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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
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#04-10 古都へ



奏たちにとってはいつも通りという日々を過ごしつつ、5日目。

奏・紫苑・明日香・リゼット・イーリスは京都へと移動していた。

なお、大郎とシルヴィアも目的地は同じだが、別行動である。


「さて、久々……でもないね、京都」

「ついこないだ来ましたからね。特に観光とかはしていませんが」

「何しに来たんです?」

「ちょっと紫苑と逃避行を……」

「けふ……奏さんそれ、冗談に聞こえないので」


明日香がなぜか噎せているが、こちらも探し人を発見したのでそれを呼び寄せる。

もちろん七海だが。


「お久しぶりです、奏さん。それとみんなも」

「ナナミ、お久しぶりです?初めまして?」

「久しぶりでいいんじゃないでしょうか?」

「いやぁ、まさか京都でイーリスとリゼットに会えるとはねぇ……外国人の観光客多いから違和感ないけど」

「それで、どこ行きましょうか?」

「とりあえず、東山ですか?北山ですか?」

「東かな。イーリスはどこか行きたいところは?」

「まったくどこに何があるのかわからないのでお任せします」

「私は以前参りましたので、今日はイーリスを優先してあげてください」

「ん。わかった。という事で、七海」

「別に構いませんけど、マジでノープランなんですね」


七海に言われるがままバスの周遊券などを買い、一行は東山方面、清水寺へと向かった。

外国人二人も聞いたことぐらいはあるようなスタンダードな場所から攻めていくようだ。


「あ、そうだ。このあたりに美味しいわらび餅屋さんがあるみたいなんですが、後で行ってみません?」

「いいね」

「私もわらび餅好きです」

「それはどういった食べ物ですか?」

「説明しがたいな……紫苑」

「半透明のお餅のようなお菓子ですね。大抵はきな粉や黒蜜をかけて食べます」

「きな粉はわかりますが、黒蜜ってなんですか?」

「サトウキビから作る黒砂糖を煮詰めて作ったカラメルソースみたいなものだよ……たぶん」

「奏さんでも知らないことがあるんですね」

「食べ物に関しては作ったことないものは知らないかなぁ」

「……奏さん大抵のものは作れるイメージあるんですけど」

「そんなことないよー」


嫌なほどに晴れており、炎天下の京都。奏は惜しげもなく肌を晒しており、白い肌が眩しい。

基本的に肌を見せない紫苑も流石に今日は暑いのか、比較的露出度の高いトップスを着ているが、その上にはしっかりと長袖のドレープカーディガンを羽織っている。


「流石に夏の京都は暑いね」

「暑いなら紫苑さんを引きはがせばよいのではないかと」

「今日は言うほどくっついてないでしょ?」


そうは言うが紫苑はさも当然のように奏と手を繋いでいる。

それも恋人つなぎだ。


「……いや、くっついてますって」

「そう?」

「奏さん、今日のファッションは足を出し過ぎでは?」

「買ったからには着ないと、と思って。似合ってない?」

「最高に似合ってます」

「ふふ、ありがと」


「あ、もうダメだわ、この二人」

「紫苑は奏と一緒にいるとたまにポンコツになるよね」

「普段は凛々しいんだけど……」


「まあ、これはこれで」

「眺めているだけでも幸せな気分に」

「はっ!?まさかイーリスもこちら側に?」

「いえ、私は普通に、恋愛対象は男性なので……」


「……この人らの煩悩、ちょっとは払ってもらった方がええんちゃうかな?」

「七海、関西弁喋るんだね?」

「まあ、関西人だし……無意識で出ただけだから気にしないで」

「えー……可愛いからもっと出していこうよ」

「それするとなんか浮いた感じになるし……というか、皆標準語だから、話していると釣られるんだよね」

「そういうもの?」


一通り観光を済ませたのち、近くにあった茶そばのお店で軽く昼食を取り、七海が行きたいというわらび餅のお店へと向かった。

休みだという事もあり、かなり混雑していたが、なんとか売り切れ前に滑り込めたようである。


