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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第3章 朱き炎鱗、空を翔る翼
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#03-08 エース不在の裏事情




奏と紫苑が休暇をエンジョイしている反面で、東京の戦線はかなり面倒なことになっていた。

その被害を一番受けていたといえるのは第19部隊エレクトロンの面々だ。

なにせエース級の部隊が奏不在によってほとんど機能しなくなっているのだ。唯一まともに活動しているのは瑛大率いるシルト隊のみ。

そうなってくると彼らに任される仕事も自ずと増えるというわけで、


「あああ!黒砂糖!もっと削れ!」

「無茶言わないでください!これでも精一杯です!というかなんで今日に限ってこんなにオーガ種がわくんですか!」

『今日に限ってじゃねーぞ。これぐらいならいつもは奏が秒殺してくれてたんだ』

『フリューゲルがいないと東京の火力80%ぐらい落ちますからね』

『萌愛もダウンしてるし、明日香は今米軍との問題で前には出てこれないし、奏と紫苑は失踪してるしな』

「先輩方、そう思うなら他の部隊を出すとかできないんです?」

『いや、シュヴェルトもスピアーも奏探すのに忙しいから。そういう尋ちゃんこそ、奏の行き先に心当たりとかないのか?』

「あったら真っ先に言ってます!」


そういいながら尋は弓を放ち、鬼たちを仕留めていく。


「というか、こんなに硬いオーガ秒殺できるってどういう火力なんだよ」

『あっはっは、聞いて驚け。奏のステータスはお前らの10倍ぐらいあるぞ』

「ちょっと何言ってんのかわかんないっす」

『まあ一番でかいのは運4000なんだろうけど。たぶんこれのせいでアイツだけゲームシステムが崩壊した』

「あの、僕らの運50とかなんですけど……」





神様との宴会の後、揚揚と帰っていった天照を見送って奏と紫苑も床に着いた。

そして一夜明ける。

奏が目を覚ますと腕の中に紫苑の姿があった。


「ん……」

「あれ?一緒に寝たっけ?」


こちらの胸に顔をうずめて眠る紫苑を引きはがすのは不可能に近いが、幸い、奏が少し動いたことで紫苑も目を覚ましたようだった。


「あ……すみません、奏さん」

「いや、別にいいけど……」


紫苑はいちど奏をぎゅっと抱きしめてから起き上がった。


「今日はどうしますか?」

「えっと、どうしようか?」

「せっかくここまで来ましたから観光でもして帰りますか?」

「そうだね。まあ、向こうのことは姉さんたちがどうにかするだろうし。京都とか大阪とかもついでに周ろうかなぁ」

「奏さん、思ってたより思いっきり遊ぶ気ですね」

「だって、あれだけの死闘やったからね。ちょっとぐらいサボっても罰は当たらないと思うの」


そういうと奏は紫苑の腕を引いて自分の胸に埋めた。


「……もうちょっと寝る?」

「あ、あの、この体勢意識があるときにされると物凄くまずいと言いますか……奏さんの匂いと柔らかさに理性が融けそうです」

「そういえば、紫苑は“色欲”持ちだったね――やらしい」

「ひどいです。傷付きました。慰めてください」

「えー……仕方ないなぁ」


奏が紫苑に覆いかぶさり、その顔にゆっくり自らの顔を近づけていく。


「え?これ、ほんとに?奏さん、寝ぼけてないですよね?」

「自分から言い出したくせに、焦ってるの?」

「そりゃ、まあ、えっと」


紫苑が緊張からぎゅっと目を閉じる。

その直後、紫苑の額に柔らかいものが触れた。


「え?」

「今日はここまで、ね?――朝ごはんにしましょう」

「は、はい――あれ?今日“は”ってことは、続きがあるんですか?」

「どうかなー」

