表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
56/65

#04-04 歓迎の宴




奏たちを乗せた車はすぐに空港を離れ、しばらく経ったのちに都内の某所に停車した。


「えっと、もう着いたのかな?」

「流石に早すぎじゃありませんか?」


萌愛と瑠衣が窓の外を見ると、そこは響家とは違う場所だった。


「あの、耀史さん」

「ああ、ごめん。言ってなかったっけ?お昼ごはんご馳走してあげるって」

「え?ほんとに?」

「流石にあんまり高い店は無理だったけど……これぐらいはね」

「車も出してもらってるのに……」

「いいんだよ、奏さん。合法的に女子高生と触れ合えるわけだし、そもそもほとんど遥人の金だし」

「その言い方はちょっと卑猥です」


紫苑に叱られ、一応反省の態度を見せるが、すぐにいつもの調子で車を降り、店に入っていった。

一同も、それを追って店に入る。

なお、車は流石に停まれる場所がないので、しばらくしてから迎えに来てくれるらしい。

特に外の看板も確認せず入った一同。

中は、驚くほどの高級店、という事はなく、いくらか見覚えのある光景だった。


「回転寿司ですか」

「こういうののほうがいいかなって」

「耀史にしては気が利いてるじゃん!」

「……音羽のその態度はどうにかならない?」

「知ってると思いますがこういう性格なので諦めてください」


耀司、瑠衣、音羽が先行し席に向かう後を奏たちがついていく。

最後尾はシルヴィアと大郎で、シルヴィアが大郎にべったり張り付いている。


「回転寿司は回転寿司でも、ちょっと高い方のお店ですね……」

「お皿の色で値段が違うやつだね」

「おおー、お寿司だ!」

「私も回転寿司は久しぶりに来ました」

「明日香は回らないお寿司の方が多いのかな?」

「え?さすがにそんなことないですよ?」

「うーん、なんだかこれぞ日本って感じですね?」

「「「「いや、その認識はちょっとどうかと……」」」」


「おーい、タロー、シルヴィー、こっちこっち」

「わかってるよ、大きい声出すな」

「タローはお魚好きですか?」

「うーん、まあ、何でも好きだけど」

「そうなんですか」

「シルヴィアは魚大丈夫だよな?」

「ええ、お肉の方が好きですけど」

「お肉はまた今度だなー。奏さんがレストラン予約しててくれてるから」

「Ohー、楽しみですねー」


先に三人が座ったボックスシートに、大郎とシルヴィアのカップルが座り、その隣の席には奏たちが座った。


「それでは、どうぞ、適当に好きなもの食べてね」

「「わーい」」


耀史の宣言の直後、音羽と萌愛が早速、高そうな皿を中心に確保していく。


「イーリス、何が食べたい?やっぱり、マグロとかかな?」

「そうですねー、では、サーモンとか?」

「お、いいねー――っと、ちょうど流れて来たみたいだね」


明日香は、恐る恐る皿を取るイーリスと好きなネタについて話しているみたいだが、案外イーリスが寿司ネタに精通しているというのが驚きである。


「タロー、あとであーんしていいですか?」

「いいけど……おいこら、音羽、カメラをこっちに向けるな!大トロ来たぞ!大トロ!」

「うっそ、マジ?!」

「いや、食い物でつられるのはちょっと私どうかと思うけど……」

「いや、賑やかでいいねぇ――音羽、僕にも大トロ取って」

「あいよー」

「ふむ……うん、別にどうこう言うほどでもなく普通に美味しいね?」

「耀史は回転寿司をなんだと思ってんだよ……」

「というか庶民の私からするとここでも高いお店な方なんですけど……」


「あ、奏さん、カニ汁とかありますよ」

「え?――ほんとだ、注文しよっか」

「そうしましょう」

「明日香たちもいる?」

「いります」「カニ汁ってどういうのですか?」

