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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
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#04-07 異国の友




彼女は今、自らの父親の仕事に同行して日本にやってきていた。

肝心の父は現在このホテルの別室で今週末日本で公開されるハリウッド超大作についてのインタビーを受けている。


「で、クロエ。飛行機代もホテル代も何もかも出してもらっておいて悪いんだけど、何も告げずにここから脱走するのはどうかと思うのよね?」

「だって、超面白くないしー」

「そう言えばクレアは?」

「クレアならママと一緒だと思うけど」

「あなたはそっち行かなくていいの?」

「だってさ、向こうが何であんなに友好的なのかはわからないけど、私、ママが(クレア)を妊娠してた時にパパが不倫して作った子供だからね」

「それは知ってるけどさ。まあ、名俳優クロード・ヒューイットだから許された感はあるよね?」

「パパを敵として、売れっ子女優二人、ソフィー(ママ)キャロライン(ママ)が仲良くなって団結するところまでは誰が予想できようか。さ、アルマ。遊びに行こ」

「いいけどさぁ。せめてお父さんに書置きぐらいしていってよ?」



時刻は昼前、相変わらずの熱気の中、奏たちは懲りずに外出していた。

これといって目的があるわけではなかったが、イーリスを連れた奏(+当然のように奏についてきている紫苑)が駅前に到着し、いつもの喫茶店でコーヒーを飲んでいると、いつも通り、ポニーテールを揺らしながら明日香が走ってきた。


