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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第3章 朱き炎鱗、空を翔る翼
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#03-10 次の目的地は




七海を連れまわしながら奏と紫苑は大阪の街をふらふらと観光していた。といっても概ね食道楽なのだが。

いい加減胃袋に限界が来ている七海はぐったりしているが、奏と紫苑はまだまだ元気だ。


「次はどこ行こうか?」

「か、奏さん、まさかとは思うけどまた食べ物?」

「うーん、そろそろいいかな?」

「戦闘するとカロリー使いますからね」

「いや、そんな馬鹿な……全然やせないけど……」


自分の腹周りを触りながらぶつぶつと呟く七海。


「あ、そういえば、七海」

「――なんですか?」

「次の目的地なんだけど」

「え?そろそろ東京に戻らないとやばくないですか?」

「まだ大丈夫でしょう。いや、明日には一旦戻るけど」

「奏さん、またどこか行くんですか?」

「うーん、そろそろあっち側の世界に行けるはずだから、いってみようかなって」

「ああ、そういえばそんな話でしたね」

「行けるなら是非行きたいですけどね。また、外国とのお話合いが発生しそう」

「まあ、私と紫苑なら科学だろうと魔法だろうとほぼ完全に隠蔽できるからそれほど難しいことじゃないけど」

「それでも船とかいるんじゃないですか?」

「海の上走るから大丈夫」

「いや、それ万が一目撃されたらえらいことになりますよ……でも、隠密系の能力高いのは、明日香と萌愛ぐらいですから、二人は連れて行くんですか?」

「そうしようと思ってる」

「じゃあ、なんでそれを私に?」

「行けるのを確認したら転移でもなんでもできるかなと思ってね」

「なるほど、その時はぜひ。他の奴らにも声かけておきますね」

「うん、そうしてあげて」

「奏さん、自由行動してるときの方が生き生きしてますよね」

「そうかな?」

「まあ、その方が奏さんらしいですけどねー――ああ、そうだ、3人で写真撮ってもらっていいですか?アイコンにしたいんで。あ、もちろん私以外の顔は隠しますから。というかそういう感じで撮りましょう」

「いいよー」

「奏さんがいいなら私も」

「基本的に断るけどね。七海だし」

「やったー!ふっふっふ、これでみんなに自慢できる――明日香を中心に自慢しよう」


写真が取れてご満悦な七海。

この写真を羨んだ7番隊の面々の間で壮絶な争いが起こるのはのちの話である。




「あの、カメリア隊長」

「そろそろ休憩?」

「いえ、そうではなく、何か思っていた感じと違うんですが」


ルイズは魔族領と聞いてほとんど荒野のようなところを想像していた。実際、数年前に言ったことのある者の話を聞いた限りではそういった場所であったが、今現在目の前に広がっているのは、それなりに整備された土地と緑が風に揺れている光景であった。


「それで、あのゼリ領には予想外なことに転移ですぐだったんですけど、ここからどこを?」

「ゼリ領でももっと端だね。ここからずっと西へ進んで海の方に行くよ」

「わかりました。しかし、魔王様が代わってから4年でここまで変わるものなんですか?」

「魔族領――西大陸が荒廃していた理由としては神殿が機能してなかったって言うのが一番大きいかな。特に、恵みを司る“樹神殿”が封じられてたし」

「でも今はきちんと動いているようですね。安心しました」

「そうだね――セイエイは海がおかしいって言ってたけど、どういう事なんだろう?」


カメリアとルイズは、街を出て人のいない岩場を西へと進んでいった。

海運用の港はこの領内にも整備されているが、もう少し道が引きやすい場所を選んで設置されている。

また、そういった船が通ることが多いため、海の異変はきちんと正しておかなくてはならない。


大陸の端まで移動するにはかなりの時間が掛かる、ルイズもそれを覚悟していたが、実際には2時間ほどで海が見え始めた。


「海、ですね」

「海だね」

「なんか、思ってたより近かったんですが」

「行軍速度を上げるために魔法使ってるからね」

「そうだったんですか!?」

「だって野宿とかいやでしょう?」

「それはそうですけど……それよりも、海の様子、おかしいですか?」

「どうだろう……もう少し近づいてみないと」


この世界では海の先はまさしく世界の終わりへと繋がっている。

球体の世界ではないので、海の果ては、正しい意味で存在する。西に進んでいけば、東大陸に着くようなことは基本的にない。


海を望む崖に着く。

波の様子は穏やかだが、いつもより心なしか暗い雰囲気を感じる。


「……違和感はありますが」

「そうだね、なんでだろう、世界の果てが近い様な――というかそもそも果てがなくなってるような気がする」

「そういうことですか?」

「この海の向こうに何かがある」

「……一大事ですね」

「もう少し詳しく調べたいけど、海を渡る手段もほしいし一度戻る?」

「そうですね、水系の魔法が得意な方かウンディーネを連れてくれば……」

「まあ、どこまでなら近づいても大丈夫か保証はないんだけどね。とりあえず、クオンを連れてきて調べてもらう」

「第5研究室室長ですか」

「そう。まあ、身内だから声もかけやすいし」

「一度帰って報告もしないといけませんね」

「あとは、魔国にも話を通して船に気を付けてもらわないと」

「そのあたりはハルネ代表の仕事ですかね?」


カメリアが転移陣を組み始める。

彼女の母親ほどに速くは展開できないがその正確さと、魔力量から来る輸送力はかなりのものである。


「面倒なことにならないといいんだけど」


揺れる水面を見ながらカメリアがつぶやく。




「遥人さん、観測結果は?」

「だいぶん近づいてるね」

「ということは?」

「もう向こう側に渡航はできるだろうね」

「こちらの竜の情報も減ってきてますし、一度向こう側から専門家を呼んで解析してもらうというのもありでしょうね」

「まあ、正直、こちらの設備じゃ魔法的な観測を行うにはかなり力不足だもんね」

「では、向こうに人を送り込む準備を始めたいと思います」

「実際問題、向こう側に本当に行けるのかどうかっていうのはかなり謎なんだけど。ただ、今は距離が+25%だから他の国にはまだ感知されないレベルだとは思う」

「今のうちに、ですか」

「そうだね。向こうに乗り込もうとするバカは確実に出てくるだろうから向こう側には相応の準備ができるように警告しておかないと。まあ、こちらでも牽制はするけれどさ」

「うちの国の政治家あまり役に立ちませんからね」

「とりあえず、洋の謹慎が融けたら向かわせてみようか。竜探しも継続して頼むよ。そろそろ日本以外にも行ってそうな気もするし」

「わかりました。時期的に長期休暇ですので学生の皆さんも動きやすくなるでしょう」

「そうだといいね。というか奏さんが帰ってきてくれると嬉しい」

「確かに、戦力が尋常じゃないぐらい下がってますからね……」



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