#04-11 全員集合?
イーリスのための京都観光を堪能した一行は、七海を連れて東京に戻ることとなった。
なお、七海は響家に宿泊することになっている。
「名残惜しいですが、後の予定も詰まってますので」
「そうだねー。差し当たっては今日の夜食事会があるしね」
「楽しみですね」
「食事会ですか?」
「リゼットには言ってなかったね?まあ、楽しみにしてて」
「明日香さん、誰が来るか教えてください」
「えーっと……ですね」
京都駅から東京行の新幹線に乗り込む。
夏休みシーズなので家族連れやグループ観光客でごった返すホームの中、悠々とグリーン車で移動する。
「まさかグリーン車しか空いてないとはね」
「次回からはちゃんと早めに切符とりましょうね」
「あの状態の自由席に詰め込まれるよりはお金払った方がましですね……」
外の猛暑と比較して、中は涼しく、それなりに疲れていたのか、はたまた昨日の夜更かしのせいか、終点の東京まではぐっすりで、目が覚めた時には到着していたという塩梅だった。
「お昼ごはん調達して、あと、七海の荷物を置きにうちにいこっか?」
「わーい奏さんのうちだー」
「ちなみにイーリスと同室だけどいい?」
「全然かまいませんよ?ベッドはイーリスに使ってもらいますし」
「え?同じベッドで一緒に寝て構いませんよ?」
「そうなの?どうしよっかな」
「でもイーリスの部屋に置いてるベッド大きくないから狭いと思うよ?」
「女の子二人ならいけますよ。七海細いですし」
「そう?まあ、一応布団は出しておくからお任せするね」
「奏さん、お昼ごはんどうしましょうか?」
「少し遅いから軽めでいいよね?駅前に美味しいパン屋さんあるからちょっと買っていこうか?」
「そうですね。そのぐらいでいいと思います」
パン屋で思い思いのパンを1、2個ずつ調達し帰路に着く。
家に入ると、リビングではエアコンをほどよく効かせた状態で静音が昼寝をしていた。
「あ、姉さん寝てる。珍しい」
「お疲れだったんでしょうか」
「ごめん、ソファ使えないけど適当に座ってね。紫苑、ブランケットか何か取ってきて」
「はい、わかりました」
「……紫苑さん、自然にブランケット取りに行きましたけど」
「なんでそんなものの場所まで把握してるんでしょう?それともよく使うとか?」
「七海、リゼット、どうしたの?」
「「いえ何も」」
「そう?みんなアイスコーヒーでいい?ミルクと砂糖は好きに使ってね?」
「あ、ナナミ。部屋こっちです。案内しますね」
「ありがと、イーリス」
その後遅めの昼食を開始することになる。
色々な調理パンにイーリスが目を輝かせており、少しずつもらっては味見をしていた。
「で、何が一番おいしかった?」
「あんぱんですかね」
「あ、そうなんだ。意外だなぁ」
「意外ですか?」
「あんこ苦手な人もいるから、どうかなって思ってた」
「そうなんですか?私は好きですけど」
「じゃあ、お土産に和菓子の詰め合わせを渡しますね」
「いいんですか?明日香」
「ん、奏帰ってきたの……?」
「あ、姉さんおはよう」
「おはよう。今何時?」
「14時前だけど、姉さん、お昼は?」
「食べてないわ。11時ぐらいから寝てた」
「何やってんの?」
「今日は何か眠くて。家事終わったら寝ちゃった。それお昼ごはん?」
「そう。食べる?」
「一つだけもらおうかしら」
「といっても、チョココロネとアップルパイしか残ってないけど」
「コロネ貰っていい?あとコーヒーね」
「おっけー」
奏が静音の分のコーヒーを淹れている間に起き上がった静音はそのままソファで紫苑からパンを受け取り食べ始めた。
「あ、駅前のパン屋さんのね」
「よくわかりましたね」
「まあ、何度も食べてるし……奏のお眼鏡にかなうパン屋さんはあんまりないし」
「そうなんです?」
「そうなのよ」
結局、16時過ぎまでそのままだらだらと過ごすことになる。
かなり待ったりした時間を過ごしていた中、音羽が帰宅し、空気が変わる。
「お、今日もいっぱいいるね!」
「音羽、お帰りー」
「お姉ちゃんただいまー。それとみんなもいらっしゃい?あ、私シャワー浴びて着替えてくるね?すぐ出るでしょ?」
「あ、そっか、そんな時間か。私も少しお化粧してくるわね」
「私たちも準備しようっと」
「奏さんもお化粧するんですか?」
「いつも通り薄くしかしないけどね」
「奏さん、服どうしましょうか?ちゃんとした衣装は持ってないんですけど」
「大丈夫大丈夫。紫苑」
「はい、こちらに」
紫苑がそれぞれの名前の入った箱を配っていく。
見覚えのあるブランドのロゴが入っているが……
