表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第4章 境界の海、2つの夏
55/65

#04-03 空の港



明日香宅訪問から、数日が経過し、イーリスとシルヴィアが日本にやってくる日になった。

2人は2週間ほどこちらに滞在する予定である。


そして、現在、奏・音羽・紫苑・明日香・大郎の5人は炎天下の中、迎えを待っている。


「暑いよー、お姉ちゃん」

「うーん。さすがにこれはちょっと堪えるね」

「大丈夫ですか、奏さん。お水飲みますか?」

「ううん、今は大丈夫。ありがとね、紫苑」

「というか、紫苑さんとお姉ちゃん、日傘に二人で入るってどうなの?逆に暑くない?」

「そうでもないけどなぁ」

「奏さんの近くにいると熱くはなりますが」

「紫苑ってば最近理性はずれ掛けてませんか?」

「そうでしょうか?」

「そうかな?」

「男相手だったら文句の一つも言ってたかもしれないけど、女同士だから妹としては何とも言い難いなぁ」

「私としては見てるだけで結構眼福なんですけど」

「え、明日香さんもそっちの趣味?」

「いや、そんなつもりはないんですけど……二人ともここまで綺麗だから、保養になるといいますか」

「あー、それは何となくわかるかも?ねえ、タローどう思う」

「オレに聞くな!」


約束の時間の5分ほど前に萌愛と瑠衣が慌てた様子で駆けてくる。


「すみません、遅れました!」

「ごめんなさい!ちょっと寝坊しちゃった」

「まだ大丈夫だよー」

「この暑い中ダッシュってきつくなかった?」

「しんどいです」

「あ、でも、向こうの交差点で長い車見ましたよ!」

「長い車?――ああ、たしかに長いね」


よくテレビとかで見るリムジンだった。

それは、奏たちの前に停車する。


周囲にいた人間たちがざわつき始める。

そして、中から耀史が降りてくる。


「やあ、元気?」

「暑いです」

「あー、そうだよね。さ、乗って。飲み物も用意しているから」


「うわ、中広いですけど……これ全員乗れます?」

「大丈夫、10人乗りだし。今、8人でしょ?」

「まあ、最悪耀司さんとタローを捨てていけばいいか……」

「え?オレが手配したのに?」


全員が乗り込んだ後、リムジンは出発する。

やけに高そうなフルーツジュースを飲みながら、耀史が大郎をいじっている。


「アメリカの彼女かー、羨ましい限りだねぇ」

「耀史も彼女ぐらいいるだろ!?」

「いや、オレは仕事忙しいし、遥人のあの調子を見てると若干結婚したくなくなってきた」

「でも、金あるし、顔も悪くないからモテるだろ?」

「どうかなー、ねえ、奏さん的には、オレはどう?」

「耀史さんはちょっと……」

「音羽は?」

「あはは、ないかな」

「紫苑さん……は、いいや。明日香さんは」

「うーん……」

「萌愛さんと瑠衣さんは?」

「「ないです」」

「……まあ、ざっとこんな感じよ」

「まあ、洋の馬鹿と違って嫌われてはないんだろうけど」

「何気に、奏さんのセリフが一番ダメージでかかったけどね」

「そうですか?」

「というか、皆して速攻でNG出したよね?」

「明日香はそうでもないみたいですけど?」

「え?ああ、まあ、嫌ではないですけど……」

「実質NGみたいなもんでしょこれ……」

「もう傷口広げないうちに話題変えようぜ、耀史さん」





日本へと入国の手続きを済ませたイーリスとシルヴィアは、初めて来る異国の地に少しの不安を覚えつつも、興奮でうずうずしていた。

普段は比較的静かなイーリスも、今ばかりはテンションが非常に高い。


「きちゃいましたね、日本」

「そうですね。うーん、なんだか落ち着かないです」

「さっきまですごく眠かったんですけど、タローに会えると思うと眠気も吹き飛びました」

「それは良かったです」


荷物を受け取り、ゲートを出るとそこには多くの人が待ち構えていた。

理由はわからないが、みな誰かを待っているらしかった。

ほかの乗客たちとともに一瞬たじろいだものの、こちらが標的ではないようなので、人の垣をそっとすりぬける。


「あれ?誰か有名人でも来るんでしょうか?」

「同じ飛行機に乗ってたんですかね?」

「そんな様子はなかったと思うんですけど……まあ、いいです。とりあえず、カナデさんを探しましょう」

「そうですね!」


キョロキョロとあたりを見渡すと、奏の姿はすぐに見つかった。

背が少し高めで、スタイルは良く、何より紫苑が近くに寄り添っている姿はかなり目を引く。

そちらに向かって駆け寄ると、奏たちも気づいたようで、こちらに歩み寄ってくれた。


「カナデさん!」

「イーリス、いらっしゃい」


イーリスのハグを奏が受け止める。


「会えてうれしいです」

「私も」

「なんだか、この優しい暖かさというか柔らかさというか、すごく懐かしい気がします」


少しの間抱きしめて満足したのか、イーリスは隣の紫苑へと標的を移す。


「シオンさん!」

「え?私もですか?」


一方、大郎はというと、テンションが限界に達したシルヴィアに抱き着かれて、全力であわあわしていた。

その隣で音羽が爆笑しながら写真を撮っている。


「タロー!タロー!」

「わかった、わかったから落ち着けって!」

「これが落ち着いていられますか!」

「いや、落ち着いてくれよ」

「あっはははははは!」

「笑ってんじゃねぇ!というか、写真撮んな!」


「イーリス!」

「明日香!初めまして!?お久しぶりです?」

「わーい、イーリスだ!」


仲が良かったイーリスと明日香も感動の再会?を果たし、ハグをしていた。

ひとしきり再会を喜んだあと、リムジンに戻ることにする一同。

そのとき、背後の人垣が突然盛り上がり始めた。


「あれ?なんか盛り上がってるね?」

「あれじゃないですか?ハリウッド俳優が来日するとか」

「ああ、明日香のお母様が言ってたやつか」

「なんかすごい盛り上がってるね?――瑠衣、見に行く?」

「えー……あの人混みに入る勇気がない」

「あー、たしかに。前には行けなそうだもんね」

「なんだか巻き込まれそうだから早く移動しようか?」

「そうですね」

「よーし行こう!大郎、荷物持ってあげなよ?」

「それぐらいわかってるよ、流石に」


全員でリムジンに戻り、乗り込む。


「ふむ、荷物が思ったより多かったから結構きついね?」

「ほらー、耀史。ダッシュね?」

「え?ひどくない?」

「紫苑、もっとよってあげて。あれだったら上に座ってもいいよ?」

「望むところです」

「あ、なんか解決しそう」

「やった」

「ふふ、相変わらずカナデさんとシオンさんは仲良しで良かったです」

「だよね。二人を見てるとこっちも満たされる」

「わかります」

「……お二人もわりと重症なのでは?ねえ、萌愛」

「うーん……女同士っていうのはわかんないけど、奏さんと紫苑さんはそういうもんだという認識なんだよね。瑠衣もじきに慣れるんじゃない?」

「何それ怖い……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