、アレが何の龍なのかもわからないようです」

「おかしな話だな。フーロル神殿にも連絡を。さすがに竜を相手にするのは無理だ。結界の準備とスペーラにも協力を要請」

「承知しました」

「ヴェガ、この書類、不許可(ゴミ)と即決できるものだけ避けといてくれ。あとでそれだけスタンプを捺す。で、対策しないわけにもいかないし、議会と騎士団を招集するように」

「承知しました」


執務室を出て、会議室に移動しながら、ステラは考える。


「しかし、なぜ竜が?そう簡単には出てこないものだと思うが……」



まもなくメンシスの上空、というところで、突然星辰たちが減速した。


「え?なにどうしたの?」

「いや……」


前方にはメンシス方面に飛行するオレンジ色の竜のような何かが飛行していた。


「あれ?知ってる竜?」

「龍の谷では見たことはないな」

「星辰、十分に警戒しながら接触してみよう」

「わかった」

「星影たちはいったん待機してて。戦闘始まったら適当に介入してくれていいけど」

「わかったわ」

「七海、一応準備。萌愛は星影の方に移って」

「了解です!」「了解!」

「紫苑、悪いけど、アレに悟られないように先にメンシスに入ってくれる?」

「お任せください」


「……さてと、話しが通じるといいんだけどな」



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― 新着の感想 ―
[一言] まって、更新来てた!! なぜ気づかなかった……… また1から読んできます……
[一言] 更新ずっと待ってました!! 作者さん、体をお大事に…
[一言] 更新来て嬉しい あんま覚えてなかったんでもう一周してきます
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