「うげ、これ零さんのとこの服ですね。まさかとは思いますが」
「オーダーメイドよ」
「……無駄に緊張してきました」
「あ、かわいいかも。というか向こうより露出少なくてほっとしている私がいる」
「露出ヤバいのはたぶん奏さんだけかと」
「え?いや、私のもそうでもないよ、ほら」
奏が自分の分のドレスを広げて見せる。
「ほんとだ……というか当然のようにドレスなんですね」
「いや、まあ私たちのも似たようなもんですけど……そして奏さんに合わせて全員分作ってあるんですね……」
サマードレスにしては少しゴージャスな印象のあるそれを広げてみながら、今からこれを着るのかという表情で固まる一同と、さっさと洗面所に向かい静音の隣で化粧を始めたイーリス。
奏と紫苑も(奏の)部屋に向かって着替えを始めている。
「そういやイーリスこういうの好きだったね……」
「私たちも覚悟決めましょうか」
「……よかった、体絞っておいて」
「え?なにそれ明日香ずるい」
「え?こら、七海!お腹触らないで!」
「奏さん、髪結ってもいいですか?」
「いいよー。じゃあ、紫苑にはこれ付けてあげるね」
奏が化粧箱から百合の髪飾りを取り出して見せた。
「お借りしてもいいんですか?」
「いいよー。じゃあ、髪お願いね?」
「張り切ってやります」
準備には時間が掛かるもので、奏の髪を結っていたせいか、普段身支度の速い奏でですら1時間近くの時間が掛かった。
そして、遥人からの迎えの車が来る17時半には何とか全員準備を終えた。
今日ばかりは音羽も大人っぽい顔を作っており、姉二人とともに大人な色気を漂わせている。
「か、かなでさん」
「どうしたの紫苑?」
「写真撮っていいですか?」
「いいよー」
「ポスターにします」
「それは辞めて」
どこからか取り出した一眼レフで奏をパシャパシャと撮影した紫苑はすぐに涼しい顔に戻り、奏の隣に戻った。
なお一連の光景を見ていた明日香と七海は反応に困り、とりあえず目を逸らした。
「じゃあ、明日香。七海たちをお願いね」
「ハイ解りました。ところで、シルヴィアはどうするんです?」
「シルヴィアはそのまま行って会場で零さんにセットしてもらうって」
「なるほど」
「じゃあ、久々に皆に会いに行こうね?」
黄金からの迎えの車は、まっすぐに高級ホテル(当然のごとくどこかの会社の系列である)に到着した。
車から降りると、最上階のいかにも高級そうなレストランへと案内される。
「すごい景色ですね」
「ロブさんの御店でご飯食べるだけだったのに、どうしてこうなったのか……」
「やあ、来たね。やってくるのが男ばかりで辟易としていたところだよ」
「やっと綺麗どころが来たな」
「あ、遥人さんと瑛大。久しぶり」
「オレはそうでもないだろ?まあ、とりあえず、そっちのテーブルだな」
瑛大が指差すテーブルは「7」の札がおかれたテーブル。
既に、翼・海翔・愛美・美咲・辰哉・萌愛がおり、談笑していた。周りのテーブルにもちらほら見知った顔がいるが、ここがやはり一番居心地が良いようだ。
それをみた七海が何か思いついた顔で、手を打ち鳴らした。
するとそれに反応した6人の背筋がすっと伸び、全員が奏に注目する。
「七海……何やってんの」
「面白いかなって思いまして」
「うちの面子だけじゃなくて他のみんなも注目しちゃったでしょうが」
一際目立つ奏と紫苑に加えて、七海・明日香の日本人美少女+リゼットとイーリスがいる。
目立たないわけがない。
「奏さん!こちらの世界では初めまして、辰哉でs!?」
「かなでさーん!やっと会えましたね!愛美です!覚えてますよね」
「愛美。久しぶり!これで全員集合だね」
「ちょ、愛美!邪魔するなよ!」
「煩いわね。水でも飲んでなさい」
「おま、ちょっと今隊長だからって!」
「そんなことないわよー、菊山辰哉副隊長~」
「ぐぬぬ」
「会場にお集まりの皆様。本日出席のメンバーすべてがそろいましたので、少し早いですが始めさせていただきます。司会の鈴音です」
「そして、このオレがあああああ!洋だぜ!―――え?なにその帰れコール!?酷くね!?」
「すいません、洋さん。ちょっと邪魔なので廊下に立っててください。それでは皆さん、グラスを用意しておいてくださいね。今から遥人さんが乾杯をするそうなので」
「――よーし、皆グラスはいきわたったね?それでは再会を祝して「乾杯!」――え?ちょ」
『乾杯!!』
廊下に連れていかれたはずの洋の発声により宴が開始されたのだった。
「洋さん、後でお仕置きですね」
「お、洋死んだわコレ」
「死にましたね」
「確実だな」