「お味噌汁ってわかる?アレにカニを入れた奴なんだけど……」

「そもそもスタンダードのお味噌汁を飲んだことがないので何とも言えなんですが」

「じゃあ、私と半分こしようか。無理そうだったら私が全部食べるし、足りなかったら追加注文するし」

「え?いいんですか、明日香」

「いいよー」

「私も欲しいですー」

「あ、奏さん、茶碗蒸しも頼みましょうか」

「いいねー」

「あ、私も食べます!」

「じゃあ、萌愛の分も合わせて……明日香たちはどうする―――?」


「あれ?瑠衣、なんか急に止まったけど、もうお腹いっぱい?」

「いや、お寿司って結構お米だから……カロリーとか糖分 とか」

「ダイエット中だっけ?」

「そうでもないけど、最近運動してないしー――というか、音羽すごい食べてるけど大丈夫なの?」

「余裕余裕」

「……というか、奏さんもすごい食べてるけど」

「お姉ちゃんはいつもあんなもんだよ?別に大食いってほどでもないでしょ?」

「そうだけど、あれだけ食べて、特に部活と化してるわけでもないのにあの体型ってすごいよね」

「うちの家系はみんなあんな感じ」

「……音羽の血とか飲めば」

「なんでちょっと目がマジなの?」


「わぁ、本場のお寿司って美味しいんですね。私濃い味とか苦手なので」

「……ほんとにアメリカ人?」

「ええ、おそらくは」

「というか、イーリスってこんなに日本語しゃべれたっけ?」

「先生がよかったもので」

「さすが奏さんです」

「……そういう次元かなこれ」

「まあまあ、明日香さん。奏さんに関しては今更だよー。こないだも試験全教科満点とかいう前代未聞のことやらかして職員室がざわついてたもん」

「……奏さん、成績はそんなに良くないみたいなこと言ってませんでした?」

「今回は少し勉強したからねー」

「――その間に私と音羽さんと瑠衣さんと萌愛さんと、尋さんと他一名のテスト勉強を手伝いつつ、イーリスさんに日本語教えてたわけですけど」

「いやぁ、がんばったよね?」

「……頑張ったですましていい次元じゃないよね」

「でも相変わらず奏さんが奏さんで安心しましたよ」

「え?いまのどういう事?イーリス」


「タロー、タロー、これなんでしょう?」

「え?あー……ここそういうの流れてこないタイプの奴かと思ったけど、そうでもないみたいだな。見た通りエビフライだよ」

「Oh……なんかアメリカで見たことありますこういうやつ。美味しいんでしょうか?」

「どうだろう……オレはあんまりだけど」

「おーい、音羽。鉄火巻取ってくれない?」

「おっけー……というか耀史、さっきからマグロしか食べてなくない?」

「そうだっけ?エビとかカニとかも食ったけど?」

「というか、いつの間にお酒頼んだんですか……」

「つい、ね」


グラスに残っていたビールをぐいっと飲み干した後、時計を確認した耀史は全員に声を掛ける。


「そろそろ車呼んだ時間だから悪いけどそろそろ店出る準備してくれない?」

『はーい』


会計は用事がさっさとカードで払いを済ませた。

伝票を見た大郎が軽く引いていたのでかなりの額になった模様である。

軽く酒も入ってご機嫌の耀史は、そのまま店の前に入ってきた車にさっさと乗りこんでしまう。


「それで、とりあえず、奏さんのうちでいいんだよね?悪いけど近くまでしか行けないだ。路地入り辛いから」

「全然構いませんよ。助かりました。あと、ご馳走様でした」

「いいよいいよ。僕も、オッサンたちの相手するより女の子と戯れてる方が楽しいし」

「そうですか?」

「そうだよー。しかも金は遥人もちだしね。で、5日後の夜は19時からだったね?迎えはいるかな?」

「うーん……あのお店ぐらいなら歩いていけますから。それに他の子たちも迎えに行かないと」

「おっけー。じゃあ、また5日後に」


