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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第3章 朱き炎鱗、空を翔る翼
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#03-07 捜索せよ




音羽が静音と合流し、自宅へと戻った時点で時刻は18時過ぎ。

玄関のドアを閉めた時点で、静音に電話がかかってきた。

相手は鈴音だった。


「どうかしたの?」

『奏さんが失踪しました。紫苑さんも一緒です』

「ええ!?」

「どうしたの?おねーちゃん」

「奏が消えたって」

「ええ!?」

「どういう状況ですか?」

『先ほど看護師が確認に行ったときに、不在だったようで』

「でも、靴も着替えもないはずよね?」

『はい。しかし、デバイスと携帯電話は持ち出されていますね』

「携帯から位置情報わかるんじゃない?」

『今調べてます』

「……調べてるんだ」


二階に上がった音羽が降りてくる音がした。


「ねえ、お姉ちゃんの部屋に病衣があったよ!」

「奏、一度家に戻ってるようです」

『目的地はわかりませんか?』

「検討はつきませんが、着替えとかを結構持ち出しているので」

『なるほど……とりあえず、急いで調べてみます』

「お願いね。私は漸苑に連絡を取っておくわね。どうせ二人一緒に消えたんでしょう?」

『はい。そうですね』

「まあ、一人でいられるよりはマシかしら……?」





日も落ちてきたので、目的地へは明日入るとして、徒歩圏に宿を取った奏と紫苑は、かなりだるい体に限界を感じて畳の上に転がった。

二人が入った部屋は、そこそこの値段がする温泉宿だったのだが、金銭的にはなぜか余裕があるので、迷わずそこへ決めたのだった。


「あー……思ったよりきついかも」

「大丈夫ですか?奏さん」

「紫苑こそ」

「私のほうがいくらかマシですから」

「そうなのかな?」

「そうなんですよ。しかし、お部屋が空いててよかったですね」

「シーズン的には微妙なところだしね」

「でも、なんかツアーのご老人たちがいっぱいいましたよ?」

「うちのおじいちゃんたちも旅行とか好きだよ?」

「そういうもんなんですかね?」


2人で使うには広すぎる部屋で、意味もなくごろごろと転がってみる奏だった。


「ちょっと広すぎたかな?」

「でも、お部屋に温泉がついてる部屋だとこれぐらいの大きさじゃないとダメでしたから」

「正直いつ動けなくなるかわかんないから、大浴場とか使うのはちょっと」

「ですよね」

「でも、いろいろお風呂があるみたいだから、動けるようになったら行こっか?」

「それはいいですね」

「それはいい考えね」

「「!?」」


奏と紫苑が突然聞こえた三人目の声に振り返る。


「え?誰の声!?」

「女の人の声でしたね。聞き覚えのある様な?」

「……仲居さんかな?」

「ちがう、こっちこっち」

「こっちと言われても……」

「奏さん、外です」

「外?わ!?」


ガラス窓の向こうに神々しい(気がする)女性がいた。


「えーっと、神様」

「覚え方が雑!」

「太陽神ですよ、確か」

「あー、そうだったね。天照さん、だっけ?」

「さん付けですか、奏さん」

「まあ、何でもいいが……」

「え?でも何でここに?」

「なんでって、覚えのある神力が二つも近くに来たと思ったら、なんでか二人ともすごい穢れを纏っておるから」

「というか、神社から出ていいんですか」

「夜じゃから、ある程度自由は効く」

「そういう問題なんですか……」

「というか、そろそろ部屋に入れろ」

「ああ、忘れてた」

「今開けますね」


紫苑が立ち上がると窓を開ける。


「というか窓ぐらいすり抜けられないんですか?」

「できないこともない」

「ないんですか……」


さて、というと何かごそごそし始めた天照。

次の瞬間には鈴や大幣を取り出していた。


「どこから出したんですか!?」「どこから出したの!?」

「気にするな。それよりも、祓ってやるから、そこに座っておれ」


そういうとほかにもいろいろな道具を取り出しと思うと、奏と紫苑が正座する周りに並べていく。


「まあ、こんなものでよかろ」

「というか、ここで大丈夫なの?ちゃんとした社殿でやったりとか」

「気にするな。ご神体がここにおるのだぞ?」

「アバウトだなぁ……」

「神道なんてそんなもんじゃ」

「最高神がそんなこと言ってもいいんですか……」

「タダでやるわけではない」

「しかもがめつい……」

「掛けまくも畏き……」

「ああ、それ唱えていいんですか……」

「別に何もせずともいいが、何となくじゃな。恰好だけでもやっておいた方が恰好着くじゃろう?」

「そんな……」

「そんなことより、もう祓えたが?」

「え?――――うわ、ほんとだ。体軽い!」

「びっくりですね」

「まあ、次からは自分で祓うんじゃな」

「祓うも何も、神格も使えなくなるんだけど」

「他のスキルを使うといい」

「他のスキルって、奏さん、そんなのありましたっけ?」

「あー、なんか今そういう感じのスキル取得したかも?」

「……さすが奏さんです」

「えっと、何か奉納しておいた方がいいのかな?」

「何でもいいぞ」

「じゃあ、これを」


奏が鞄から髪紐を取り出して天照に手渡した。


「祖母からもらったかなりいいものなんですけど、少し派手すぎるので一度も使ってなくて」

「まあ、よかろ」

「すごく高そうですよ……」

「まあ、高いだろうねぇ……」

「でも、これだけでは少し足りないような……」

「そうじゃな、じゃあ、食事でもご馳走してくれ」

「食事……ああ、そういえば私たちもまだでしたね」

「じゃあ、食べに行きましょう」

「酒は大丈夫か?」

「……いけるでしょうか?」

「この人が20以上に見えればいけると思う」

「無理じゃないでしょうか」

「まあ、無理にとは言わんが……」

「でも、目立ちますよね……」

「あまり目立つのはまずい」

「私の洋服着ますか?」

「すまんの」


神様を着せ替えるというよくわからない経験をした後、食事のために部屋を出た。





『すみません、静音さん。携帯電話なんですけど、東京駅で信号が途切れてまして』

「紫苑のも?」

『はい』

「……わざと切ってるわね」

『今、目撃者を探してますからすぐに見つかると思いますけど』

「大丈夫だとは思うけど、心配ね……」


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