「私なんかより奏さんの方がいやらしくないですか?」

「気のせいだよ、気のせい」


そういうと奏が浴衣の帯をほどく。

紫苑が抱き着いてたせいかほんのり汗をかいているのがまた扇情的である。


「うーん、朝ごはんの前に温泉入ろうかな?」

「そうですね、チェックアウトまで時間はありますし」

「朝ごはん食べたら伊勢神宮お参りして……すぐ移動かな?」

「あまり一か所にとどまると足がつきますしね」

「ふふっ、なんか逃避行みたいで楽しいかも。禁断の関係?って言われればそうかもしれないけど」

「あの、奏さん?それ大丈夫ですか?いえ、私はむしろウェルカムなんですが」

「え?何が?――さ、紫苑、お風呂入りましょう」

「あ、一緒に入るんですね。勿論お供しますけど」


服を脱ぎ、タオルだけ持った状態で部屋付きの温泉へと向かった奏を追って紫苑も浴衣を脱いだ。





鈴音からの電話を受けて静音と音羽は一安心といった表情を浮かべる。どうやら、居場所が分かったらしい。


『Kグラスの方でネットワークのアクセス履歴を追ったところ、今はお二人とも伊勢にいることが解りました』

「何だってそんなところに」

「いいなー、お姉ちゃん。私も行きたかった」

『ステータスをチェックしたところ、“穢れ”が消えていますから、お祓いでもしたんじゃないでしょうか。それで、どうしますか?』

「そうねぇ……まあ、放っておいてもいいでしょう。すぐ帰ってくると思うけど」

「え?いいの!?」

『迎えに行くと言い出すと思ってました』

「うんうん、私も」

「状態異常が解けてるなら奏にも紫苑にもそれほど危険はないでしょう。位置は追跡できるのよね?」

『いえ、それが、またロストしまして……』

「何やってるのよ……」

『シャッテン隊が先ほど2人が泊まっていた宿に潜入したのですが、“しばらく紫苑とデートしてるから探さないでね”という手紙を宿の従業員の方経由で受け取りまして』

「やっぱり探しに行った方がいい様な気がしてきた」

「というかデートなの?やっぱり付き合ってるの?」

「そっち?」

「え?だって、結構重要なことだよ?同性なんだから。まあ、私はお姉ちゃんがいいならそれでいいと思うけど」

「同性でもそんなに気にすることないわよ。お母さんもたぶんそんなに気にしないだろうし――私も燕真と出会わなければ漸苑と付き合ってたかもしれないし」

「……今衝撃的な告白が聞こえたんだけど」

『やばいですね』

「ほら、鈴音さんの語彙が貧困になるレベルの衝撃発言」

「そんなことはいいから、鈴音、奏の追跡は可能なの?」

『なんとか可能だと思います。かなり難しいですが』

「流石我が妹。無駄に何でもスペックが高い」

「それについていける紫苑さんもすごいよね」





「お、奏見つかったのか。よかったよかった」


鈴音からの通信で瑛大が確認し、声を上げる。


「じゃあ、オレたちの仕事もいくらか減りますね?」

「いや、また消えたらしいけど」

「まじっすか」

「まじまじ」

「あー、もう、あの百合カップルはほんとに自由なんですから」

「翔、奏に幻想抱くのやめたのか?」

「いや、もう無理でしょうあれ。紫苑さん寄合される人が今後出てくる気がしないんですけど」

「まあ、出てきても紫苑さんに消されていなくなるだろうけどな。そんなことより、はよ戦え」

「うるせーぞ、タロー。今、翔の失恋いじってるんだからほっとけ」

「あんたもまとめて討伐してやりましょうか?」

「というか、黒田先輩の方すげぇ押されてるな。ちょっと行ってきます」

「タローがいなくなったらこの大量のゴーレム誰が叩くんだよ?」

「お前がやれよ!」


大郎は瑛大に一撃蹴りを入れてから救援に走った。

奏たちが帰還するまであと――?日。


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