耀史がそういったタイミングで車が到着した。

そこから去っていく耀史を見送って、大郎を除く一同は響家へと向かう。

大郎はこれからと明日、何やら用事があるらしく、シルヴィアに頭を下げながらうちに帰っていった。


家に入った一同を出迎えたのは静音。


「ただいまー」

「おかえりー、おそかったわね?お昼は?」

「耀史さんのオゴリでお寿司―」

「うわ、いいな。私も行けばよかった」

「お姉ちゃん、学校に用事あったんじゃなかったっけ?」

「姉さん、私と音羽でイーリスとシルヴィア案内するから、明日香たちのお相手お願いしていい?」

「いいわよー。お茶菓子とか特にないんだけど、アイスティー入れておいたから。紫苑、用意するの手伝ってくれる?」

「はい。お任せを」


リビングダイニングに入った静音がキッチンに向かい、紫苑はさも当然のように食器棚からグラスを出して並べている。


「……なんで紫苑は食器の位置とか把握してるんだろう」

「私も結構来てるけど流石にそこまでは」

「私も……」

「皆さんどうかしましたか?」

「「「いいえなにも」」」


一方、二階へと上がった4人は、


「ここ客室だからイーリスが使って」

「いいんですか?」

「シルヴィアはー、ここと私の部屋どっちがいい?」

「せっかくなので音羽さんの部屋で!」

「じゃあ、シルヴィアの荷物はここに一緒に置いておいていいですよ」

「あ、それ助かるかも。私の部屋もそんなに広くないから」

「じゃあ、必要最低限だけ音羽さんの部屋に持ち込ませてもらいますね」

「何が必要なの?」

「えっと、着替えとか、ぬいぐるみとか?」

「なにそれ、かわいい」


「イーリス、この部屋は好きに使っていいから。お手洗いと洗面所の位置は二階はそこで、一階は後でまた教えるね」

「ありがとうございます。あ、少し荷物広げさせてもらってもいいですか?」

「いいよ。あ、お風呂とか使う?」

「正直、少し入りたいですが、今はいると正直時間帯的に微妙な気が……」

「そっかー……あ、そうだ近所にスーパー銭湯できたらしいから行ってみる?」

「せんとう?ですか?」

「えーっと、大浴場……うーん、表現が難しいな。あ、スパって言ったら伝わる?」

「それならわかります」

「暑いからあんまり湯船にお湯貯めるのもどうかと思ってたけど、長い間飛行機で疲れてるだろうし、今日ぐらいは足伸ばして入れるお風呂の方がいいかも?」

「楽しみですね」

「おねーちゃんたち、どっかいくの?」

「近所に銭湯できたでしょ?」

「あー、あそこね。部活帰りに行ったけど結構よかったよ。綺麗だし、そんなに高くないし」

「そうなの。イーリスとシルヴィア疲れてるだろうし、今日はゆっくり湯船につかれるように連れて行ってあげようかなって」

「ナイスアイデア!じゃあ、私おねーちゃんに言ってくる」


「荷物片付けたらすぐ降りますね。あ、奏さん、これ私の生活費です。食費とか光熱費とかここから出しておいてくれますか。逐一払うのも面倒ですし」

「りょーかい。残ったら返せばいいかな?」


ぱたぱたと二階に降りていく音羽。それを何事かと追いかけていくシルヴィア。

奏とイーリスが荷物を片付けて降りて来た時にはすでに話がついていたようで。


「じゃあ、少し休憩したら行きましょうか。あなたたちもいったん落ち着いてお茶飲みなさいな」

「はーい」

「あ、静音さん、これお土産です。お口に合うかわかりませんけど」

「あ、私もあります。なんか流行ってるらしいから買って来たんですが、美味しいんでしょうか?」


イーリスの出した少し高そうなチョコレートと、シルヴィアの出したカラフルなお菓子の詰め合わせを受け取った静音は、とりあえず、シルヴィアの方から開封するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