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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
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#04-06 日本食道楽



午前中目いっぱい使って、外国人が好みそうな東京の名所を片っ端から回っていった一行だったが、気づくと昼過ぎになっていた。


なにかとつまみ食いはしていたが、13時にもなってくると流石に空腹が強くなってくる。

紫苑と漸苑も合流できるという事なので、燕真の勧めで、少し高そうな鰻屋へと入った。


「ねえ、ここ高くないの?」

「父さんがたまに連れてきてくれる店だ。まあ、高い」

「ほら。別にお金はあるからいいんだけどさ」

「いや、ここの払いはオレが持つから気にするな。アルバイトのせいで金がたまって仕方なくてな」

「そう?じゃあ、お言葉に甘えて。今夜、うちに来る?夕飯ご馳走するわ」

「いいのか?」


「奏さん、此処は何のお店ですか?いい匂いがしますけど」

「鰻だよ。英語で言うと、イール?」

「向こうではあんまり食べないですね?魚ですよね?」

「そうだね。私も特別好きなわけではないけど、日本人は割と好きだね」

「あまりおいしいイメージはないですけど」

「とりあえず、食べてみて」


注文は遅れてくる二人の分も含めて、燕真がまとめてしてしまっていた。

料理が来るまでまっていると、先に紫苑たちがやってくる。


「すいません、遅れました」

「ごめん、今日は朝から一緒する予定だったのに」

「いいのよ、さ、座って」

「ありがとう、静音。えっと、注文とかはどうすればいい?」

「もう燕真がしてるわ」

「そっか、燕真もすまないね」

「いや、気にするな。それより」

「ああ、そうか。シルヴィもイーリスもお久しぶり。漸苑だよ」

「漸苑さん、お久しぶりです」

「漸苑さん!お久しぶりです!」


「奏さん、遅くなりました」

「ううん、気にしなくていいよ?それより、何の用事だったの?」

「それがですね……」


「おっ、萌愛、鰻が来たよ!」

「おおー、ここ一回だけ連れてきてもらったことあるんだけど美味しいんだよねー」

「そうなんだ?」

「お父さんも仕事で使う時があるみたい?接待?」

「なるほどー、あ、たしかに美味しい」

「食べ始めるのはやっ」


しばらく食事を楽しんだ一行。

食事を終えたのち、伝票を見た静音と燕真の顔が一瞬固まったが、無事支払いを済ませた。


「大丈夫だったの?」

「ああ、問題はないが」

「が?」

「……もうちょっと魔物を斬らないと車が買えそうにない」

「……やっぱり、いくらか払いましょうか?」

「いや、二言はない。なに、この調子でいけば、今月末には目標額貯まる」

「音羽と萌愛が暴走しなけりゃ、もうちょっとまともな値段だったかもね?」

「それでも、5万はこえてただろうに」


「おねーちゃん、次はどこ行くの?上野?銀座?新宿?」

「うーん、二人も昨日着いたとこだし、今日は夕飯の買い物だけして帰ろうか」

「今、お腹いっぱいなんだけど?」

「それだけ食べりゃね」

「音羽は食べ過ぎなんだよー」

「いや、萌愛もなかなか食べてたよ?」


「イーリスさん、食べたいものはありますか?」

「そうですね、カレーライスが食べたいですね」

「構いませんが、アメリカにはないですか?」

「ないですね。オムライス?とかも食べてみたいですね」

「というか、紫苑さんが作るんです?」

「そうですね、今日は奏さんのうちに泊まりますから、夕飯を作るのもお手伝いしますね」

「そうなんですか」

「私もお手伝いしましょうか?ちょっとお手伝いしたいです」

「そうですか?じゃあ、一緒にしましょうか」


「かなでー?今日はなに作ろうか?」

「そうだねー。日本っぽいものの方がいいのかな?和製ジャンルの洋食とか、お寿司……はしつこいか」

「そうねー……燕真は、何がいい?」

「オレよりもそっちの二人の希望を聞いてやれ」

「ああ、それもそうね」

「奏さん、お二人、カレーライスが食べたいそうです」

「そっかー。じゃあ、そうしよっか」

「……紫苑は優秀ね」

「そうだろう、そうだろう」


10人前以上の材料を購入すべく、自宅近くのスーパーへと入る。

シルヴィ、とイーリスには割と珍しいものが売っているらしく、これは何か、などと質問しながら買い物を続けていた。

なお、調理担当の奏・静音・紫苑は手早く材料を集めて、献立をたてていた。