「すいません!遅れました!」

「いいよー、全然」

「明確に時間を決めていたわけではないですしね」

「おはようござい?明日香さん」

「おはよ、イーリス。すいません、彼女の荷物が思ったより多かったので、一度うちに寄ってました」

「そうだったんだ」

「それより、はやくしゃべらせてあげてください、うずうずしてるので」

「あ、そうだった」

「お久しぶりです、奏さん、紫苑さん、それにイーリス。リゼット・ル・フォール。フランスより参上しました!」

「久しぶり、リゼット。連絡ついてよかったよ」

「ええ、私もそう思います」


リゼットのハグを受けながら奏が返答する。

上品なお嬢様にしか見えないリゼットだが、奏に抱き着きながらだらしなく顔をゆがませているようにも見えた。


「これが生の奏さんですか」

「なまかなで?」

「どうでもいいですけど生姜っていう漢字が頭に浮かびました」

「……紫苑は何を言ってるの?」

「お気になさらず」

「ところで、シルヴィもいると伺っていましたが」

「シルヴィは今日、タローとデートだって」

「あー、なるほど、そうでしたか」

「じゃあ、今日はこの5人かな?どこか行きたいところある?」

「今日はリゼットに合わせましょうか?」

「いえ、私、東京来るのは初めてではないので……それほど行きたいところはありません」

「じゃあ、なんか適当にそのあたりでお昼にした後、ショッピングでもする?」

「そうですね」


「それも楽しそうです――けど、買いすぎるともって帰るのが大変なんですね。自重しないと……」

「ああ、それもありましたわね。以前は本など大量に買い込んだ結果空港で追加料金を取られましたし……」

「うぐ、私、昨日、余計なお買い物を決行しているので、ヤバいかもしれません」

「というか、イーリス、日本語お上手ですね?」

「奏さんにテレビ電話でずっと教えてもらってましたからね」

「それ、羨ましすぎますね!」


「そういえば、新しい水着とか買った方がいいでしょうか?」

「海とかいく?」

「遥人さんに言ってプールを用意させましょう」

「言ったらやってくれそうではあるけど……」

「あ、奏さん、そういえば下着、新しいのがほしいとか言ってませんでした?」

「そういえば」

「少し、胸大きくなりましたもんね?」

「……それを紫苑が知ってるのはどうなの?」

「もうなんか私はどうでもよくなってきた」


「そう言えば、奏さん、昼食はどこへ?」

「そうだね、何も考えずに歩いてるよ、今」

「それでしたら、リクエストをしてもよろしいですか?」

「いいよ、何がいい?」

「おうどんが食べたいのですが」

「おー、それ採用かな?イーリスもそれでいい?」

「はい。私、うどんは食べたことがないので」


駅前から少し離れたところにある、うどん屋さんへ入る。

お座敷に座って、注文をしていき、お目当てのお昼ごはんが運ばれてくるまで少し待つ。

奏と明日香は天ざる、紫苑はとろろ、リゼットとイーリスは温かい天ぷらうどんを注文した。


「何というか、日本の料理って感じがしますね。このだしの香りとか」

「天ぷら揚げるの難しいからねぇ、ここのお店ならかなり美味しいし、うどんもこしがあって美味しいよね」

「ここ、来たことはなかったですけど、確かに奏さんの言う通り美味しいですね」


明日香がうどんを啜り、納得の表情を浮かべる。


「そのつるつるっと食べるのが出来ないんですよね」

「あー……欧米ではマナー的にもNGだからこういう食べ方はしないよね?」

「そうですね。ですが、日本の麺類はスープを楽しむものが多いので、啜って食べるのが一番おいしくいただける方法でもあるかと思います」

「それは一理あるね。まあ、無理して食べ方を合わせる必要ないよ」

「というかリゼットが普通に箸を使えているのが驚き」

「明日香、それは少し失礼では?」


昼食を終えた5人は街に繰り出す。

5人が5人ともかなり整った容姿をしているせいか、かなりの頻度で声を掛けてくるクズが発生するのだが、紫苑や明日香による冷静な対処(物理)により、すぐさま視界から消え去り、奏とイーリスは己の美貌に関心がないため自分のことだとは思わず黙殺、リゼットは言うまでもなく男性に興味がないため、今まで普通に日本語で話していたくせに、突然フランス語に変更し無意味に男たちを追い詰めたりしていた。


「ふむ、結構買っちゃったね?」

「そ、そうですわね」

「これちゃんと荷物に入るでしょうか……」


気に入った服が何点か見つかったようで、思わず購入している二人。

他にも小物やアクセサリー、本に雑貨とかなり散在している。


「ちょっと、国家機密のバイトをしているせいでお金はあるのですけど……」

「あんまり散財するとお母さんに怒られますね」

「じゃあ、今日はこの辺でおうちに帰ろうか?明日香とリゼットは夕食どうする?」

「えーっと、お邪魔していいんですかね?」

「奏さんの家、行ってみたいです」

「まだ早い時間だから大丈夫だよ?でも、リゼットは明日香のうちに泊まるんだったよね?」

「はい、お願いしたらなぜか快諾していただけて」

「お母さんはかなり盛り上がってるけど、お父さんと弟は肩身の狭い思いをしていますね。どうでもいいですけど」

「今日のメニューは、イーリスさんのリクエストでオムライスでしたっけ?」

「その予定。卵たくさん買って帰らないと……」

「じゃあ、今日もスーパーに「えー!?ホントに人間!?足はやっ」「クロエ!?ほんとに書置きしたの?!」「してない!」「なんでよ!」「というか護衛の癖に追ってくるとかなんなの!」「そういう仕事だから!」――なんでしょうあれ」

「すごい見たことある子だった気がする」

「もしかしなくてもクロエさんでは。後、アルマさん」

「なんかすごい数の黒服さんに追われてたね」

「そういえば来日してましたね、クロード・ヒューイット」

「ついて来たのかな?」

「どうします?助けますか?」

「助けるって言ってもね……どうしたらいいのこれ?」

「……ひとまず、双方に止まってもらいましょうか。迷惑ですし」


荷物を明日香たちに預けた奏と紫苑は、アイコンタクトだけで二手に分かれた。

紫苑が走っているクロエとアルマを捕縛し、奏が後続を無理やり停止させる。


「結構迷惑になってるので止まりましょう」

「あ、はい、ごめんなさい」

「ごめんなさい……って、シオン?とカナデさん?」


「はーい、いい大人がそんな全力で走らないの」


奏が少しオーバーキル気味の攻撃をしたため、3人ほど意識が飛んでいるが、騒ぎはいったん落ち着いた。


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