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女神の箱庭II =ツナガルセカイ=  作者: 山吹十波
第3章 朱き炎鱗、空を翔る翼
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#03-05 因果応報<トゥーマッチ>



超高速で海面にたたきつけられた緑色の竜は巨大な水柱を上げて、海中へと沈んでいった。

それを追いかけるべくかなり高所から海に飛び込んだ静音も深く水底へと潜っていく。


「あっちね」


大質量の生物が激しくもがいているせいか泡立っている方向へと泳いでいく。

泳ぐ速度は本来の速度よりも早いのはこの体のせいか、“水中適正”なるスキルのせいか。ともかく、一瞬で距離を詰める。


「“水縄”」


遠くに見える巨体を動きを与えられた水が拘束する。

必死に浮き上がろうと水面を目指す竜は、水中へと引きずり込まれる。


「とりあえず、このまま……」

『静音さん、調子はどうです?』

「今、とりあえず海中に拘束したけれど……このまま放置してたら溺死するかしら?」

『魔力を使って空気の層を作れるらしいですよ、嵐曰く』

「じゃあ、溺死は無理ね。それより、そっちは?」

『私は、嵐ごと隠れてます。洋さんはごきげんで空母襲撃してます』

「空母?――え?もう戦闘機は撃墜し終わったの?」

『そのようです』

「というか、空母襲撃って国際問題になるんじゃ?」

『それは戦闘機落とした時点で手遅れでは?』

「――まあ、いいか」

『いいんですか!?』


腰に差した短剣を抜き、構える。

口元から泡が漏れるが、不思議なことに水は入ってこず、呼吸もできている。我ながら不思議な事だが、もう何度個々の不思議な経験をしているので慣れた。


「“水刃”」


“水流操作”なるスキルが存在し、それは全く魔法とは別の扱いになるようだ。

物理耐久も魔法耐久の高い竜にも通用するのは便利なことだが、これが一体どういった攻撃に分類されるのかは謎だ。


まっすぐに水中を掻いて進む無数の刃、といっても周りも水ということもあり、それは注視しないと判別できない。


直撃した水の刃は、竜の体を深く切り裂く。

口を開いて苦しむ竜の体へと次々と命中。その際に体を覆っていた魔力の膜を引き裂いたようで、その体内へと一気に水が流れ込む。


ゴボボボ……と不快な音が聞こえる。


「あら?案外いけるかも?」

『静音さん、洋さんが空母漁って得た情報ですけど、そのあたりに潜水艦が』

「ほんとに?」

『どうやら原子力潜水艦なので、気を付けてください』

「うわー……沈めていいやつ?」

『ダメな奴です』


感知系の能力は高くはないが、水中ではいろいろなスキルの効果でその能力はかなり高くなっている。


「見つけた。でもまだ遠いわよ?」

『魚雷とか撃ち込んできませんよね?』

「来るんじゃない?」

『早めに片づけることは可能ですか?』

「可能よ」


今までよりも大量の魔力を練り上げ、一気に攻撃のための術式を構成する。

魔法と短剣による斬撃。正直、短剣でこの巨体に有効なダメージが通せるとは思えないのだが、実際通っているから不思議だ。


「これで6割?案外弱い?」


よく見ると竜の体力ゲージは地道に減っている。


「あれ?――ねえ、明日香」

『どうしました?』

「溺れてるようなんだけど」

『たしか、水中適正がない状態で呼吸できなくなるとそんな効果があったはずですが……呼吸できてないんですか?』

「なんかキャンセルできたみたいで」

『えげつない……』

「なんで!?あ、もう3割切った」

『最大体力に対して20秒で1%のはずです』

「じゃあ残り9分で片付くわね。おそらく、下手に攻撃するよりも早い」

『了解です』

「でも、まあ、もうちょっと、“水重”」


倍以上に増加した水の重みによって、竜の体が海に沈んでゆく。


「とりあえず、海底に叩きつけときましょう」

『やっぱり、奏さんのお姉さんですね』

「どこからそう判断したの?」

『とりあえず、洋さんを回収してからそっちに向かいます』

「よろしく」


減っていく対象の体力を確認しながら、海面を目指す。


「こんな倒し方でいいのかしら?」

『いいんじゃないでしょうか――あ、こっちで位置確認したので向かいますね』

「洋は?」

『なんかぐったりしてるので適当に拾っておきました』

「魔力切れでしょう」


海面に顔を出すと、そこに緑の影が飛来する。


「明日香」

「はい!」


片翼を海につけながら、体を倒し、こちらに手を伸ばす明日香の手を取るとそのまま引き上げられる。


「嵐、西へ!」

「了解」


再びあっという間に超高速飛行に入った嵐。

目を覚ました洋が驚く。


「おわっ!?また!?」

「生きてる?」

「生きてるけど――なんでずぶ濡れ!?」

「ああ、さっき海に」

「っていうか、寒い!」

「我慢しなさい」

「ひどくねぇ!?」

「ちょっと黙ってて――あ、ほら、倒したみたいだし」

「溺死でですね」

「溺死だね」

「燕真、聞こえる?」

『やっと連絡がついたか』


すこし嬉しそうに口元をゆがめる静音を明日香は見た。

指摘すると面倒なことになりそうなので口には出さなかったが。


『倒したのか?』

「ええ、問題ないはず。確認してもらえる?」

『わかった――遥人!静音が竜を討伐したそうだ』

『えええ!?なんで最初報告するのがそっちなの!?事後処理とかどんだけめんどくさいと思ってんの!?』

「ああ、あと、洋が米軍相手に大暴れしたみたいよ?」

『あああああ、何やってんだよこの馬鹿!』

「てへっ」

『洋さん、これで遥人さんと私の時間が減ったら殺します』

「こわっ!?」

『仕事してるほうが一緒にいられるんじゃないのか?二人っきりで』

『グッジョブです、洋さん。許します』

『うおい』

「とりあえず、寒いっす」

「それはどうでもいい――明日香、飛ばすよ」

「りょうかいでーす」

「うそだろおおおおお!?」


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