「チキンカレーとサラダ、ぐらいでいいかしら?」

「あるものでもう二品ぐらい作ってもいいけど、買い物はこんなものかな?」

「私、こんなにじゃがいも買ったの初めてです」

「安心して、紫苑。私もだよ。そういえば、漸苑さんは?」

「姉さんなら、イーリスさんを連れてお菓子コーナーに消えましたよ」

「はぁ、漸苑ったら、子供みたいなことを」

「あはは……」

「まあ、日本の市販されてる菓子類のクオリティはアメリカよりも高いですから、そういう意味もあるの、かもしれませんね?」

「そうなのかしら?」

「後買うものは……あ、お米足りるかな?」

「10人分でしょ?……コメはあるけど炊飯器で炊ける量じゃ足りないわね……」

「早炊きしておひつとかに移しておこうか?」

「なるほど、それならたりそうね」

「あの、すいません、そもそも飯櫃なんて持っていましたか?」

「……ないわね」

「……ないね」

「そんな高くないでしょう。レンジで使える奴買って行きましょう」

「そもそもどこの売り場に行けばいいのやら……」

「オレが探してこよう」

「ごめん、燕真。よろしく」

「鍋も買う?」

「荷物が増えるからこれ以上は辞めときましょう。20人前ぐらいならギリギリ行けるでしょう」

「そもそも一般家庭にそのサイズの鍋はあまりないかと……」


市販のカレールー2箱分の材料は中々の量であった。

それ以外にも飲み物など大量にあるので全員両手に袋を下げての帰宅となった。

響家にたどり着いたころには、日も少し沈みかけており、奏たちは早速食事の準備に取り掛かった。


「うーん……この量のじゃがの皮むきはシンプルにつらい」

「玉ねぎ切ってると涙が止まらないわ」

「奏さん、お肉、これぐらいでいいですかね?」

「あー、うん。じゃあ、先にそれ火入れておいてくれる?」

「はーい」

「静音、一回目の米炊き始めたぞ」

「ありがと、しばらく休んでていいわよ?」

「……そういわれてもな」

「あの、ニンジン皮むき終わりました」

「ありがと、イーリス。イーリスも休んでていいよ?」

「いや、あの、それは難しい注文ですね」

「奏、野菜炒め始めるけど、全部終わった?」

「カボチャがまだ。だけど先にやってていいよ」


なお、音羽、萌愛、シルヴィアは音羽の部屋で遊んでいる。時たま笑い替えが聞こえてくるので盛り上がってるらしい。

材料を鍋に入れて、煮込み始める段階になると、奏と紫苑はあるものでおかずを追加で作り始める。

そして、イーリスは奏を手伝い、燕真はすることがなくなったので、若干居づらそうにソファに座っていた。


なんやかんやで途中から興が乗ってきた奏と静音がどこからともなく大量のスパイスを取り出して追加し始めたため、味は市販ルーと遠く離れた味になっているが、一応完成した。

シーザーサラダ、ポテトサラダ、一口サイズのカツ、ゆで卵などが食卓に並んでいる。


「おおー……いい匂い」

「すごいですね」

「お腹空いて来たなー」

「お昼にあれだけ食べたのに?」


「福神漬けもあるわよ」

「豪華なカレーだな」

「カツは紫苑が揚げてくれたんだけど、燕真は少しボリュームがほしいかなと思って」

「夏野菜とチキンが大量に入ってるこのカレーなら特に不満もなかったがな。だが、正直嬉しい」

「そう?いっぱい食べてね。私と奏と紫苑の愛情が詰まってるわ」

「正直、静音以外の愛情を受け取るのは躊躇うんだが」


「サラダ2種類も用意したんだね」

「じゃがいもが少し余ったので」

「そうか。うん、どちらもい感じだ。カレーも野菜たっぷりでヘルシー志向だし」

「まあ、カロリー自体は高めですけどね。姉さん、ゆで卵は?」

「もらおうかな」


「結局、そんなにお役に立てませんでしたね」

「そんなことないよ。まあ、下準備さえ終わればそんなに人では必要なくなるから仕方ないよ。私なんかサラダ作り終ってからほとんど味見しかしてないし」


「で、おねーちゃん、イーリスの明日からの予定は?」

「とりあえず、明日はまた東京を少しうろうろして、明後日から一泊二日だけど京都に」

「そうなんだー。シルヴィはタローとデートらしいから私は明日宿題でもしてようかなー」

「あれだったらついてきていいけど?」

「かんがえとくー。というかあんまり大人数だと行動しにくいでしょ?」

「まあ、そうだね。明日は明日香もいるし」

「ほらねー」

「まあ、明日になってから考えればいいか。音羽、食べ終わったらお風呂準備してきて」

「おっけー、任せて」


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