「こ、これがわらびもちですか」

「わたくしも初めて食べますわね」

「美味しそうだね」

「ですね。戴きましょうか」


炎天の中歩いて来た5人にはこの程よく冷たく、ぷるんとした食感と、優しい甘さが嬉しい。


「最っ高!」

「雑誌とかテレビとかでちょこちょこ出てたお店何ですごく気になってたんですけど、普段あんまり京都までくる機会もないですし」

「そうなの?」

「買い物ぐらいならば梅田、難波周辺で事足りますしね……」


「うーん、私本格的に日本人になりたいですね」

「そこまでですの?」

「日本食の方が口に合うといいますか……」

「そうなんですか」

「あまり濃い味が得意でないので」

「……イーリスって本当にアメリカ人なんですか?」

「一応、生まれも育ちもそうですが……」


「明日香さんは実は結構京都に来てるんですよね?」

「ええ、実は。何かと母が呼ばれることが多いので、連れていかれることが多いですね」

「なるほど、家元ならではですね」

「でも観光とかはあまりしないですね……最悪日帰りですし」

「それはきついですね……」

「紫苑はどうですか?」

「私は、海外の方が多いですね。親の実家がそれぞれ海外なもので。いえ、もちろん、日本にもあるんですがそちらは都内なので……」

「ハーフなのも大変なんですね?」

「私の場合は例外的なハーフといいますか……」

「見た目ほぼ日本人なんですけどね……子孫が突然隔世遺伝で金髪になったりしそうですね」

「ありそうですね。そもそも私が子供を産むことはない様な気がするんですが」

「遺伝子研究が進んで女性同士でも子供を作れるようになったりですね」

「それなら産みますね」

「言い切りましたね。また奏さんに怒られますよ……」

「あの時はお母さまがいらっしゃったからです。この程度なら基本的に笑って流されます」

「なんかすごいあしらい方慣れてるんですね……」


お茶を楽しんだ後は、嵐山に移動し、軽く観光をした後に、七海が用意した温泉旅館で一泊。

大浴場の方は後程それぞれで楽しむとして、まずは貸し切りにした露天風呂を堪能することにした。


恥じる様子もなくさっさと脱衣を終えた奏は、真っ先に洗い場に向かっていった。

鏡の前に腰を下ろすといつの間にか背後についていた紫苑が洗髪を開始した。


「え!?いつの間に?!」

「お気になさらず。奏さんの髪を洗うのもあの時以来ですね」


そういいながら紫苑はやたらと丁寧に奏の髪を梳いていく。


「今日は髪だけね」

「わかりました」


「今日“は”って何でしょうね、七海」

「そもそも髪以外をどうやって洗わせているのかが気になるね?紫音さんタオルとか持っている様子ないけど」

「あ、でも、奏さんの胸とか正直触ってみたい」

「それはすごくわかる。自分より大きいと、どんな感触なのかと」


「おや、邪念を感じますね」

「そうなの?」

「いやらしい目で奏さんを見る者が」

「ふふっ、それは紫苑じゃなくて?」

「……奏さんのいじわる」


洗髪が完了したらしく、紫苑が泡を洗い流す。

水を拭ってから、奏が髪を纏め、自分の身体を洗い始めた。


「そういえば、4人はなんでそこに突っ立ってこっち見てるの?」

「いえ、なんだか絵になるなぁと思って」

「奏さん、今度裸婦像とか描かせていただけませんか」

「それはヤダ」


お願いを即棄却されたリゼットは残念そうに洗い場に向かった。

早々に洗体を終えた奏は、真っ先に湯船に向かう。


「うーん。少し明るいうちに入るお風呂は最高だね」

「そうですね」

「……速くない?紫音」

「最速で洗いましたので」

「焦らなくていいのに……まあ、いいや、隣においで」

「喜んで」


二人並んで湯船につかりながら、オレンジ色の差し始めた空を眺める。

残りの4人もそれぞれ湯船にやってきて、奏たちの隣に並んで景色を眺める。


「はぁ……なんかこういうの素敵ですね」

「年寄りの趣味だと思ってたけどこれはたまらないわね」

「やっぱり日本人になりたいです」

「まだ言ってたんですのね。まあ、今だけは同感ですけど」


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